最も奇異な形容の飛行機として有名なのが、ブローム・ウント・フォス Bv141B(1938)です。 従来の航空機の常識を破った左右非対称の本機は、見た目に関心が集まりますが その飛行性能は当局の要求を充分満たしているものでした。 この機体は主翼の右に縦に3人乗るコクピットだけの部分を付け、その左側には空冷 星型エンジンを先端部に付け、尾端には水平・垂直尾翼を持った胴体をつけ、この 大きさのまったく異なる ふたつの部分を主翼の左右に配したものです。 全ての方向において最も視界がよいこと、すなわち「最大の全方位視界」を得る事 は偵察機にとっては、最も重要で永遠の課題であるといえるでしょう。 その要求を満たすために開発されたのが本機で、ライバルのFw189はエンジン2基として これを双ビームとし、主翼中央部にコクピット部を配するというオーソドックスな構造です。 一方本機のデザインのアイデアは単に奇異なものではなく、発想の転換による合理的、 論理的な結果であり、空力的にも充分配慮されていました。 その斬新なスタイルの根本となる部分 すなわちコクピット部はエンジンがプロペラを回そうと するときに、逆にプロペラから受ける反トルクを打ち消すように右に配置されました。 外形的にはまったくアンバランスな機体でしたが、従来の発想から脱した新型式となり その飛行性能・視界の優良性は、当局の要求を充分満たしていました。 しかし航空省は 当初その先入観から否定的な意見でしたが、その結果に満足し 量産を計画した時、今度はドイツ空軍総司令部から横槍がはいってしまいます。 結局 性能的には劣るFw189が採用され、本機の量産計画は破棄されてしまい 原型のAシリーズ エンジン強化型のBシリーズ併せて十数機の完成にとどまりました。