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艦船用の機関についてみなさまにお伺いします。 現用の護衛艦はガスタービンを主体に、これにディーゼルなどを組み合わせた ものが主流ですが、これらの機関はどの程度の間隔をおいて修理点検を受けて いるものなのでしょうか。また、破損など(戦闘時の損害なども)の場合、機関全部を載せ換えるような修理まで行うものなのでしょうか。船体はつかえそ うだが、エンジン不調でだめなら乗せ換えるみたいなことは現代はしなのでしょうか。 よろしくおねがいします。 kitune |
- 現代の艦艇に於いて機関の交換が考慮されていないものは無いといって良いのではないでしょうか、修理点検の間隔は、機関によって千差万別ですのでどの程度とは言いがたいかと思います。
たぶん、一番交換が難しいのは原子力機関だとは考えられるのですが、それ以外のものは基本的に交換か艦内での重整備程度は可能な様に設計してあっておかしくないです。
まあ、メンテフリー等を謳い、整備間隔を長めに取るような傾向はあります。
また、実例としては、フォークランド紛争時、インビンシブルのGT機関は予備を吊るしておいたと言う話もありますので、載せ替えは可能でしょう。
ooi
- 海上自衛隊のガスタービン護衛艦の設計で言えば、ガスタービンを取り
外し、外へ運び出す経路、というのが必ず確保されています。ガスタービ
ンは小型で運び出しやすいこともありますし、タービンブレードが砕けた
りすると、ばらばらになってしまうようなことも考えられますから、そう
なれば船内での修理どころではなくなってしまいます。
基本的に甲板に比較的容易に取り外せる場所があり、そこからガスター
ビン本体をクレーンで吊りだせるようにします。設計上は真上に引き抜け
るように努めるのですが、上構の配置のほうが優先ですから、必ずしもう
まくいくわけではありません。また、船体配置が決まったあとに設計変更
があると、また面倒なことになります。
設計中にヘリ格納庫が大きくなった「きり」型がその例で、艦内で吊り
上げ、水平に移動してから上に引き抜くようになってしまいました。もち
ろん、それなりの工事になりますから、ドックに入っての作業になるでし
ょう。
将来的な設計の話になれば、ガスタービンエレクトリックとして、ガス
タービンをユニット化して甲板上に置き、定期整備も取り外して陸上で、
などということも考えられています。アメリカの新型艦はそんな感じにな
りそうですよ。
DMZ
- 他はよく知りませんが。
海上自衛隊の護衛艦の場合は煙突からGTユニットを抜き取ります。
SC
- みなさま、ありがとうございました。やはり交換することが当然なのですね。
海自の護衛艦は煙突から抜くとは知りませんでした。
ついでにお答えしていただけるなら嬉しいのですが、WWII時代の艦船、帝国
海軍、米英海軍の場合はどうだったのでしょうか。一緒にお伺いすればよか
ったのですが、申し訳ありません。
kitune
- 海自のあめ型となみ型は煙突前の吸気デミスターのトップのハッチからGT抜くと聞きましたが。
帝国海軍の場合、甲板装甲を切り開いてそこからタービンユニットを取り出していたと思いますが?
サラトガの減速歯車が壊れたときは飛行甲板まで直接抜く事が出来ずに途中一度水平に移動させていましたが。
Cz75
- 客船のQEIIの改装工事のように、横腹を開いて機械を取り出した例もあります。
大塚好古
- みなさま、ご回答ありがとうございました。
これで一つの疑問点が解消されました。
kitune
- ガスタービンエンジンの場合、運転時間毎の定期的なオーバーホールが要求されており、その作業は陸上の整備された工場でなければ到底無理です。つまり通常の整備として陸上整備が要求されるため、運用上、エンジンを取り外し船外に取り出す経路を用意することは絶対に必要となります。スチームタービンや中低速のディーゼル機関は、基本的に船上での整備を前提としており、よほど致命的な故障でも生じない限り、船舶の生涯の中で船外に機関を取り出して修理するということはありません。そのような故障が生じた上で、修繕に値すると判断された場合は、皆様が例示のように船体を切りかいて機関を取り出すことになります。
兄弟船
- みなさま、ご回答ありがとうございました。
kitune
- タービンを用いる船舶の場合、燃焼設備とタービン(エネルギーを運動に変換する設備)
の二つが必ず存在すると考えてください。
例えば、ガスタービンが実用化される以前ですと、ボイラ(燃焼設備)+蒸気タービンですし
ガスタービンでは、燃焼器(燃焼設備)と(狭義の意味の)ガスタービンですね。
ボイラについては、蒸気条件や燃料種類によって定期点検周期は若干変化しますが
1)軽度の点検:1回/年程度(運転時間4000時間程度)
ボイラ内部の目視点検、炉壁材の目視点検
必要であれば炉内スラッグ類(蒸発管についた燃料中の汚れ。多量に付着すると
ボイラ効率の低下や局部過熱による蒸発管破損の可能性)
2)本格点検:1回/4年程度(運転時間10,000〜15,000時間程度)
炉内スラッグ類の除去、水側スケール等の除去、一部配管の交換
補機類の潤滑油交換(日常でも行うが、本格点検時には全量交換)
補機類の交換
なんて感じで行います。
ボイラについては、時代時代で「構成部材の限界まで使う(蒸気条件を上げる)」という
流れでしたので、常に過酷な条件に晒されていますので、どうしても点検頻度は短くなり
ます。
ただし、ボイラは構造的に船外への取出しが困難(大きさ、強度、分解困難等)ですし
上に書いたような点検は船内スペースでも容易に行え、かつ修繕といっても、ボイラ配管
等の部材は通路を経由して搬入する事が容易ですので、大体の場合は船内に据え付けたまま
補修点検を行うのが通例です。(最近では、船体自体の加工に関する工事力・費用・技術が
改善されましたので、一部ではボイラでさえも陸揚げして補修のケースもありますが)
蒸気タービンについても蒸気条件や回転数によって点検頻度は変りますが、概ね1回/4年
程度の点検周期になります。
点検項目については、ブレード(特に高圧側)に付着したスケールの除去が主流ですが
カーチスタイプですとタービン動翼の侵食が顕著に出ますので、点検時に交換する場合が
多いです。
なお本来は、蒸気タービンは急激に回転数(=熱負荷)変化させる等の過酷な条件を頻発
しない限りは、ボイラより遥かに点検頻度が低いのです。
特に、第二次大戦中のボイラ条件ですと、タービン構造部材にとっては楽勝の条件だったで
5〜6年に1度程度は本格点検を行わなくてもokです。
しかし、蒸気タービンの点検所要日数はボイラより概ね短いので、ボイラの本格点検に併せて
タービン側の点検も行うと、点検の二度手間がなくなりますので、ボイラの本格点検時にタービ
ンも点検を行うのが通例となっています。
機械屋
- ガスタービンについてです。
ガスタービンは燃焼器で燃料をガス化して後段のタービンを回しますが
蒸気タービンより過酷な条件に晒されます。
1)タービンブレード温度が蒸気タービンよりはるかに高く温度変化
が大きいので、タービンブレードへの熱疲労(サーマルストレス)が
過酷(短時間で大きな熱疲労が掛かる)
2)回転数が高い+艦船の動揺が存在するので、バランス調整がシビア
3)構造材の大きさの割りに推力が大きいため、推力軸受へ掛かる圧力
が大きい。
ですので、起動回数や運転時間によって若干の変化があるものの、基本的
には
1)A点検:ガスタービンの主要部(圧縮機部、燃焼器部、タービン部等)
を分解点検
2)B点検:燃焼器部等分解しないで、ボアスコープによる点検
の何れか一方を毎年行うのが基本となります。
ただ、ガスタービンは蒸気タービンに比較して遥かに小さなスペースに
多数の機器類を納めている、艦内に充分なスペースが無い等々の理由から
船内に据え付けたままの点検は、期間的にも少々厳しくなります。
それに加えて、ガスタービンはパッケージとして交換する方が現状では
簡単(工数・費用・期間等々)ですし、パッケージで搬出できるが故に
組み立て後のバランシング(回転時の振動を抑えるため)も陸上で行え
るので、現状ではドカンと取り出して点検を行うのが主流になっています。
蛇足ですが。
蒸気タービンとガスタービンの違いは色々あるんですが、補修に関して
言えば
1)取り出すことが適切か否か
蒸気タービンについては、軸受も取り出すことは(容量や構造上)
不可能ですしタービンロータ自体が釣り上げ時にゆがみ等の惨い
影響を受けるのでクレーン等で吊り上げて色々な方向に傾けて取
り出すことが不適切。
それに対してガスタービンは、軸受けも含めて取り出すことが容易
で、それ故に釣り上げ搬出によってもロータのゆがみ等が起き難い
しかもパッケージ本体で取り出すので、動的バランス調整を陸上で
行うことが出来る。
2)補修時に重要となる部分の工作の難易
蒸気タービンの重要(困難)修繕といえばブレードの交換ですが
ブレードのサイズや構造から、船内の限られたスペースでも比較
的簡単に修繕可能。
ガスタービンの場合は、ブレードも小さく、ブレードの植え込み
方法も特殊なので、船内のスペースでは修理期間や工数がかさむ
恐れがある。
という点が大きな差異ですし、蒸気タービンを採用していると云っても
魚雷等でロータ自体まで破損した場合は、周囲の鋼鈑を取り除いて大規模
な修理をする必要が出てきます。
機械屋