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B29が爆弾を投下するときの飛行速度を教えてください。 少なくとも最高速度ではないと思うのですが・・・ その速度は高高度爆撃時と中高度爆撃時では異なりますか? それとも、投下速度は特に決まっていないのでしょうか? ちたん |
- 爆撃するのに速度制限があるのかという意味であれば、特にありません。
これは主に照準器の性能によって決まる要素ですが、B-29の場合、爆弾倉を開いた状態で出せる最大の速度でも、照準することはできますから、原則としてはB-29は全飛行速度で狙って爆弾投下することができます。
但し、強い追い風によって速度が出すぎてしまうと、照準器の照準可能な範囲を超えてしまうことが実際にありました。
また、実際の戦闘行動では経済巡航よりは速く、最大速度よりも遅い戦闘巡航という速度で爆撃目標へ進入しますが、経済巡航と最大速度はそれぞれ発生高度が決まっているので一律に何マイルと決まっているんですけれども、戦闘巡航は「スロットルをここまで開く」という決め方ですので、飛行高度や爆装の重さ、燃料残量などによって変動します。
つまり、戦闘巡航を用いるということは「決まっている」のですが、その速度は一律に時速何マイルとは「決まっていない」わけです。
従って、「その速度は高高度爆撃時と中高度爆撃時では異なり」ます。
まなかじ
- まなかじ様,ご回答ありがとうございます.
なるほど,スロットルの開き加減が戦闘巡航な訳ですか.
実際に日本の主要都市への爆撃時の速度はどれくらいだったのでしょうか?爆弾搭載量,燃料消費量,突入高度とも一般的な場合?という前提ですが.時速500kmくらいですか?
「B29の搭乗員の手記」のようなものを調べたら載ってますか?
ちたん
- ですから、それは決まっていないんです。
爆撃針路が向かい風のときは遅くなりますし、追い風なら速くなる、そういうものですし、だからこそ、実際の対地速度を正確に知って照準するために爆撃針路には目標上空に至る手前にイニシャルポイントを置き、そこからしばらく定針しておく必要があるわけです。
また、編隊先導機はスロットルを動かしませんが、編隊列機は編隊を維持するためこまめにスロットルを微調整します。
また、作戦前のブリーフィングでは、目標と進入高度が示されますが、速度は示されません。指定しても意味がないことなのです。
例えば、往きの行程がずっと向かい風で燃料消費が激しい場合、編隊長判断で経済巡航のままで進入ということもありました。
先導機以外の操縦手には直接関係しないことで、爆撃手としては何km/hであろうと爆撃進入中に一定不変でさえあればよいこと、そして航法手はそのとき実際に出ている数値だけを知る必要がある、機関手は速度ではなくエンジンの回転数と燃料の残量に責任を持つ、ということだからです。
実際の速度域で言えば向かい風参考300km/hくらいから追い風参考700km/hまでの幅があります。経済巡航なら約370km/hです。
標準偏差的には420〜480km/hあたりではないかと思うのですが、これは半分以上感覚的な憶測に過ぎないので、あまり信用しないでください。
また、投弾して軽くなり、更に爆弾倉扉を閉じると、同じ出力のまま500km/hを優に超えます。
こうした速度に関する話は、搭乗員の方では上記のような理由であまり気にしていないせいか、書かれることがあまりありません。
それぞれのソーティについての具体例は、直接的には部隊の戦闘報告書(戦闘詳報)をあたるか、あるいは日本側の記録から状況証拠的に集めるかする方が手っ取り早いと思います。
まなかじ
- その時々の状況によって、全然違うわけですね。納得しました。
判りやすく説明していただきありがとうございました。
ちたん
- 手持ちの資料から,一例の紹介です。
米軍資料 1945年 HEADQUARTERS XXI BOMER COMMAND Tactical Mission REPORT
(1)爆撃計画
MISSION NO.263 第58航空団 爆撃行程距離 43マイル 爆撃行程時間 9.5分
NO.264 第73航空団 〃 42マイル 〃 9.5分
NO.265 第313航空団 〃 32マイル 〃 7.75分
と記載されています。これから,それぞれ計算上,約437km/h,427Km/h,398km/hとなります。
また,この報告書の付篇Fに,1945.7.12 マリアナ時間0800付の命令書が添付されていますが,これには爆撃速度:対気速度 195マイル(約313km/h)と指示されています。
ただ実際の爆撃行程で,どのくらいの機速であったかは,不明です。
なお,これらの報告書は,国立国会図書館で閲覧,複写可能です。
ご参考まで。
ぼん