5416 旧日本軍の20mm機銃は初速が低いといわれます。おそらく最高速、射程も低いと思うのですが、この理由はなんでしょう。開発段階で海外の機銃も参考にしたと思いますが、弾丸が重いとか、形状が抵抗の大きい形だとか、火薬の性能が悪いとか、精度が低く、エネルギーが弾丸に充分伝わらないとかといったことでしょうか。
ビギナー

  1. 火薬で発射する銃砲の弾丸というのは、銃口を出た瞬間がいちばん速いのです。
    薬莢の中にある火薬(装薬と言います)が爆発してできる燃焼ガスが膨張することで、弾丸を銃身を通して押し出すことによって発射されます。
    つまり、銃身を通る間しか燃焼ガスのエネルギーは弾丸に伝わらない、つまり銃身の中にある間だけ加速されるのです。
    よって、初速=最高速です。

    初速が低いと言われる20ミリというのは海軍の九九式1号だと思いますが、これはスイスのエリコン社のFFという機関砲のライセンス品ですから、参考にしたとかいうレベルではなく、海外設計の機関砲を国内で生産したものです。
    また、ほとんど同じものがドイツでもMGFFと呼ばれて採用されており、Bf109やFw190でも使われています。
    九九式1号の特徴は銃身が短いことです。これは銃本体を軽くするためです。
    先にも書いたように、弾丸は「銃身の中にある間だけ加速される」ので、銃身が短いとそれだけ加速される時間が短くなります。
    また、短い加速時間で強力に打ち出そうとして、銃身が短いのにたくさんの装薬を使うと、今度は弾丸を打ち出しても燃焼ガスの膨張エネルギーが余ってしまって銃砲にかかる反動が強くなってしまい、機体にかかる負担が大きくなり、つまりは機体が重くなってしまいます。
    このため、銃身長にちょうどいい量の装薬で収めておきたいので、あまり初速は大きくできないという事情もあります。
    つまり、初速を速くしたい場合には銃身を長くし、そしてそれに合わせた量の装薬で発射するというのがもっとも効率の良い方法なわけです。

    また、日本軍が使った航空用の20ミリ機銃には九九式1号の他にも、銃身が長くて初速も高い九九式2号・3号やホ5などといった機銃もあり、昭和18年以降に作られた戦闘機の多くに搭載されています。
    まなかじ

  2. ここの別館Sasaki's Aviation★Planet にエリコンFFの機構を解説してる
    ページがありますのでリンク貼っておきます。
    http://www.warbirds.jp/crazy/jp/gun/mech.htm
    スネルホイヤー

  3. Tony Williams 氏のコレクションより、各種主用 20mm 弾の写真。
    http://www.quarry.nildram.co.uk/20mm1.jpg

    99式1号のタマは左から二番目の 20x72RB です。ご覧のとおり、弾頭と薬莢の長さがほぼ等しいというアンバランスな形状をしており、沢山の炸薬を詰めた大重量の弾頭を比較的低速で撃ちだすことに特化した設計であることが伺えます。(ちなみに高初速と言われる MG151/20 の 20x82 もかなり弾頭重量に偏った弾薬であり、800m/s という初速は弾頭殻を極度に薄くして火薬を詰め込んだ M-Geschoss という特殊な軽量炸裂弾で達成されたもので、徹甲弾などを撃ったときの初速はたいしたことなかったりします)

    同じ「20ミリ機銃」でも、陸軍ホ5の 20x94 やソ連 ShVAK の 20x99R は薬莢に対し弾頭が短く、軽量弾を高初速で撃ちだす意図が感じられます(結果論として、ホ5は故障・破損多発で装薬を減らす必要に迫られ、意図したほどの高初速は得られませんでしたが)。
    右のほうへ行って海軍99式2号の 20x101RB や米/英イスパノの 20x110 は弾頭の薬莢も長く、重量弾を高初速で撃ちだす弾であることが感じられます。ただしこの場合、強烈な発射エネルギーを与えるため長い銃身と、それに耐える頑丈な機関部が必要となるため、銃本体が大型化し重くなるきらいがあります。

    航空機銃ではサイズ・重量は火力性能に比肩する重要な性能指標であり、想定される目標に対し必要充分な火力を最小・最軽量のパッケージに収めることが求められます(火力だけが欲しいのなら 30mm や 40mm を積めばよいのですし)。エリコンFFの場合、大口径であること=一発あたりの炸薬量を多くできること、というメリットを最大限に活かそうとし、それを最も軽量にまとめるため短砲身・低初速という仕様になったものと考えられます。これを零戦に採用した日本海軍にしても、当初の目的は艦隊に襲い掛かる敵攻撃機の阻止・撃滅が主目的であり、動きの鈍い中大型機が目標なのだから高初速はあまり重視されないであろうという意図があったようです。

    結果論でいえば、零戦の20ミリは爆撃機・攻撃機だけでなく戦闘機相手の空戦にも多用されることになり、またB−17重爆の防御性能は日本の予測を上回るもので1号銃では充分なダメージを与えられないことが報告され、より高威力と優れた弾道性能を持つ長銃身2号銃の整備量産に拍車がかけられることになりました。
    ささき

  4. >#1 まなかじさん
    >また、日本軍が使った航空用の20ミリ機銃には九九式1号の他にも、銃身が長くて初速も高い九九式2号・3号やホ5などといった機銃もあり、昭和18年以降に作られた戦闘機の多くに搭載されています。

     九九式三号二十粍機銃というのは、どのようなものなのでしょうか?
    セミララ

  5. >4
    うお。
    なんかナカグロとか入っちゃっててすごくソレらしくなってますけど、タイプミスの戻し忘れです。ごめんなさい。
    単に推敲不足の結果ですので「・3号」はないものと思ってくだちい。

    まなかじ

  6.  了解です
    セミララ


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