第二次大戦のドイツ空軍における謎のひとつに、大型戦略爆撃機が実質的に無い事 が挙げられます。だが計画としてはハインケル社の爆撃機A開発というのがあった。 すなわち 高速性能の要求に対し全体は流線型を基調とし、丸い全面ガラスの機首 中翼型式、大アスペクト比の主翼を持った機体が、ハインケル He177 グライフです。 その最大の特徴が、双子型エンジンのDB606と表面冷却法です。 戦前の段階で5000kmの航続距離、500km/hの速度、急降下爆撃も可能な大型機と いう要求に対して、同社が苦肉の策としてもちいたのが このエンジンです。 すなわち既存のDB601Eをふたつ横に並べてギアボックスでつなげ、延長軸によって 大きな直径のプロペラを回すというもので、このエンジンに表面冷却を併用する事で 不必要な空気抵抗を最小限度にしてしまおう という期待のアイデアだったのです。 また片方が故障しても完全に停止しないように、ギアボックスにはクラッチが内蔵され、 また 2700馬力の出力に対し、その反動トルクを考慮して右翼用(DB606A)と左翼用 (DB606B)でプロペラ回転方向を逆にしていました。 苦労の末 誕生した双子型エンジン機でしたが、潤滑が不十分、スロールしやすい、燃料 噴射装置からの燃料漏れで火災をおこしやすい等の問題がありました。 また基本的な解決法として4発型(He177B-5)も計画されていたようです。