作戦要務令

第四部


上陸戦闘

第4章 特殊の上陸戦闘

第1節 特殊の上陸法
  1. 第123
    水際戦闘及び揚陸作業に特に適応せる部隊を以って、上陸戦闘の骨幹を成形せしむることあり。此の部隊は其の目的を達成せば、所要に応じ陸上の先頭を他部隊に譲り、次期の上陸戦闘を準備するものとす
  2. 第124
    沿岸に強度の陣地設備を有し、且つ武装せる舟艇を以って我が攻撃を妨害する敵に対しては、師団長は成るべく有力なる武装せる艇隊を以って、海上及び陸上よりする敵の各種企図を破摧するを可とす。武装せる艇隊は、状況に依り直轄使用し、或は之を揚陸作業隊に配属す。該艇隊は火力の外、爆雷、発煙装置等を有し、且つ成るべく軽快なるを要す
  3. 第125
    敵の有力なる飛行機、潜水艦、水雷艇等の活動を予期する場合に於いては、状況に依り一部若しくは大部の擱坐上陸を準備するの止むを得ざることあり。而して、一度擱坐せし船舶は一時使用困難となり、又、敵の集中火を受け上陸至難に陥るを予め考慮せざるべからず
  4. 第126
    水際戦闘、特に其の初動を有利ならしむる為、水陸両用戦車、若しくは此の目的の為特に舟艇に搭載装置せる戦車を最も緊要なる正面の部隊に配属することあり
    前項の戦車を配属せられたる第一線部隊の指揮官は、通常之を第1回上陸部隊と共に上陸せしめ、水際附近に於ける側防機能の制圧、障碍物の破壊、海岸付近の要点奪取等に協同せしむるを有利とす
  5. 第127
    1部隊の奇襲上陸の為、軍艦を使用し、或は舟艇の運搬、泛水を迅速ならしむる為特殊船舶を使用し、或は水際戦闘を有利ならしむる為、重火器を搭載せる装甲浅吃水の船舶を使用するを有利とすることあり
    軍艦に依る輸送は快速にして奇襲上陸に適するも、兵員、上陸用資材の搭載力少なきと、馬、重材料を携行し得ざるとの不利あり