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射撃緒元の計算には、彼我の距離およびその変化率/方位およびその変化率(つまり彼我の位置関係の相対値)が分かれば十分なような気がするのですが、的速・的針という絶対値が射撃盤での計算に必要な理由は何でしょうか。 初歩的な質問ですが、よろしくお願い致します。 MJQ |
- つきつめれば、初弾精度をできるだけ上げたいから、ということでしょう。
全変距射法として「距離およびその変化率/方位およびその変化率(つまり彼我の位置関係の相対値)」から求める相対速度と相対角度だけで撃ち始める射法もないわけではなく、必ずしも的針的速を算出しなければ撃てないというものではありません。
直接的にいえば、発砲から着弾までに必要な砲弾の飛翔時間n秒後の的の未来位置を算出するのに必要なパラメータのひとつとして、自針・自速を用いているからです。
まず、「的の変化率」=「的針的速」であり、これは絶対値として求められるのではありません。
的は速度と方位を持った、一種の二次元上のベクトルとして表されます。
このベクトルの矢印の先端が的であるとするなら、矢印の向きが方位即ち的針であり、矢印の長さが速力即ち的速で、これを単位時間あたりに区切ったものが「的針的速」です。
つまり、時間あたりの的の変化率を二次元的に分解したものです。
「距離の変化率/方位の変化率」で求められるのは、相対的速と相対的針、平たく言えば「的の見かけの変化率」であり、これに自針自速を加味して修正したものが、「的針的速」ということになります。
一方の基準となる変化率(自針自速)がディグリー(つまり真北を0とする方位角)とノット(つまり浬:nm/h)で表わされるのですから、それと比較するためにディグリーとノットという単位に揃えるのです。
従って、いったん的針的速にして計算する方がずっと簡単で歯車計算機に組み込みやすく、手計算でも間違いが少なく、また自艦の増減速や変針にも対応しやすいと言えるでしょう。
また、特に当時の大型軍艦はボイラーの使用状況によって経済巡航から第一戦速に持っていくまでにはヘタすれば20分以上かかることもあり、戦闘巡航からでも数分〜十数分を要することがあります。
この間ずっと加速を続けていくわけですから、最も肝心な初期測距の段階で「自針自速が不変」という状況が得られない可能性も少なくないわけで、しかも向こうも同様にしている可能性も低いものではなく的針的速が「同時に変化しつつあり」ということも考えられ、相対値だけではちょっと心細いということもあったのではないでしょうか。
また陸上砲台など動かないものが艦を撃つ場合、逆に艦が地上目標を撃つ場合などは、「距離およびその変化率/方位およびその変化率(つまり彼我の位置関係の相対値)」だけで完全に十分ですね。
まなかじ
- あとは、自・的の針速を分離して別個に管理すると、戦闘時の自・的の行動に素早く対応できるんです。
例えば敵艦が変針を開始した場合、計測と計算で数字を出す前に、速度はとりあえずマイナス何ノット、毎秒何度変化と、ダロカンで代入するといった手立てが容易になるんです。
SUDO
- 早速のご回答ありがとうございました。
>、「的の変化率」=「的針的速」であり、これは絶対値として求められるの>ではありません。
ある本での九八式測的盤の説明で、「敵艦の相対分速から自分のベルトルを除去することで敵艦のベクトルを出す」というのを読んで、的針的速=敵艦のベクトル⇔絶対値と短絡してしまいました。「射撃緒元の計算」というのは個人的には非常に興味があるのですが、根本的なところが分かっていません。(根本的なところで外しています)
射撃緒元の計算に関する一般的事項、そのための機材(射撃盤、的針的速盤、変距率盤等々)の構造・動作原理等について解説したサイト・刊行物があれば紹介して頂けないでしょうか。(過去ログ15で紹介されていたサイトは閉鎖されたみたいなので・・・) 勉強した上で分からないところを再度質問させて頂きたいと思います。
もう一点。今流行の「架空戦記」の走りともいうべき(相当昔の話です)作品で射撃緒元の計算のことを「弾道計算」と呼んでいましたが、これは当時の海軍では一般的に用いられた用語でしょうか。
とりとめもなく書いてしまいましたが、よろしくお願い致します。
MJQ
- 書籍は、海軍砲術史、艦砲射撃の歴史、あたりでしょうか。
どっちも古書で探せば何とかなるかも知れません。
また弾道の計算は、普通はやらないと思います。
計算した結果(標準的な状態を前提にした)射表があり、それに当日修正等を加味したものを用います。
つまり、射撃装置は、距離幾つに狙いをつけろと計出し、射表から仰角何度だと出し、砲にその仰角を伝える(勿論方位等も出しますが)
また射表と緯度と当日修正と距離から、何度の偏流があるから、狙うべき方位も、彼我の移動ベクトル等から求めたものに対して更にずらした数字を出します。
勿論、距離等を吐き出させておいて、与えるべき方位・仰角は、マニュアルで、つまり人間が射表を見て数字を与えるといった事も出来ます。
よって、弾道計算そのものはしていないと言えるかと思います。
SUDO
- 「弾道計算」の件は著者の勇み足だったことが分かりました。
ご紹介頂いた本は国会図書館の蔵書目録にあるので、(見る分については)何とかなりそうです。内容的には素人のちょっと見で何とかなるようなものとも思えないので、分からないことも出てくるだろうと思います。そんな時は助けて頂きたいと思いますので、よろしくお願い致します。
ありがとうございました。
MJQ