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作戦要務令
第三部
第3篇 衛生
第1章 人衛生
第4節 戦闘間の勤務
第210
隊附軍医は所属部隊の戦闘開始に先立ち、全般の状況を予察し、傷者収療の時期及び方法を立案し、且つ、衛生材料の補充等に勉むるを要す
第211
戦闘に方りては、隊附軍医以下は戦線に進出し救急の処置に従う
戦闘激烈にして傷者続出するに至れば、所要に応じ歩兵隊は其の隊附衛生部員の一部、補助担架兵、及び衛生材料を以って繃帯所を開設し、傷者を収療す。状況に依り、隣接部隊の衛生部員と合同して繃帯所を開設することあり
繃帯所は成るべく戦線に近く、敵眼、敵火に掩蔽し、交通便利にして、瓦斯の滞留を避け得る地点に之を選定し、又、為し得れば風雨寒暑を防ぐに便にして、掩蔽物、水、及び温存材料を得易き所を可とす
繃帯所の勤務員は軽装し、補助担架兵は担架及び所要の衛生材料を携えて戦線に前進し、傷者の収容及び救護に任ず
繃帯所に収容したる患者中、戦闘に堪うる者は必要なる処置を施したる後直ちに戦線に復帰せしめ、其の他は徒歩又は担送に依り後方衛生機関に到らしむ
繃帯所は部隊の移動に伴い、速やかに傷者を後続衛生機関に引継ぎ、又は之と交代したる後閉鎖追随するか、或は他の地点に移動開設す
繃帯所の開設を予期する場合に於いては、予め補助担架兵を集め置くを可とす
第212
戦車、騎兵、砲兵、及び工兵隊附衛生部員は、戦闘に際し所属部隊長所命の地点に位置し、傷者の収療に任ず。但し、此等の隊附衛生部員は、状況に依り最寄歩兵隊附衛生部員と合同して作業することあり
第213
師団長戦闘を予期せば、患者収容隊を戦線に進め、機を失せず傷者の収容、後送に任ぜしむ。状況に依り、患者収容隊をして患者集合所を設けしむることあり
師団長は、要すれば患者収容隊の一部、或は戦闘救護班の若干を第一線部隊に配属することあり
戦闘救護班は第一線に於いて救護に任ずるを通常とし、主として軍医以下若干の衛生部員より成り、患者収容隊長其の人員、材料を以って、之を編成するものとす
第214
師団長は戦闘を開始するに方り、通常衛生隊をして所要の位置に野戦病院を開設し、戦線より来る患者の収容、初療の普及、完成等に任ぜしむ。状況に依り、其の一部を戦線に近く挺身開設せしむることあり
野戦病院の位置選定の要領は繃帯所に準ずるの外、特に我が軍の配備に適応し、且つ所要の地積を有し収療に便なるを要す。状況之を許せば、成るべく建物を利用するを可とす
第215
軍隊追撃に移るや、諸般の手段を講じ戦場に残る傷者の収療に勉め、以って果敢なる追撃を促進せざるべからず。之が為、師団長は予め待機しある衛生機関をして、速やかに追撃隊に続行せしむると共に、戦線に在りて作業しある衛生機関をして、速やかに傷者を後方衛生機関に引継ぎて追及せしめ、以って追撃間及び爾後の戦闘に於ける傷者の収療に遺憾なからしむるを要す
第216
軍司令官は兵站衛生隊を適時戦線に前進せしめ、師団衛生機関の交代前進を促進し、或は其の一部を師団に配属することあり
患者輸送隊は、其の全力を挙げて傷者を後送し、師団の追撃行動を軽快ならしむるを要す
第217
退却に決するや、師団長は先ず衛生隊に的確なる命令を与え、輸送機関を配当して後方に移動せしめ、又、各部隊及び其の他の衛生機関をして戦場に在る傷者を極力収容、後送せしむ。之が為、予備車輌、空車輌等、有ゆる輸送具の利用に勉むべし。此の際、死傷者は万難を排し敵手に委せざる如く勉むるを要す
第218
戦場に在る衛生機関は常に自ら警戒し、不慮の敵襲に備うるの着意を必要とす
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