STOL機とは短距離離着陸性能を活かした機体のことで、最も有名なのが1937年に 採用された多目的連絡機 フィーゼラー Fi156 シュトルヒですね。 第二次大戦中にドイツで使用された さまざまな特徴有る機体のうち、見た目での 少々前近代的な機影とは裏腹に、その活動ぶりは素晴らしいものでした。 戦後もフランスのモランソルニエ MS500、チェコスロバキアのムラズ K-65としてライセンス生産されます。 同社の創設者であるゲルハルト・フィーゼラーは単なる経営者ではなく、自ら第一次大戦で エースパイロットとして活躍した経験と、曲芸飛行で国際的な名声を得ていました。 そういう彼の経験を反映して開発されたのが本機です。 高翼、固定脚、鋼管羽布張りの極めて簡易な構造の機体に、側面の突出した広い ガラスのコクピット(乗員2人)をもち、主翼のほぼ全体にわたる固定スラットと その後縁に 間隙フラップを備えていました。 生産の簡略化と軽量化を考慮して、木製固定ピッチ2枚プロペラ、胴体は鋼管フレーム、 主翼は木製構造の羽布張りという、あえて旧式な構造をとっていました。 離陸滑走距離60m 着陸距離に至っては無風状態でも40mという優れた性能で、 この種の機体としては異例の2900機が生産された名機です。 なお日本陸軍でも 本機を参考にして、キー76 三式指揮連絡機が製作されました。 余談ですが、陸軍唯一の艦上機として護衛空母「秋津丸」に搭載されています。