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質問なんですが、現代のJET戦闘機と約50年前のプロペラ戦闘機が同じ速度で旋回したとしたら、どちらのほうが小回りが効くのでしょうか? どなたか教えてください。 さぁ! |
- どなたもお答えにならない前にお先に。
同じ速度での維持旋回なら、旋回半径は向心力の大きい方が小さくなります。
ハリアーなどベクタード・スラストを使われると、勝負にならないでしょう。
The eternal若旦那
- 「現代の」を、例えばF-2支援戦闘機とか、F/A-18とかに限定するなら、同等以上の小回りも可能です(どうせ制限Gは大差ないし)
それ以外の、たとえばF-4ファントム等の少し古い飛行機まで拡大するならば、低速ではWW2戦闘機のほうが上になります。
これは昨今の機体以外は迎え角(揚力係数)に限度があるので、速度の二乗x大気密度x揚力係数x主翼面積である揚力を重量で割ったもの(つまり揚力重量比=旋回G=向心力)が、あまり大きな値にならないからです。
速度さえ大きくなれば、揚力は急激に上昇しますし、どうせ制限Gはさほど差がありませんから、同じような瞬間旋回率が発揮可能です。
また大きな揚力係数を発揮させると、その二乗に比例して誘導抵抗が増します。つまり抵抗が増えるわけですが、これは昨今のジェット機ならパワーで補填できますから、そう大した問題にはならず。プロペラ機のほうが先に速度を大きく喪失するでしょう。よって維持旋回率では、大抵のジェット戦闘機のほうがプロペラ機に勝るということになります。
SUDO
- 「小回り」が旋回半径という事でしたら速度によって変わります。
最良条件での最小旋回半径で比べれば、一般にプロペラ戦闘機の方が小さくなります。
一般的にはある速度まではプロペラ戦闘機の旋回半径のほうが小さく、それ以上では現代機の方が小さくなるでしょう。
旋回において最も重要な要素は揚力限界(失速限界)です、翼面荷重と最大揚力係数が重要で、
失速速度が一つの指標となります。
最大揚力を発揮しての旋回を制限する要素として設計荷重(制限G)があります、
つまり主翼がより大きな揚力が出せる状態でも制限を越えてGは掛けれません。
もう一つの制限として、旋回を維持するには抵抗に見合うだけの推力が必要です、大きな揚力(係数)は大きな抵抗も生みます。
推力が足りなければ旋回は維持できません。
詳しくはこの頁などが参考になると思います。
http://www2.odn.ne.jp/~cdh88520/theory/theory10.html
中ほどに代表的なプロペラ戦闘機である零戦の海面高度での水平(維持)旋回性能を推定したグラフが載っています。
http://www2.odn.ne.jp/~cdh88520/images/theory/diagram00000.jpg
(私この頁のロジックに特におかしな所は無いと思いますが、数値やグラフまではチェック出来ていません、
私のレスも含めおかしな所は指摘してください。)
赤い線が最大揚力による旋回荷重の線で60ktから立ち上がり、
110kt3.5Gくらいから推力による維持旋回の制限(ピンクのライン)を受る事になってます。(最小旋回半径100m)
現代の代表的な戦闘機F-16A(24000lb時)で概算してみると、
120ktの所から立ち上がり、360ktで9Gの荷重制限に突き当たります。(最小旋回半径360m)
(エンベロープを見る限りでは、この領域では推力による制限は受けないようです。)
200ktくらいで旋回半径が入れ替わるのではないでしょうか。
>1
全推力を揚力方向に振り向ければ、維持旋回は不可能で急減速旋回になります。
しかしハリアーは、少々掟破りですが 半径10m以下の「旋回」もしようと思えば出来るわけで、これをもって「勝ち」と主張出来ない事は無いですね。
グリーネマイヤ智久
- >3.グリーネマイヤ智久様
横から失礼します。追加で教えて下さい。
昔、航空関連の書籍で、コーナー速度=旋回率が最良となる速度=旋回半径も最小、との記述を良く見かけました。高名な専門家の方の本でも見掛けたのですが・・・
私の認識では、
1.旋回率が最良となるコーナー速度と言う領域が存在する。
2.旋回半径が最小となる速度領域はコーナー速度とは別に存在し、一般的にそれよりは低い速度となる。
と理解しているのですが、確たる力学的根拠はありません。
滑空機や自転車の操縦体感では上記のような感覚なんですが、どうなんでしょう?
宜しくご教示ください。お願いいたします。
ニワトリ
- >4、素人が重ねて申し訳ございません。
簡単な物理ですが、同高度・同速度での水平維持旋回を続けている場合には、旋回率もG(加速度)も旋回半径も必要な向心力も同じです。
ただ、実際のACMはこんな単純なものではなく、エネルギーを高度に変換したり消費したりして、高い瞬間旋回率を活用しなくてはなりません。
ところで、御題は「同高度・同速度での水平維持旋回」ではなかったのでしょうか?低速度でも97戦などに水平維持旋回で勝てるジェット機は、ハリアー以外では?
The eternal若旦那
- >5.
「同速旋回であれば旋回率も旋回半径も同じになる」というのは、円周上の線速度 v=rω (r=半径、ω=旋回率)から考えれば、結果と原因が逆転しているように思えますが。
また円運動の方程式 F=mrω^2 から考えれば、同速同半径の円運動であっても、「必要な向心力が同じ」であるためには両者の質量が同じでなければならないのでは?
ささき
- >5.ハリアー以外では?
急旋回の時に機種を上に向けて「ラダーで吊る」事がありますよね。 それをOKとすると、F-15で上を向いて推力だけで浮きながらスピンなんてできないですかね。
速度も高度も落とさない旋回だと97戦と言えどもそんなに小回りできないのでは?
わんける
- >6、ささきさま、誠にことば足らずで申し訳ございませんでした。早速に適切なご指摘をいただき、有難うございました。
ご指摘のごとく、それぞれの物理量が全く異なるのは当然ですが、私が言いたかったのは、もしも「同高度・同速度での水平維持旋回」との条件ならば、飛行性能(小回りの程度?)を勘案すべきパラメーターとしては、「旋回率」でも「G(加速度)」でも「旋回半径」でも「向心力」でも、どれを使っても同じ結果になるということだけです。誤解をさせてしまい、申し訳ございませんでした。
The eternal若旦那
- >5.8.The eternal若旦那様
まず私の追加質問は元質問とは離れて行なったもので、「同高度・同速度での水平維持旋回」の条件には特に拘っておりませんです。ちょっと横入り質問が早すぎましたでしょうか?
それで、The eternal若旦那様の回答の方なんですが、結論として旋回率が最良となる速度では旋回半径も等しく最小になると言う事でしょうか?
うーん、ちょっと感覚的にどうかなぁ・・・と思うんですが。
ニワトリ
- ユルギス・カイリス
ニワトリ
- ごめんなさい、間違って送ってしまいました。
>7.わんける様
そこまでアクロバティックな機動(?)を入れてしまったら、インメルマンターンやバーティカルリバース、果ては昔F−15が自慢げにやっていたテールスライドも入ってしまい、もう何が何だか訳が分からなくなってしまいますねぇ(笑)
ロシアのユルギス・カイリスが行なう非常識飛行もからんで来るかな。
ニワトリ
- >9
単純な話でして、飛行機の主翼はかけられる揚力係数に限度があるんです。
そしてかけられる旋回Gにも限度があり、さらには維持できる抵抗量にも限度があるんです。
仮に翼面荷重200kgの飛行機で地上高度、揚力係数1.0を限度として、速度720km/hだったら、200m/sの二乗x大気密度ρ/2(1/16kg)x揚力係数1.0x翼面積÷重量(200)で12.5Gが瞬間的にかけられます。
でも飛行機は限界Gから、ここまではできません 仮に6Gを限度としましょう。
この場合、6Gが可能な最低速度は約138m/sとなります。
例えば120m/sとか100m/sでは、それぞれ4.5ないし3.125Gが限度になります。
加速度Gと旋回半径は速度の二乗で来ますから
138x138÷6Gと、120x120÷4.5Gと、100x100÷3.125Gは、どれも旋回半径は「同じ」で、旋回率は速度の分だけ138m/sが最良となります。ここまでが#5、6での話しですね。
しかし、速ければ速いだけ空気抵抗は大きいので、揚力係数に関わる抗力が同じであっても、速いほうが速度の低下率は大きくなります。つまり維持旋回で最良の条件がこの通りになるとは限りません。
つまり138m/sで揚力係数1.0を維持できるかどうかはわからないのです。
仮に100m/sでCD1とCD0がつりあってたとした場合、200kgの翼面荷重ですから、浮くのに揚力係数は0.32、誘導抵抗は(飛行機効率0.7、アスペクト比5として)0.009ぐらい、つりあってるので有害抵抗係数0.009で、合計0.018。
138m/sで揚力係数1.0にした場合、抵抗は誘導抵抗が0.09、有害抵抗0.009で0.099になり、速度が1.38倍の二乗で水平飛行の約10倍の抵抗
120m/sで揚力係数1.0だと、7.92倍の抵抗、つまり同じ半径だけど120のほうが維持できる可能性は高くなります。
仮にこの飛行機が8倍の抵抗まで維持できる推力ならば、可能なコーナー速度はどうなるかと、計算してみると・・・(揚力係数1.0、旋回Gは6を限度とする)
旋回半径は120m/s以下が最小。旋回率は140m/sが最良になりました。
限界をどこに設定するかで変わるんですが、抵抗の限界(推力重量比)を小さくすると旋回半径はより低速、旋回率はより高速なところにベストが来ます。
SUDO
- >4
私のコーナー速度の理解も、最大揚力旋回が荷重制限で制限される速度(最大荷重の旋回が行える最小速度)で、
結果 旋回率最大、旋回半径最小となる速度というものです。(瞬間最大旋回)
しかし多くの機体では、その様な旋回では推力に対し抵抗が大きく旋回が維持できず減速(ないし高度低下)します、
維持旋回を行えるのはより低い揚力(旋回荷重)でとなり、上記の零戦の様に維持旋回率最大・旋回半径最小となる速度はコーナー速度より低くなります。
ニワトリさんがおっしゃってるのはこの事を指してるのかもしれません。
(さらに維持旋回での旋回率最大や旋回半径最小となるポイントはコーナー速度ほどアプリオリに決まりません)
また上記頁や私の概算は旋回する航空機の物理の基本的で線形な部分だけを扱ってます、実機ではより複雑な現象が起こり違いが出てくるでしょう、
その事をおっしゃってるのかもしれません。
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基本となる式はこれだけ(v:機速、m:機体質量、a:向心加速度成分、g:重力加速度、r:旋回半径、ω:旋回率、
L:揚力、S:翼面積、ρ:空気密度、Cl:揚力係数、Clmax:最大揚力係数、LF:荷重倍数制限)
・a=v^2/r=rω^2 :旋回と向心力
・a^2+g^2=(L/m)^2 :水平旋回つりあい (荷重制限 L/m=<LF)
・L=(1/2)ClSρv^2 :揚力 (最大揚力 Cl=<Clmax)
維持旋回には以下を追加(D:抗力、Cd:抵抗係数、Cd0:有害抵抗係数、e:飛行機効率、AR:アスペクト比、π:円周率、T:推力)
・D=(1/2)CdSρv^2 :抗力 (維持旋回 D=<T)
・Cd=Cd0+Cl^2/πeAR :抗力係数
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>5
>御題は「同高度・同速度での水平維持旋回」ではなかったのでしょうか?
私もそのつもりでレスしております。
>2のレスの要旨は3行目「一般的にはある速度まではプロペラ戦闘機の旋回半径のほうが小さく、それ以上では現代機の方が小さくなるでしょう。」であり
以降はその説明・例示です。
グリーネマイヤ智久
- なんかレスが遅すぎましたね
とりあえず>13の下から3行目の「>2のレスの要旨」は「>3のレスの要旨」です、訂正します。
旋回と向心力の式も「a=v^2/r、v=rω」と2つに分けたほうがいいですね。
The eternal若旦那さんへのレスには行き違いが有ったかもしれません、すみません。
グリーネマイヤ智久
- SUDO様、グリーネマイヤ智久様
返答遅れてすいません。概ね了解しました。
古い航空雑誌を読み返していたら、F−5EタイガーIIの旋回性能グラフが出てきました。
旋回率とマッハ数を縦横軸に置いて、過重と旋回半径の表示曲線がその中を走っているものですが、
マッハ0.3〜0.75までの領域内において、最大瞬間旋回率と最大荷重は速度によって変動するものの、旋回半径はほぼ2500ft付近で一定となってました。
維持旋回率の場合はマッハ0.75で最大となるものの(旋回半径4200ft)、旋回半径が最小となるのはマッハ0.4付近(3000ft)となってました。
私がイメージしていたのはグリーネマイヤ智久様のおっしゃる通り、維持旋回を行なった場合の事のようですね。
すっきりしました、解説ありがとうございます。
ニワトリ