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この頃の海軍機の試作計画はこんな手順で進みます。
航空本部が実用機試製計画(中期の試作計画)で年度ごとの試作スケジュール決定
航空本部が計画機種について軍令部が定める性能標準に基づく計画要求の検討開始
航空本部を中心としてその機種についての研究会(民間の意見を聞くのはこの場)
計画要求審議会で計画要求決定
計画要求書交付 試作発注
受注会社からの計画説明書提出と計画審査
木型審査
試作機製作着手
完成試作機で構造審査
初飛行後に海軍領収
審査、実用審査
航空本部技術会議で兵器に採用
この流れの中で、計画要求書が出来上がった段階で飛行性能だけでなく、装備する発動機、兵装、機体の概略寸法まで決まってしまいます。
何処の会社に発注してもほぼ同じような飛行機が出来上がるようなシステムになっているということで、民間会社の機体設計者の努力は構造設計をどのように進めて重量増加を防ぐか、そしてより使いやすい機体にするための細部の工夫といった部分に注がれます。要するにあまり変わった事はできないのです。
そうなると、史実に無い機種を想定するならば、そのような要求が生まれるとしたら、○年に×社に△機が試作発注される、と言う段階で、飛行機の姿は出来上がってしまっているということでもあります。
ですから、架空の機種を想定する場合、そのお話に色々な人が納得するようなリアリティを持たせるには、設計者の努力を想定するよりも、その前に実現可能な計画要求書をちゃんと作ってみるのが一番ですね。
発動機は耐久試験に合格したものでないと候補に上げられませんし、兵装も前倒しにはできません。
航続力が1350浬以上なら巡航360km/h〜400km/hとして増槽を含めて1200リットル位は必要かもしれませんね。となると燃料だけで800kg以上ありますし、そこに爆弾を500kg懸吊した状態(爆装を要求するならそれが普通の過荷重状態)で、搭載量は1300kgを超えてしまいます。
これだけでかなり大きな飛行機になることが避けられません。そうすると自重も見えて来ますし、機体寸法も見当がついてきます。
そして、こんな大荷物を抱えた飛行機を零戦でもきつい条件で発艦させるのはちょっと大変だな、ということも判ってしまいます。
ということで、架空の計画要求書をちゃんと作ると、出来る事と出来ない事が区別できて現実味が格段に増して来ますし、それゆえにあれこれと考えなければならないという、悩ましくも楽しい部分が生まれて来ます。
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