魚雷は大人になってから
章前『そよ風の行方』
S:どもっ、SUDOです
☆:アシスタントの倉田佐祐理ですーっ(ぺこり)
☆:このコンテンツは『下らない馬鹿話』なんですよねーっ
S:一応『真実一路』てのが題名らしいぞ
☆:なんですソレ?
S:小笠原さんが、有志を募って、そういった馬鹿話を集めるんだそうだ
☆:第一弾がBUNさんのアレですねーっ
S:そ、だから、コレもそういった、一連の中でのみ意味を持ってくるのだよ
☆:そう書くと、何か立派な感じがしますねーっ
S:ま、どうせすぐにメッキははがれるんだ、最初ぐらいはちょっと、格好良くやりたいじゃない
☆:取りあえず、資料は?
S:ま、BUNさんのアレと似たような物だよ
世界の艦船とモデルアートの別冊から幾つかぐらいだね
他は「The First Destroyers」(Chatham Publishing)
☆:そんなに少ない資料で・・・良いんですか?
S:気にしちゃ駄目だよ、重要なのは、いかにソレらしく述べて煙に巻くかなんだから(ぉ
序章『As time goes by』
☆:取りあえず、お題は『魚雷』です
S:魚雷ってのは、爆発物を船舶の水線下にぶつけることで大きな被害を与える兵器の一種だ
☆:えっと、水雷とか言うんですよね?
S:そうだね、スパートピドーの発展形の一種だと言えるな
☆:それはどんな武器なんですか?
S:知りたい?
☆:はいっ
S:伏竜って知ってるかな、あれがソレだ
☆:槍の先に爆弾つけた、アレですかっ?
S:小型の艦艇や、潜水艇の先っぽに括り付けたり、人間が投擲して、ドッカーン
S:さすがに生還率とかが話にならないので、それ以上の発展は基本的に無い
☆:何時の時代です?
S:確か・・・南北戦争ぐらいからだな
潜水艇が出来上がったのは良いけど
当時、潜水艇から艦艇を攻撃する手段としてはこの位しかなかったんだ
☆:あ、魚雷とは、無人の体当たり潜水艇なんですねーっ
S:うん、そーゆーことだな
☆:体当たりといえば・・・
S:衝角だね
☆:あれは駄目なんですか?
S:でかい船でないと打撃力が無いでしょ、今回は小さいフネでのお話が主だから
☆:でも・・・、これって「付けたし」ですねーっ
S:佐祐理さん
☆:ふぇ・・・なんでしょう?
S:そーゆー事をばらさないようにっ!!
☆:あはははーっ、すいませんーっ(^^;;
第一章『生まれたての風』
S:まずは簡単な構造からいって見よう
☆:動力でスクリューを回して進むってのは判りますーっ
S:今だと、ウォータージェット推進とか、一種のロケット推進も有るけど、基本はそうだね
初期のは圧縮空気の噴出する力でスクリューを回していたんだ、冷走魚雷だね
☆:動力は?
S:だから、頑丈なボンベに空気を詰め込んで、それをぶわっと噴出させてそれを動力に使うんだ
特徴としては、構造が簡単で、製造が容易ってのが挙げられる
☆:馬力というか、持続力が無さそうですねーっ
S:うん、だから次に、燃料とエンジンを積んで、ボンベの空気を使って燃料を燃やすようになる
熱走魚雷の登場だ、現代にいたるまで、燃料やエンジンは変化しても基本はコレだな
☆:何時頃から登場したのでしょうか?
S:19世紀末ぐらい
S:さて、スクリューで推進するのは良いけど
自分は回ってしまうし、トルクなんかで針路は捻じ曲がっちゃうね
だから、普通は二重反転式のスクリューでまっすぐ進むようにする
でも、それだけだと、ちゃんと走ってくれないので
ジャイロとかを使って、簡単な舵も持って、それで針路を一定にするように工夫する
☆:後は深度調整装置も付きますねーっ、結構大掛かりなシステムです
S:だからドイツでは家一軒分の価格だったらしいよ、今の対艦ミサイルとかに近い物だったんだな
☆:佐祐理は、もっと単純な物だと思っていましたーっ(^^;;
第二章『オンユアマーク』
☆:初期の魚雷って射程が短いですね、接近しないと難しそうです
S:隠れてこっそり夜間に接近して、発射したら全速で逃げるんだ
☆:高速で接近するんじゃないのですか?
S:高速発射したら、魚雷が壊れたり、誤動作したりするでしょ
勿論、高速接近てのも一つの方法だけど、なるべくばれないようにってのが重要なのさ
第一、当初の水雷艇の最大速度は20ノット前後だぜ
☆:えっと・・・1885年時点の戦艦の速度って?
S:10〜15ノットだ、突っ込んでいくのは無謀だってのが判るでしょ
だから泊地とかを襲撃するとか、そういった限定的運用しか出来ない艦艇だったんだね
☆:じゃあ、エンジンを強化して高速化しましょう、それで多方向から襲撃するのですーっ
S:それでも外洋行動能力は全然無いんだよなぁ
☆:何が足りないのですか?
S:絶対的な大きさだと思う
まあ、この時代の艦艇は多かれ少なかれ、外洋行動能力に苦しんでいたんだけどね
☆:復元性とか船体強度ですか?
S:いや、船体はなるべく小さくしたい、エンジンや装甲や武装はいっぱい載せたい
結果的に船体サイズが過少で、乾舷が足りないとか、そういった事になった
☆:んー、つまり、性能計算に問題が有ったのですねーっ
S:そうだね、最終的にはそーゆー事だと思う
機関と燃料、それに装甲が、木造帆船に加わったんだ。
何をどのぐらい積むのが、無難なのか、挑戦しないと発展は無いし、かといってやり過ぎはヤバイ
☆:バランスの取れた艦艇の登場はどのぐらいからでしょうか?
S:そうだね、1890年代には、外洋行動の取れる近代的戦闘艦のプロトコールは定まっていたと思うよ
まだ、速射砲って絶大な影響を与える代物が待ってるんだけど、それはまあ、別の話
☆:水雷艇の大型高速化を行えば、戦艦にだって条件次第では充分に対抗できるようになると思うのですが・・・
S:フランスではそう判断したな、沿岸防衛には海防戦艦と水雷艇で行う事で、戦艦をそういった任務から解放しようとした
☆:失敗だったのですか?
S:基本的には健全な思想だと思うよ、ただ、基地に固定され易い、こういった外洋行動能力の不十分な艦艇は
対戦車砲と戦車の関係になってしまうんだ、判るかな?
☆:何処に襲撃してくるかが判らないから、来そうな場所、来られたら困る場所全てに配備しないと行けない・・・ですねーっ
S:そゆこと、外洋で打って出ることが出来ないと、戦闘可能時間っていうか交戦回数も減少するでしょ
なるべく遠くで迎撃する、阻止できなくても、残存戦力を集結させて、更に再戦する、これが迎撃戦闘の基本だ
☆:フランス方式はそれを放棄していますねーっ
S:代わりに、安価で、限定的だけど、強力な戦力を持つことができる、仮想敵国との戦力バランス次第では悪くない案だ
☆:でも、駄目だったんですねーっ?
S:佐祐理さん、先読みしないでね(^^;;
まあ、失敗したんだが・・・それは、水雷艇駆逐艦が登場したからなんだよ
☆:水雷艇駆逐艦・・・TorpedoBoat-Destroyerですねーっ
第三章『終わりそして始まり』
S:やっと出た
☆:前振り長いですーっ
S:水雷艇駆逐艦を、後のイメージで言うなら、雷撃機を迎撃する戦闘機に近いかもね
☆:でも、水雷艇より、大きいですよね?
S:飛行機と違って、大きい=鈍重では無いんだよ
駆逐艦は水雷艇を追いかけまして、先回りして味方主力に接近する前に撃破することを考えた艦だ
☆:普通の艦艇では駄目なんですか?
S:問題になるのはコストだ、普通の軍艦では大量に突っ込んでくる水雷艇全部を制圧することは出来ない
☆:って事は水雷艇駆逐艦とは安くて高速な艦艇なんですねーっ
S:そう、ある程度は艦隊の外洋行動に追随できて
(水雷艇が出てきそうなシチュエイションでは戦闘行動が可能であれば良い程度)
水雷艇を制圧できる程度の火力と速度と数量を備えた艦艇だったんだな
☆:あれ?、敵主力への襲撃は、目的ではなかったんですか?
S:最初はね
水雷艇も大型化、高速化、重武装化をしてたんだけど
こうした超水雷艇の性能も内包した水雷艇駆逐艦は
魚雷を装備したら、水雷艇の役割も代替できることがイッパツで理解できる
☆:そこで、水雷艇駆逐艦は、万能軽艦艇への道を歩みだすのですねーっ
S:ただ、未だ、外洋行動能力は不十分だったんだけどね
航行は出来ても、戦闘には常に制限があった、荒れると戦闘できないってのは困るよね
☆:困りますねーっ、やっぱり小さい艦に多くを期待してはいけなかったんですねーっ
S:ま、出来ないことは仕方が無い、それは後の課題としておこう
取りあえず、初期の駆逐艦の要目を見てみよう
☆:以外というか、随分と小さいのですねーっ
S:そして、その割には重武装だし、高速だな
☆:これでは、外洋戦闘能力に問題が出るのも判るような気がしますーっ
悪天候で外洋なら、何もおそれることは無いですねーっ
S:なんか、条件が限定されつつあるような気もするがな
そして、それに対する直接的な答えも存在したんだよ
☆:それが水雷巡洋艦ですねーっ
S:そうだね、巡洋艦として、つまり外洋戦闘艦として成立する
最低限度の大きさにまで拡大した水雷艇だと思ってよい
☆:巡洋艦の定義ってのは、つまりは、外洋戦闘艦って事ですか?
S:基本的な概念はそれだと思う
もっと、言うなら、外洋船舶としての性能追求が最初にあって、戦闘能力は従なんだ
☆:他の戦闘艦が、つまりは戦闘能力が主なのに・・・逆転してますねーっ
S:あくまでも、相対的に見た場合の話だよ
戦闘力を重視した巡洋艦も沢山あるんだから
☆:水雷巡洋艦が流行らなかったのは何故でしょう?
S:英国のように、外洋での行動能力を重視する海軍ってのは少数派だったからね
魚雷は破壊力が大きいけど、運用の制限もあるから
それを主戦兵器にするような艦艇は、基本的に限定戦力だったんだ
☆:主力では無いと・・・
S:だから、そういったモノに、コストのかかる大柄な船体を与えるのは問題がある
どうせだったら、もうちょっと大きくして、砲や燃料も積んで、汎用艦にした方が使い勝手が良い
それに、魚雷以外にも頼れる武器があるなら、無理な高速性能も要求しなくて良い
☆:機関重量とコストが浮きますねーっ
S:そう、小型の汎用巡洋艦でも、殆ど同じ事が出来て
水雷巡洋艦よりも、より幅広い用途に使える、どっちが良いかを考えてみれば答えは出てくるね
☆:これに、駆逐艦の大型化、高性能化、汎用化が来て、水雷巡洋艦は消滅するのですねーっ
第四章『RIDE』
S:ここで、別の方向から、軽艦艇で大型艦と闘うことを考えてみよう
☆:軽艦艇の利点は、数量ですね
S:大型艦の利点はその卓越した攻防性能だ
鍵は、軽艦艇の武器で、大型艦に充分なダメージを与えられるかどうかにかかってくる
☆:帆船の時代から、砲艦ってありましたねーっ
S:その船体サイズから見ると、かなり大型の大砲を少数搭載した奴だな
☆:いつのまにか無くなりましたねーっ
S:日清戦争ぐらいまでは、この手の艦艇はいくらか残っていたよ
最終的に止めを刺したのは速射砲だ
☆:速射砲の装備に走って、アンバランスな大口径の射撃速度の遅い物が無くなったんですねーっ
S:ぶぶー、現象としてはそうなんだけど、理由は別っていうか、ちょっと違う
☆:ふぇ?
S:小口径の速射砲を使っても、大型戦闘艦を簡単に仕留められるわけではないよ
小型艦艇では、速射砲だって沢山は搭載できないんだから
☆:えと、じゃあ・・・
S:大型艦が速射砲を備えたら、こうした軽艦艇はどうなる?
☆:あーっ、判りましたーっ、大型艦の防御火力の向上で、速射砲の打ち合いで軽艦艇が負けちゃうからですねーっ
S:投射数も命中率も向上したから、単位時間あたりの投射量(被弾量)が上がってしまったんだね
そして、その影響は、防御力の弱い方が、より深刻に影響を受ける事になる
☆:それで魚雷になったんですか?
S:結果的にはそーなる、接近するチャンスが少ない、当然射撃時間も長くは取れない
大口径主砲だろうが、速射砲だろうが、射撃時間と射撃速度から、投射できる量は決まってくる
☆:これに命中率をかけたものが、期待できる打撃量ですねー・・・、あ、じゃあ射撃時間が必要です
S:そして、その射撃時間とは、敵の射撃に晒される時間でもある
☆:砲撃戦で、大型艦に勝つには、同等以上の攻防性能が必要ですねーっ
S:つまり、軽艦艇では、無茶苦茶難しい事なんだな
☆:魚雷だと、発射まで持ち込めれば、あとは「知らない」って出来ますねっ
S:それが、魚雷装備の軽艦艇が大量に登場する、一つの理由だろうね
第五章『Little Stone』
S:さて、これまでは、いわば机上の空論で流れてきたね
現実はどうだったのか、本当に、そうなったのか
☆:日清戦争ですねーっ・・って水雷艇って有りました?
S:有るには有ったんだけどね、例の黄海海戦では活躍の余地は無かった
☆:やはり速射砲の登場で・・ですか?
それとも外洋作戦能力でしょうか?
S:速射砲は日本軍の側にしか無かった、だから日本の水雷艇だったら問題にはならない
でもって、あの時は海の状態は穏やかだったから、行動能力には影響ない
☆:なのに・・・なんででしょう?
S:それはね、魚雷の性能が原因だったと思う
☆:射程が短いから攻撃チャンスを作れないと・・・・?
S:正確には、無理して突っ込むより、確実に喰える状況で使うべきと判断されたって事だろう
☆:無理とか、無茶に近いんですか?
S:この時期の水雷艇は速度、行動力等が不十分な要素が有ったんだ
☆:あ、では、こっそり接近してって時代の艦艇だったんですねーっ
S:高速な巡洋艦と大して変わらないか、場合によっては低速だったんだよ
☆:射点に付く前に撃破されかねませんね・・・
S:結局、海戦後、損傷艦艇が港に戻ったところを襲撃したんだ
☆:なるほど、それなら相手が止まってるし、攻撃力は上がりますね
S:負け戦でボロボロになって戻ってきたところだから、応戦も弱いからね
この攻撃は成功を収めた
☆:水雷艇も役立つと証明したんですねーっ
S:どっちかと言うと、魚雷の威力を証明したような物だ
水雷艇は、その強力な新兵器のプラットホームとしては貧弱だと証明しちゃったんじゃないかな
魚雷は当たるとでかいけど、当てる為、正確には発射できる状態に持ち込むのが大変だって事だな
☆:先の洋上決戦では使われていないのですか?
S:やばい状態になったのがあったと思う
日本軍の仮装巡洋艦が、隊列から脱落したところを清軍の水雷艇に雷撃されてるな、外れたけど
☆:攻防ともに貧弱な仮装巡洋艦に襲撃を行うのがせいぜいだったんですか・・・・残念
S:敗残艦隊の帰港を襲撃するのも、同様の事だと思うけどね
これらは、もっと大掛かりなシステムの一つとして組み込まれていくんだけどね
第六章『2 steps toward』
S:さて、水雷艇は貧弱、水雷巡洋艦は中途半端、欲しいのは?
☆:安価でそれなりに無理すれば外洋でも使えて、高速な軽艦艇ですーっ
S:そう、それに、もっとも近い性格、性能を持っていたのが水雷艇駆逐艦だったんだ
S:数値を極力出さないのがこのコンテンツのウリなんだが
☆:佐祐理が許可しますーっ
S:うん、じゃあ、初期の初期、英国27ノッターの要目を見てみよう
そうそう、こいつらは、当初はTBDと呼ばれていたんだ
☆:Torpedo boat Destroyer ですからねーっ
S:まだ、試作段階だったし、要求性能以外には極端な制限は無かったんで
各社、仕様が色々あったってのも、中々楽しいんだが
☆:分類したがるマニアには、不便というか、面倒が有ります(^^;;
S:まあ、平均的に見て、200tぐらい、3,000馬力で、目標27ノット
武装は76mm砲1に57mm砲5、45cm魚雷発射管2ってところかな
建造価格は船体と機関合わせて、35,000〜100,000ポンド
建造期間は8〜28ヶ月、随分とばらついてるね
☆:正確には、最初期の物は26ノッターで、成績良好につき、要求が27に引きあがったみたいですねーっ
S:これが1892年、つまり、明治25年ぐらいだ
☆:すいません、この頃の水雷艇ってどのぐらいの性能ですか?
S:そうだね、比較するには、そっちも知っておきたいね
日本が明治25年に取得した、フランス製の5号型で
常備54トン、525馬力、20ノット、47mm速射砲1、36cm魚雷発射管2
☆:大きさが4倍、速度で大きく上回り、火力は全然圧倒的です
S:まあ、水雷艇を始末するための艦だから、ある意味当然なんだけど
基本的に、船舶は大きい方が、速度も武装も稼ぎ易い傾向がある
☆:この場合4倍の大きさ重さに6倍の馬力ですから速いのは当然ですが
それで、これだけの重武装をする余裕まであるんですねーっ
S:つまり、小型にするのは限度があるって事だな
大きさ=コストだけど、大きさには比例しない、大きくなるほどトン単価は下がるから
水雷艇と比べても極端に高価ってワケではない
☆:数量を確保出来るぐらいには安くて、そして、全般性能で上回るって事ですねーっ
S:もっとも、水雷艇も性能向上するんだけど
それは結果的に、大きくなるワケで・・・
☆:水雷艇駆逐艦との性格があやふやになって行くと
S:ま、水雷艇駆逐艦の場合、魚雷よりも砲の装備で、水雷艇を喰うのが主任務で
水雷艇は、それらを突破して大物に魚雷を発射する、つまり魚雷が主だってのがあるが
☆:結局、迎撃してくるTBDとの交戦の為には火力も必要ですーっ
S:そう、こうして、水雷艇は事実上消滅するんだ
水雷艇駆逐艦は、その登場の結果、水雷艇を本当に駆逐してしまったんだ
☆:そして、TBDから、駆逐艦へと、変るのですねーっ
第七章『霧の海』
☆:なんか、色々ごちゃごちゃで、混乱してきましたーっ(;_;)
S:じゃあ、簡単に、時間順に並べてみようっか
☆:水雷艇の登場は1870年ぐらいですか?
S:そうだね、兵力としての整備はそのぐらいからだ
まだ魚雷が無いぐらいだったと思う、だからスパートピドー使ったモノだな
☆:震洋と大して変わらないですね・・・
S:まあ、常識的とは言えない部分が有るが
リッサ海戦のように、体当たりが重要な攻撃方法だったのがこの時代なんだ
☆:魚雷の登場は、もうちょっと後なんですねーっ
S:ホワイトヘッドが英国に売込みしたのは1872年だ(正式採用)
ちなみに、元はイタリアだと思ったぞ
☆:時計の歯車はここから回り始めるんですね・・・
S:水雷巡洋艦は1884年に起工される
まあ、何を水雷巡洋艦とするか、結構あやふやな部分が有るが、英国の場合は
一応、このScoutがそれだと思うね
☆:えと、1885年就役、常備1,580t、17ノット、5インチ砲4門、36cm発射管3門ですね
なんか、随分と低速ですねーっ
S:軽量で大馬力な機関が入手できなかったのが敗因だ
そして、これでも航洋性能は不十分だったんだ
この時代はもっと大きな艦の方が高速に向いてたんだな
☆:この時期の水雷艇ってのは、どのぐらいの性能ですか?
S:さっき例に出した5号型が近似値だと思うよ
☆:どっちにしても性能不足ですねーっ
S:これらは、水管缶の登場前だったからね
☆:フランスのベルビール缶とかですか?
S:そうだね、高温高圧ボイラーの登場で機関の馬力重量比が大きく改善されたんだ
☆:まだ、魚雷の性能は貧弱なままですよねーっ
S:そうだね、熱走魚雷前だ、加熱装置は結構初期からあったみたいだけどね
☆:加熱装置?
S:ボンベからそのまま噴出させるより、温めてから出した方が良いでしょ?
☆:なるほどーっ、そうすれば出力は大幅に向上しますねーっ
S:まあ、こういった工夫をしてても、せいぜい25-30ノットで1,000mとかなんだが
☆:つまり、まだ、外洋戦闘に使える武器ではないんですねーっ
S:それでも、軽艦艇に搭載されたら厄介だ、だからTBDが出てくるんだが
その武装の主眼が砲だったように、魚雷で何かをするという思想には至ってないな
S:さて、ここで19世紀末期の試行錯誤は一通り出たと思う
☆:佐祐理は、もうちょっと大きい軍艦の事も知りたいんですけどーっ
S:それらは、近代海戦史上、最もドラマティックだった、あの闘いの後に触れよう
もう、語り尽くされた感もするので、簡単にだけどね
第八章『狂気』
S:日本海海戦だ、いや、ここではBattle of TSUSHIMAとすべきかな
日露戦争、いや、海軍史上、もっとも決定的な何かを生み出してしまった戦闘だ
☆:佐祐理も知ってます、完璧なワンサイドゲームですねっ
S:この戦闘で、日本軍は、使える戦闘艦艇、全てをぶつけた
☆:全部ですか?
S:幸い、本土近くだったってのもあるし、日本海軍の歴史そのものが浅いから
動く軍艦とは、それなりに若い艦でもあった、だから闘えないわけではなかったんだ
☆:そういえば、最初に艦隊を発見したのは徴用商船ですねーっ
S:そして、触接して報告を出しつづけたのは、世界初のエルジッククルーザー『和泉』だ
この時点では、完璧な旧式艦だな
☆:接触、誘導等に参加したのは旧式艦艇主体ですね
S:殴り合いでモノを言うのは、性能だ
だけど、見る事は「そこに居ること、在る事」がなんと言っても第一だな
外洋で行動できる、その事が一番重要で、そして、そういった艦が多数有ること、それが重要なんだ
☆:そういった事に特化したのが偵察巡洋艦とかですね、なんで、日本はそういった艦を用意しなかったのですか?
S:金が無い
☆:あ・・・、だから、動く艦全てを使って哨戒線を張って迎撃したんですね
S:殴りこみではなく、迎撃だから出来る技でもあるんだが・・・
S:さて、話を戻そう
そう、使えるものは全て使ったんだ、そして、その中には水雷艇や駆逐艦もいた
☆:敵戦艦に襲撃を敢行したんですねーっ
S:日本軍は、貧弱なこれら軽艦艇が大型艦に突撃かましても、まあ返り討ちだろうと理解していた
だから、最初は、大型艦で叩いてから、止めにこいつらを使うって事を想定していたみたいだな
☆:あれ?、先制襲撃では無いのですか?
S:先に、この時代の魚雷の性能を見せたでしょ
戦艦の速度、火力を考えると、捕捉して襲撃するのは、無茶に近い
☆:日清戦争よりも軍艦の戦闘力は向上してますね、魚雷はあまり向上してないのですか?
S:時期的には、同時期に熱走魚雷と重なるんだが・・・
たぶん両軍とも、保有してなかったと想像するよ、だから、性能向上はなしだ
☆:目標だけが、一方的に強くなったと?
S:水雷艇は大きく、そして速くなったし、駆逐艦も主流は30ノット近くまで出るようになって
まあ、艦艇としての性能は向上してるけど、防御放火と比べると、辛いな
☆:だから弱らせてから、攻撃すると・・・
S:ただ、駆逐艦は、日中の戦闘にも参加しているよ
主として、軽艦艇への火力投射って形だけどね
☆:水雷艇は参加していないのですか?
S:あの電文を知ってるだろ?『天気晴朗ナレドモ波高シ』って
水雷艇はその外洋行動能力から、足手まといだったんだ
☆:全艦艇が、国家の命運をかけて、全滅すら覚悟して出撃するときに「足手まとい」っ?
S:現実的だったんだよ、あの頃の日本軍は
S:さて、昼間決戦は、戦艦や巡洋艦が敵艦を叩きのめしたね
多少は波も収まった、夕闇と同時に、駆逐艦や水雷艇が行動を開始する、夜襲だ
☆:戦果は大きかったんでしょうねーっ
S:沈んだのは数隻だと思うよ、何しろ射程が短いから接近できないと撃てない
ただ、その襲撃すら出来なかったのも多かったんだ
☆:行動能力の問題ですか?
S:そうだね、荒波の中、敵艦を発見して、襲撃するのは想像以上に困難だったんだ
ただ、その中で見ると、駆逐艦は、水雷艇よりも戦果はずっと大きく
更に、翌日の昼間戦闘にも関与して、敵将を捕らえるとか、万能軽快艦艇としても大活躍をする
☆:艦隊作戦の底辺レベルに確固とした地位を確保したんですねーっ
S:そうだね、実際に海戦の初期段階、接触と誘導の時にも関与してるから
最初から最後まで、ずっと働いたと言えるだろう、大活躍だ
☆:駆逐艦は役立ったと♪
S:うーん、魚雷の性能がもうちょっと良ければ、戦果はもっと有っただろう
また、外洋行動能力がもっとあれば、襲撃成功率も高まった
☆:まだ、性能的には足りなかったんですか?
S:そう、まだ足りなかった、それがはっきりと判ったのが日本海海戦だったんだよ
そして、水雷艇は、全然駄目だと証明されちゃったんだ
例え半額で、倍の数量を揃えられたとしてもが、ゼロは倍してもゼロでしょ
役立たずの境界線を越えられないと証明したのさ
☆:そういえば、襲撃は夜間でしたね
S:砲撃は夜間だと当たらないんだ、だから比較的襲撃し易い
☆:雷撃も当たらないと思いますーっ
S:勿論、昼間よりは当たらない、でも砲撃よりは条件は悪くならないんだ
☆:なんで?
S:もうちょっと『オトナ』になったら、教えてあげよう
第九章『輝く季節へ』
S:さて、佐祐理さんが望んだ、大型艦艇のお話だ
☆:大型艦艇も魚雷は積んでいますよね?
S:近接して殴りあうってのが、この時代の戦闘だったからね
大型艦は頑丈で、敵艦との速度差も小さい、接近が出来る、つまり雷撃も出来る
☆:その割には、あまり、魚雷を沢山積んだ戦艦ってのは無いですよ?
S:沢山積む理由は、投射量で命中数を稼ぐためだよね
つまり、避けられる可能性が高いから沢山積むんだ
☆:沢山積まないのは、つまり避けられない状態を想定していたと?
S:もっとも、水雷艇なんかを見ても、少ししか積んでいないから
一撃必殺は考えても、多数投射して命中を期待するって思想も無かったのかもね
まあ、大型艦の場合は、砲撃で叩きのめして、魚雷で止めって感じだったんだろうね
S:さて、大型艦の発展は基本的には、軽艦艇と同じだ
高速化と、外洋戦闘能力の向上だったと見て良い
☆:大型艦でも、外洋戦闘能力が足りなかったんですか?
S:足りなかったんだ
☆:やはり、機関の登場は、それだけ負担が大きかったのですか?
S:それと、武装と装甲の問題がある、特に問題になったのは装甲だ
クリミア戦争や南北戦争で明らかになったのは、装甲艦の有効性だ
そして、その装甲艦をなんとかするためには、砲も巨大になる
☆:結果的に、フネとしての性能に問題が・・・・難しいんですね
S:これらの妥協点の模索、そして重量を食う機関の高性能化がポイントだったんだ
☆:防護巡洋艦の登場は解決にはならなかったんですか?
S:浅い角度で非徹甲弾が、少数突っ込んでくる条件でなら有効だったんだけどね
速射砲の登場で、非装甲区画を切り刻まれて終わってしまった
S:軽艦艇と、大型艦の最大の違いは、速度の考え方なんだ
☆:ふぇ?よく判らないんですけどーっ(^^;;
S:大型艦は、大きい奴ほど強い
そして小さい奴は、それに勝てないから、逃げられるように高速なんだ
☆:軽艦艇が、高速性能を、攻撃手段に使うのとは違うんですか?
S:勿論、逃げるとは限らないんだが、逃げられるってのは重要だな
S:基本的に、速度は馬力重量比の三乗に比例する
また馬力=機関重量だと思って良い
結果的に、高速性能を与えようとすると機関重量の比率が増加する
☆:つまり、小型艦程、武装や装甲に回せる余裕が少なくなるんですねーっ
S:これが、ある程度大きい艦の方が、戦闘能力のバランスが良くなる一つの理由だね
S:艦艇の性能向上は、この武装・装甲・機関の妥協点の模索だったんだが
タービン機関と公算射法を活用した、弩級戦艦と巡洋戦艦の登場が
既存のヒエラルキーをご破算にしてしまうんだ
☆:つまり・・・
技術革新の結果
何群かの、性能妥協点で構成された、艦艇グループをグチャグチャにしちゃったと?
S:俺はそう思うんだ
問題点は、日清戦争で、防護巡洋艦が「駄目っぽい」と判っていながら
それに代わる巡洋艦が登場してなかった事だな
これに、巡戦の登場の結果、装甲巡洋艦が二線級以下に格下げされてしまい
艦隊の働き蜂であるべき、巡洋艦が全然足りなくなってしまうんだ
☆:数量というより、性能面での不足ですね
S:英独は、新世代である「軽巡洋艦」を建造し始めるんだけどね
一時的に、戦力は、弩級戦艦、巡洋戦艦、そして軽艦艇しか無くなってしまうんだ
☆:軽艦艇、つまり駆逐艦の重要性が大きくクローズアップされますね
S:もっとも、各国とも、大戦末期ぐらいから軽巡の建造を開始するんで
この穴は比較的早期に埋まるんだけど・・・
☆:あ、まだ、なんかあるんですねーっ
S:内緒
☆:えぅ〜、教えてくださいよーっ
S:だから、内緒だ、続きは後半ね(爆)
第十章『風の辿り着く場所』
S:さて、20世紀に入って、いくつかの技術的革新があったね
タービン機関による艦艇の速度向上とか
熱走魚雷の登場とか
☆:駆逐艦の戦闘能力は、これで大きく上がったのですねーっ
S:そして、潜水艦の戦闘能力もね
潜水艦といえども、余裕のあるときは砲撃も多用したんだけど
魚雷の性能向上は、潜水艦を恐るべき兵器にしたといっても良い
S:そして、駆逐艦の大型化、機関の軽量化は
一定の外洋行動能力を駆逐艦に与えることになる
もっとも、この外洋能力の追求は、今後も続くんだが
取りあえず、合格レベルに到達したのがこの世代だな
☆:結局、1,000tぐらいになってしまうのですねーっ
S:英国の場合、M級とかR級が、大戦前半の量産駆逐艦で
常備約1,000t、34-36ノット、4インチ砲3門、53cm発射管4門
☆:思ったより初期の駆逐艦から、火力とかは向上してませんね?
S:速度と航洋性能に回されたと見ても良いね
これでも、まだ速度向上の要求は大きかったみたいだけどね
S:そして、ジュトランド海戦で
駆逐艦は主力の援護や脱落艦艇の処分等で活躍する
☆:日本海海戦と似てますね
S:あれよりも、艦隊の戦術運動により大きな影響を与えていたと思うよ
そして、その結果、駆逐艦の雷撃力に多大な期待がかけられることになる
☆:やはり雷撃機会が多かったということですか?
S:そうだね、駆逐艦の性能向上と、魚雷の性能向上が有ったんだ
また、この戦争では、大型艦が魚雷で沈む事が多かった
☆:魚雷の破壊力の増大と、被弾機会の増加ですか・・・
S:そう
ホワイトヘッドが売込みしてから約40年
魚雷は、ここで、本当に、戦力として、武器として、認められたと言えるね
☆:オトナになったんでしょうか?(笑)
S:そうだね、そういっても良いかもね
いんたぁみっしょん『ためいき』
S:取りあえず、ここまでです
☆:まだ、魚雷の活躍が・・・しくしく(;_;)
S:それは、後半で書くツモリだ
取りあえず、ここで公開して、反応見て
更に、これを直して、それからだな
☆:ぶぅ、つまらないですーっ
S:後半の予定ですが、取りあえず11章は、第一次大戦後半とかかな
12章は88艦隊、新世代水雷巡洋艦とも言うべき天龍と5,500t級の登場
そして、13章において、睦月が出てくるんだ、61cm魚雷の登場だな
14章で、他国の整備状況を軽く眺めてみる
15章は、おさらいだな、新世代の魚雷攻撃とは何なのか
16はタイトル未定だけど、特型が登場する
☆:これって、一番難しいですね
S:17で巡洋艦にもう一度戻ろう、条約型巡洋艦とは何なのか
18で、夜襲、その功罪を問う
19は、こうした夜襲専門艦艇とは違う答えを出してみるわけだ
20は、実戦での事例を参考に、もう一度問う、水上戦と魚雷をね・・・
☆:でも、どうせ、予定は未定なんですよね?
S:そうだね(ぉぃ
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