5408 旋回によって遠心力が働いている状態で機関銃を発射した場合、弾丸は発射された瞬間の照準点に向かって飛ぶものなのでしょうか?
火薬が爆発して弾丸が動き始めてから銃口を出るまでの間に弾丸には旋回による遠心力が働いていると思います。言ってみれば高速の弾丸はわずかでも曲がっている銃身を進むのと同じことになると思うのですが、この場合、通常の状態で発射された弾丸と比較して弾道が曲がったりあらぬ方向に飛ぶものなのでしょうか?

また、旋回による過重状態での射撃は機関銃の設計時に想定されているものなのか、だとしたらどれほどのGが想定されているものなのか、教えてください。
よろしくお願いします。
wako

  1. 実際に弾道が曲がるわけではありませんが、運動している航空機側からみたら曲がって見えます。

    ただ、弾道自身は計算できるので、第二次大戦後半の連合国の照準器は、ジャイロを内蔵することによりその補正を行っていました(どの程度の効果があったかは存じませんが)。

    富士見町

  2. 遠心力は見かけ上の力です。物体は外からの力が働かない限り、等速直線運動を取ろうとしますが、何らかの力(例えば糸の張力、あるいは飛行機の揚力)…「向心力」によって拘束されている場合に円運動となり、向心力の反作用として遠心力を感じます。

    向心力が消滅したとき(糸が切れた、銃身を飛び出したなど)、物体は円周運動を離れ直線運動を取りますが、この場合の投射方向は向心力消滅の瞬間における円周接線方向となります。つまり「遠心力」によって「円周と直角の方向」に飛び出すわけではありません。

    >「発射された瞬間の照準点…火薬が爆発してから銃口を出るまで」
    むしろ、引き金を引いた瞬間の照準点と銃口を飛び出す瞬間の照準点、そしてその数秒後の「照準点」が同じであるかどうかを考えてみては如何でしょうか。旋回中は照準点が常に動き続けているのです。弾丸は銃口を飛び出す瞬間の照準点に向かって直線運動で飛び出しますが(重力・空気抵抗の考慮は除外)、次の瞬間には照準点そのものが移動しています。曲がっているのは弾道ではなく自機(および目標)の軌道であり、それを基準に見ると直線運動する弾道が曲がって見えるということです。旋回中に満星照準(目標を十字の真ん中に捉える)で撃っても当たらないのはそれが理由です。

    >過重下における射撃
    当然考慮されています。基準値については手元にデータがありませんが、WW2時の航空機銃なら5〜6g程度ではないでしょうか。
    ささき

  3. 加えて細かい事ですが、飛行機の軸線は一般的に旋回円の接線とは一致せず、機銃の射線もさらに偏角を持っています。
    このことから、発射された弾は接線に対し直角方向の運動量を有し、それは発射後の斜進となって表れます。
    APOC

  4. 皆さま、ご回答有難うございます。
    質問がまずくて皆さまに質問の意図について誤解を与えたようで申し訳ありません。

    「弾道が曲がるか」という質問について
    旋回中の機体の操縦席からは、発射した弾丸がたとえ直進していても旋回円の外側に見かけ上は曲がって見えるというのはよく理解しています。
    また、ささき様ご指摘の「向心力消滅時に直線運動に入る」というお話しも、陸上競技のハンマー投げに良く現れているとおり理解しています。

    私が、「弾道が曲がったりあらぬ方向に飛ぶものか」という疑問をもったのは、
    例えば、4Gで旋回中、標的の未来位置を正しく予測して射撃した場合に弾丸は直進して狙ったところに飛ぶか、それとも、発射時に旋回による過重がかかっていた場合には弾道が曲がったりして、必ずしも狙ったところに弾丸は飛ばないかというところにあります。

    ささき様ご指摘のとおり、銃身(機体そのもの)が円周運動しているから、弾丸は銃口を出るまで銃身の円周運動にあわせて直線運動ではなく円弧状の運動(円周運動)を強いられていると思います。つまり、動き出しの方向と銃口の方向が一致せず、弾丸は銃身の旋回円の外側の壁を押しながら(先の例では4Gで)進むことになると思います。
    素人の半可知識で恐縮ですが、銃身には弾道を安定させるためライフリングが施されており、弾丸は高速で旋転しながら直進しようとしていると思います。
    質問の意図は、このような弾丸が円弧状の運動を強いられた後に銃口から飛び出したとき、ハンマー投げのハンマーのように素直に直進するものかどうか、多少曲がるにしても無視できる程度なのかというものです。

    またしても判り易い文章にならず申し訳ありませんが、再度のご回答を頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
    wako

  5.  皆さんと違って、ごく基本的な事だけ。

     旋回を続けている航空機に装備されている機関銃から機銃弾を発射すれば、銃口を出た時点での弾丸のベクトルは、爽薬によって発生する機銃軸方向のベクトルと、機銃(そして弾丸)自体が機体とともに受けている横方向の加速度によるベクトルを合成したものになります。

     たとえば1G(秒速約10メートル)で右方向に旋回中の機体から、初速700メートルで発射された弾丸は、1秒後には発射時の銃身方向700メートル先で10メートル右の位置にあることになります。
     地上から見て、発射時の銃身方向を基準に考えれば、弾丸は機体の旋回方向である右に10メートルずれた方向に向かうことになります。(これを感覚的には「曲がる」といってもいいのかも知れませんが、弾丸はあくまで機銃軸の10メートル右に向かって直進しています。)
     ただし、機銃を発射したパイロットから見れば、発射後の1秒間で機体はさらに1G分右に加速し右方向に向かっているわけですから、弾丸は機体から見て秒速10メートル分左に向かっているように感じられます。
     機体を右に横滑り加速させている場合はこれだけですが、旋回の場合は機体軸自体が右向きに回転しますから、パイロットから見れば、前記の効果に加えて、機体の右方向への回転角度の分、弾丸はさらに左に曲がっているように感じられます。

     以上、空気抵抗による弾丸の速度低下、重力の影響、機銃の装備方向、旋回中の航空機は傾斜しているため機体の傾斜角によっては弾丸が左に曲がるだけでなく落ちる(機体の下方向に曲がる)ように見える、といった事は無視しての話です。
    カンタニャック

  6. >弾丸は銃身の旋回円の外側の壁を押しながら(先の例では4Gで)進むことになると思います。
    それを言ったら、地球上で射撃する火器はすべて1gの加速度を受けながら銃身中を進むのですから、下側のライフリングが偏って減ったり、弾丸が傾いで飛び出したりすることになりませんか?

    >多少曲がるにしても無視できる程度なのかというものです。
    航空機搭載機銃はもともとそんなに高精度にはできません。飛行中の機体はエンジンの振動や旋回荷重、機銃発射の反動などによって常に不規則に撓んでいるので、弾道はどうしてもシャワー状に散ることになります。

    仮に「gの影響で弾道がずれる」としても、その影響が定量的に計測できるのは射撃機と標的機が同速同半径同高度で同軌道の水平旋回を行った場合だけですよね?実際の空戦では狙われた目標機は死物狂いで加速減速上昇下降横滑りを組み合わせたイレギュラーな機動を繰り返しますし、射撃機はその機動の先を読んで目標の未来予測位置に弾幕をぶち撒くことを繰り返します。このような状況においては、銃身中を進む銃弾にかかる旋回荷重の影響より遥かに大きな照準補正ファクターがあると考えられないでしょうか?


    ささき

  7. >6 補足
    航空機の速度も無視してます。
    カンタニャック

  8. ちなみに銃身長 1m で初速 1000m/s の機銃を仮定すると、銃身通過時間は約 0.002 秒(等加速運動と仮定して t=2L/v)、銃弾にかかる発射方向の加速度は a=v/t で 500,000(50 万)g となります。
    ささき

  9. > 7 訂正
    >6 → >5
    まずいタイミングで、ささきさんとかぶってるなあ。
    カンタニャック

  10.  ホースで水撒いてみれば判ると思うけど。曲がりません。
    SUDO

  11. 皆さん、ご回答有難うございました。

    >5,10

    wako

  12. 11は入力ミスです。ごめんなさい。

    >5,10
    見かけ上の弾道の曲がりについてですよね。その点は理解しているつもりです。

    >6,8
    >このような状況においては、銃身中を進む銃弾にかかる旋回荷重の影響より遥かに大きな照準補正ファクターがあると
    4で書いたとおり、まさにこの点についての疑問をもっていたわけでして、その他の照準補正の要素に加えて、高過重下では、銃弾にかかかる旋回過重の影響をも勘案する必要があるかということです。
    「必要がない」というお答えと考えてよさそうですね。
    有難うございました。
    wako

  13. 蛇足になりますが、簡単な計算をしてみました。おかしいところがあるかもしれません。

    九九式二十粍二号固定機銃
     銃身長  1.252m
     口径初速 750m/s
     銃身通過時間 0.0033秒

     航空機の速度 100m/s (360km/h)
     旋回による重力加速度 4G(G=9.8m/s/s)
     旋回半径 約255m

     弾丸の動き始めの方向を0度とした場合の銃口通過時の方向 0.074度
     弾丸の動き始めの方向と銃口通過時のズレ 0.214mm

    この程度の銃身の撓みは発射時の反動やエンジンの振動などで始終発生しているという理解でよろしいですか?
    wako

  14. >13. ひょっとして「コリオリの力の影響を受け、弾丸が銃口の指向方向から斜めに飛び出すのではないか」という事を仰しゃっているのでしょうか?ちょっと時間がない&ネットの調子が悪いので参考ページを紹介できませんが、「コリオリ力」で検索すれば詳しい解説の載ったページが出てくると思います。コリオリ力もしかし見かけ上の力であって、銃弾が円周運動の拘束から解放された瞬間に消え去る筈ですが…。

    >0.074 度
    これは引き金を引いた瞬間と銃口を飛び出す瞬間の角度差ですよね。たとえば降下引き起こし中に対地目標を狙って十字が交差した瞬間に引き金を引いて、実際に弾丸が飛び出す向きが射撃の瞬間よりずれるという話ならわからなくもないですが(しかし、引き金を引くという動作の遅延だけでも 0.1sec オーダーの誤差になりはずですが)、空対空射撃であれば目標もまた移動し続けており、私が述べたように射撃機と目標機が「同軌道の等速旋回」を続けているなら、引き金を引いた瞬間も弾丸が飛び出す瞬間も、射撃機と目標機の相対角は変わりませんが。

    仮にこの数値に何らかの意味があるとして、では実際の空対空射撃にどの程度の精度が要求されるかというと、200m 先の直径 1m に集弾させるなら約 0.3 度の精度となります。0.1 度のズレは 200m 先で約 35cm、500m 先で約 87cm となります。(deg->rad 変換して tan/atan にかければ出てきます)
    ささき

  15. >14
    コリオリ力の影響は全く考えていません。

    回答者の皆さまは、どうも私が見かけ上の弾道の曲がりを見かけではなく実際に曲がっていると誤解していると思われているようですが…くどいようですがその点について誤解は無いと思います。
    銃身が直線であればその指向方向に偏角があっても問題ありません。その偏角に銃弾が直進する(空気抵抗による弾丸の速度低下、重力の影響は考慮しない)のは当然ですね。

    以上を踏まえて私の疑問は以下のものです。

    円周運動する銃身は、銃身が直線であっても通過する弾丸にとっては曲がっているのと同じであり、13の計算で弾丸にとって銃身は0.074度の曲がりを持つことになると考えました。そして弾丸は銃身通過中に旋回による過重を受けて銃身の片側に押し付けられる上に、曲がった銃身を高速で旋転し直進しようとするので、いわゆる不規弾のようにあらぬ方向に飛んでしまうのではないかというものでした。

    ささき様のご回答で、このような現象は起こりえても無視できるほど影響は小さいと理解できました。有難うございました。
    wako

  16. >15

     弾道を考える場合、"弾丸"の運動を"弾丸の重心の運動"に着目するとわかりやすいかもしれません。
     弾丸は変形しないものと仮定すれば、その運動は
    @並進運動・・・重心の運動
    A回転運動・・・重心を中心とした、各部分の相対的な位置関係の変化(=つまり文字通り回転)
    に分けられます。銃身のライフリングはAの回転運動を変化(=回転を与える)させますが、それだけで@の並進運動に影響は与えません。

    >いわゆる不規弾のようにあらぬ方向に飛んでしまう

     これは歳差運動のことだと思われますが、だとするとこれはAの方にあたります。少なくとも真空中では歳差運動で弾道は変わらないはずですが、空気中では空気の当たり方が変わって揚力のような力が発生する可能性があります。
    流☆

  17. ごめんなさい

     回転している弾丸にはマグナス力というものが働いて、野球のカーブボールのように少し横にそれながら飛んでゆきます。ですがこれも小さすぎてそれほど影響しないでしょう。
    流☆


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