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英空軍ボマーコマンドが採用したボマーストリームはドイツ側の防空システムを飽和させるための散開戦術ですから「きちんんと縦列を組んで夜間空襲」する訳ではありません。単機で航法を行う爆撃機が幅20マイル、長さは100マイル単位に及ぶ広範な空域に分散して侵入することで、ドイツ側の地上管制能力を超える目標を出現させるのがこの戦術の目的です。
ですから必然的に戦闘は単機対単機となり、夜戦側は目標を選り好みする余裕はそれほどありません。また機上レーダーのレンジは非常に限られていますから、爆撃機側も戦闘機の接敵行動を察知出来た場合、急機動を行って敵のレーダーから姿をくらますチャンスもあります。
一方、モスキート夜戦など爆撃側の戦闘機は地上管制を受けることができない上に、単機で多方向から接敵してくる友軍爆撃機よりもさらに敏捷なドイツ夜戦を奇襲しなければなりません。ドイツ夜戦も「捕捉された時点で勝負が決まる」訳では無く、逃げるチャンスは英爆撃機以上にあったからです。
そして「不時着したり、脱出できれば夜間戦闘機隊としての任務を立派に果たしたことになる」ということではありません。
夜間戦闘機は爆撃機を撃墜できなければ任務は失敗です。
このように夜間のファイタースイープは容易ではない任務でしたから、その成果は思うようには上がらず、ボマーコマンドの損害は米軍の昼間爆撃のようには減少しません。昼間爆撃の護衛作戦のように敵戦闘機編隊を撃破散開させて攻撃力を奪うような戦いが成立せず、護衛側にとって極めて効率が悪いからです。
夜間爆撃機を邀撃戦闘機から守るという任務は戦後の全天候ジェット戦闘機にすら難しい仕事ですので、モスキート夜戦が決定的な役割を果たせないのも道理なのです。
ドイツ側にとって最良の策は「敵夜戦を相手にしない」ことでした。
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