キ84 I型「フランク」パイロット・ハンドブック

INTERMIM REPORT NO.2
(Project No.NAD-25)

R.J.Groseclose, Captain, Air Corps


セクションI 解説

●概要

 キ84「フランク」I 型は 18 気筒の星型ハ 45-21 型エンジン一基を持つ低翼単葉の単座機である。概略の外形寸法は以下の通りである。

翼幅 37.1 フィート(11.3m)
胴体長 32.32 フィート(9.85m)
高さ(地上における垂直尾翼) 11.17 フィート(3.4m)
翼面積 226 平方フィート(14.58m^2)

 この機体は全備重量約 7940 ポンド(3600Kg)、最大重量約 9194 ポンド(4170Kg) である。

●操縦系統

 補助翼は両端の自己求心型(self-centering)軸受けによって主翼の14番および24番助骨に接続されている。補助翼の操作索は中央に接続されている。

 水平安定板中央には筒型(Tubular)の操作シャフトがあり、ここから伸びた操作腕が左右昇降舵に接続されている。操作シャフトは両端に軸受け(attachment fittings)がリベット留めされており、これが水平安定板側に三本のボルトで留められた固定軸受けと噛み合うようになっている。昇降舵は上記の機構および左右の蝶番で留められているため、容易に着脱することが可能にになっている。

 方向舵も他の動翼同様金属骨格に帆布を張った構造であり、ごく一般的な機構によって駆動される。

 フラップは油圧式のファウラー型である。フラップ駆動弁はコクピット左側の床に備えられている。これによってフラップ動作角は 15〜35 度に制限されており、また着陸脚と同様の切り換えバルブも同時に駆動される。

●着陸脚

 フランクI型は完全に収納可能な通常形式の引き込み脚を備えている。通常、これはコクピット左側の制御ハンドルによって操作され、駆動は油圧式である。

 主脚は主翼に対して水平に収納される。引き込み機構はリンク方式である。

 「脚上げ」と「脚下げ」動作の唯一の違いは、保全ロック機構の違いである。「脚上げ」位置での保全ロックは、初段リンクの下部に備えられたサスペンド・フックそのものによって行われる。操作ハンドルが「上げ」位置に動かされると、補助シャフト(auxiliary shaft)のカムが回転し、これによって鍵部(key)のローラーがスプリングの力に逆らって持ち上げられる。これによってシャフトはロッキングプレート保全位置から外れ駆動シリンダーを動かし、シリンダーによって脚は「上げ」位置に持ち上げられる。脚を下ろすには操作ハンドルを「下げ」位置に動かす。これによってロック機構は保全位置に動かされ、脚上げ(retraction)の動作が解放される。主輪カバーは操作腕を介して補助シャフトに接続されており、主脚の動作と独立して開閉が行われる。

 尾輪の上げ下げは油圧であり、主脚と同じハンドルによって操作される。これは同時に尾輪カバーも駆動する。尾輪は駆動機構との結合部(joining section)で前屈(bend forward)するようになっており、結合部は「下げ」時に保全機構としての役割も果たす。

 緊急時には脚操作ハンドルを「下げ」に入れ、機体を左右に振ることによって脚を出すことができる。こうすることによって脚は自重で下りてロックされる。尾輪に関しては、緊急時に「下げ」位置に下ろすスプリングが装備されている。

 計器版には緑と赤の脚位置表示ランプが装備されており、それぞれ「下げ」「上げ」状態を意味する。脚上げ、もしくは下げの途中で動作が止まった場合はどちらのランプも点灯しない。主翼上には黄色の標識棒があり、主脚「下げ」状態を示すようになっている。主脚が完全に出ない状態でフラップを 30 度以上に下ろすと警報ブザーが鳴るようになっている。

●ブレーキ

 主輪のブレーキは油圧ドラム式である。ブレーキ操作は一般的な爪先ペダル式である。

●油圧系

 フランクI型は作動油(hydraulic oil)を油圧系に使用している。作動油は第一助骨の直後(*1)、機関砲格納部に設置されている。
*1:原文 Attached immediately behind the first former.

 作動油出口には自動遮断バルブが備えられており、配管が外れたときの油漏れを防ぐようになっている。
 コクピットには脚とフラップの油圧系選択スイッチが備えられている。また、手動式の油圧ポンプもコクピット内に備えられている。

●電気系

 24 ボルトの電気系が使われており、メインスイッチはコクピット内に備えられている。
 エンジンは 1.5 キロワットの発電機を駆動する。電圧安定器と畜電器も備えられている。

●燃料系

 フランクI型は左右の主翼に一個所づつと中央の合計3個の燃料タンクを持つ。これらに加えて取り外し式の主翼前縁タンクと噴射タンクを2つづつ、1つの小さなプライムタンク(primer tank)を備える。各タンクの位置と容量は次の通りである。

1. 右および左主翼タンクは主翼の翼弦中心付近、胴体寄りの内翼部にある。両者を合わせた容量は 91.3 ガロン(345.6 リットル)である。

2. 胴体タンクはパイロットの直前方にあり、容量は 57.3 ガロン(217 リットル)である。

3. 主翼前縁タンクは 20 ミリ機関砲のすぐ外翼側にあり、合計容量は 35.4(134 リットル)ガロンである。

4. 噴射メタノールタンクは第一・第二防火壁の間にあり、容量は 42.2 ガロン(160.5 リットル)である。

5. プライムタンクは 1.3 ガロン(4.9 リットル)である。

上記タンクの全ては防漏被服を備えている。

87 ガロン(329 リットル)の容量を持つ投棄式主翼タンク2基を備える準備がなされている。

 燃料バルブ切り換えメカニズムおよび手動ポンプが安全および円滑な運用のために設けられている。エンジン始動および離陸は通常胴体中央タンクを用いて行われる。

 燃料分配を均等化するため、加圧機構が取り入れられている。この機構は高々度における安定した燃料供給と、熱帯におけるベーバーロックを防止するのが目的である。圧力源は真空ポンプの排気である。真空ポンプ排気はオイル・セパレータで清浄化され、定圧バルブによって適度な圧力(3.5 ポンド平方インチ、24.5Kg/m^2)に保たれる。定圧バルブとオイルフィルタはカウリング右側に装備され、圧力切り換えバルブは計器版の右端に備えられている。

 燃料タンクはすべて気密状態に保たれなければならない。

●スロットル及び他の動力系

 スロットルはコクピット左側に装備され、一般的な方法で操作される。

 混合比制御はスロットル板(throttle quadrant)に装備され、自動制御式である。

 過給器切り換え制御はパイロットの左側に備えられている。チェック時を除き、地上運転時には「二速」に入れておかなければならない。

 電気式のプロペラピッチ調節器は計器版に備えられている。


セクションII 操作手順

●コクピットに入る前に

 詳細なデータが得られるまで、この機体では通常の機動のみにとどめること。

 タキシング中の方向転換にはブレーキを用いる。前方視界が悪いので、必要に応じて尾輪を「自由回転」にセットしS字蛇行を行うこと。

 投棄式タンクを装備した場合は地面との間隙が少ないため、機体の動かし方には注意を払うこと。

 コクピットには左舷の手摺・足掛けを用いて登る。キャノピーの開閉は一般的なクランクによるものである。

●コクピットに入ってから

 トリムが正しい位置にあることを確認せよ。間違ったトリムで離陸するのは危険である。全備重量(gross weight)ごとのトリム位置は次に示す通りである。

7500 ポンドまたはそれ以下 トリム0度
8300 ポンド トリム2度下げ
8800 ポンド トリム4度下げ

 点火スイッチを確実にオフにせよ。

 着陸脚とフラップ状態を確認し、バイパスバルブを開く。

 操縦系と風防の状態を点検せよ。

 燃料切り換えバルブの作動を確認したあと、始動用のタンクを選択せよ(通常は中央タンクである)。

 安定した飛行のために翼内タンクは満載か、あるいは同量であるべきである。

 寒冷な気温でないかぎり、カウルフラップとオイルクーラー・シャッターを開く。

●エンジン始動

 スイッチを次の順序で投入せよ。

1. スイッチパネル
2. 電源供給
3. 計器
4. プロペラ
5. 始動

スロットルを 10% 前進させよ。
プロペラピッチレバーは「高」に入れよ。
自動混合比を「通常」に設定せよ。

過給器制御を一速から二速へスムーズに動かす。両者の動作を確認したら、制御を一速に戻しておくこと。

エマージェンシー・ストッピングを「フル・リッチ」に設定せよ。

ブースト・オーバーライドを「通常」に設定せよ。

エンジンをプライム(手動ポンプで加圧して燃料を送り込む)せよ。

1. 気温が 5 ℃未満でエンジンが冷えている場合、(地上作業員の)手でプロペラを回転させながら3ないし4回のプライムを行う。

2. 気温が 5 ℃以上の場合、プライムの代わりに加速ポンプを用いる。(地上作業員の)手でプロペラを回転させながら、スロットルを静かに開閉させること。

 地上作業員はプロペラを約 10 回転させる。エンジン先端部にまでオイルを行き渡らせる(*1)ため、作業員は約 400 回ポンプをついて事前潤滑(pre-oil)しなければならない。
*1 原文 To supply oil to the nose of the engine.

エンジンは手動イナーシャまたは始動車によって始動される。

1. 手動イナーシャによる方法

 地上作業員がイナーシャを回転させる。「コンタクト」の合図でクラッチを接続せよ。

 プロペラが半回転したところでスターターボタンを押し、点火スイッチを「両側」に入れ、始動を待つ。

 エンジンが始動したら、始動スイッチを切る。

2. 始動車による方法

 プロペラが数回転したところでスターターボタンを押すし、点火スイッチを「両側」に入れ、始動を待つ。

 あとの手順は上記と同じである。

 以下の注意を心に留めておくこと。

1. イナーシャを使ってエンジンを始動する場合、充分な回転(80〜100rpm)を与えること。回転が充分でなければエンジンは始動しない。

2. エンジン始動の秘訣は気化器にある。混合比制御が充分に開いていないか開き過ぎであれば、エンジンはバックファイヤを起こす。始動時のバックファイヤを防ぐためには、混合比制御をゆっくり開き手早く閉じるのが肝要である。

3. エンジンが始動したら、正常な燃焼状態を確認するため吸入圧計をチェックすること。もし指針が「0」の方向に動いてゆくなら、異常燃焼が起きている。指針が安定しているか「マイナス」の方向に動いてゆくなら燃焼状態は正常である。

●暖気運転と地上テスト

◆概要

1. 燃料、メタノール計、油圧計、およびその他の計器をチェックせよ。

2. プロペラピッチレバーを「低」にセットせよ。

3. スロットルをゆるやかに開き、暖気運転速度に合わせること。以下の運転過程を守ることにより、エンジン寿命を著しく伸ばすことができる。

500 - 600rpm 始動後約一分(必須)
800 - 1000rpm 約三分間
1200 - 1300rpm 内側油温が約 40 ℃に達するまで

◆過給器チェック

1. 過給器レバーを一速に入れよ。

2. メタノール圧力計をチェックせよ。

3. スロットルを +250mm(約 39Hg) にまで開く。吸入圧計と同時にエンジンの円滑な回転をチェックせよ。この手順は 30 秒以内に完了すること。

4. 特に必要な場合に限り、ブースト・オーバーライドレバーを押し込んでスロットルを開き、吸入圧を +400mm(約 46Hg)にまで上げよ。

5. 吸入圧 +125mm(約 35Hg)からメタノールが噴射が始まる。ミリタリー馬力(+250mm - +400mm)でのメタノール消費率は通常 150 リットル毎時である。吸入圧 +125mm 以上でメタノール噴射が行われなかった場合、シリンダーがオーバーヒートする。メタノールを使い切った後にも運転を続けるとメタノール・ポンプが焼きつくので注意が必要である。

◆点火システムのチェック

1. 回転系を 2000 - 2300rpm に合わせよ。

2. 吸入圧を -100mm - 0mm (約 26 - 30Hg) に合わせよ。

3. 通常の手順(左−両側−右−両側)でマグネトーをチェックせよ。回転低下は 30 - 40rpm 以下でなければならない。

 充分な暖気後、エンジンを加速せよ。

◆必要に応じて過給器の切り替え(*1)をテストせよ。
*1 原文 change-over.

注意事項:

1. 切り替えテスト時以外、地上運転で過給器を二速に入れてはならない。

2. 切り替えテストを繰り返すときは、約一分の間隔を開けること。

3. 切り替えテストを行うとき、過給器制御レバーは途中で止めたりせず、すみやかに一速または二速の位置に入れること。

4. 切り替えテストは回転数 2200rpm および 吸入圧 0mm(約 30Hg) 未満で行わなければならない。

5. 切り替えテストは油温 45 - 75 ℃の範囲内で、三秒以内に完了しなければならない。

◆プロペラのチェック

1. 高→低および低→高のプロペラピッチ変化をチェックせよ。

2. プロペラ制御を「恒速」に入れ、ピッチレバーでガバナーの動作を確認せよ。

◆油圧系のチェック

1. エンジン回転を 1200rpm またはそれ以上に上げよ。

2. バイパスバルブを閉じよ。

3. 翼フラップおよびカウルフラップの作動を確認せよ。

 下の表は地上テストおよび飛行中における、正常なエンジンおよび主要パーツが正常動作している場合の計器指針範囲を示したものである。

>
項目状態計器指針
油圧1500rpm 以上
二速への切り替え最高
標準
最低
12Kg/cm2 171lbs/in2
11Kg/cm2 156lbs/in2
10Kg/cm2 140lbs/in2
燃料圧最高
標準
最低
0.35Kg/cm2 5.0lbs/in2
0.30Kg/cm2 4.3lbs/in2
0.25Kg/cm2 3.5lbs/in2
メタノール圧最高
標準
最低
0.9Kg/cm2 12.8lbs/in2
0.8Kg/cm2 11.4lbs/in2
0.8Kg/cm2 11.4lbs/in2
油温(内側)許容最高
巡航最高(30 分)
許容最低
85℃
60℃〜70℃
40℃
筒温許容最高
巡航最高(30 分)
許容最低
230℃
2070℃
70℃
回転数および吸入圧 離昇および緊急
(一分)

ミリタリー
(30 分以内)

通常
(長時間運転)

巡航


許容最高

2900rpm
+400mm

2900rpm
+250mm

2600rpm
+100mm

1800〜2000rpm
-100〜-200mm

3200rpm
-200mm

注意事項:
1. 1400 - 1600rpm 付近では震動が発生する。

2. 高圧テストは可能な限り短時間で行わなければならない。

3. 地上テスト時筒温は 200℃未満に保たなければならない。

4. 地上テスト時は後列シリンダーが前列よりも高温となる。

●タキシング

離陸時の操縦を容易にしタキシング時の誤操作を防ぐため、パイロットは次のチェックおよび調整を行うこと。

1. カウルフラップおよびオイルクーラーシャッターを指定状態に設定せよ(通常は「全開」)。

2. 無線機をチェックせよ。

3. 酸素供給系およびマスクを点検せよ。

4. エレベータートリム・タブを指定状態に設定せよ。

5. 尾輪を「自由」に設定せよ。

6. 必要であれば防塵フィルターを使用せよ。

タキシング開始前にブレーキの作動をチェックすること。

●離陸

機体を離陸方向に向けたあと、以下の手順を行うこと。

1. カウルフラップを指定状態に設定せよ(通常は「全開」、冬期は「半開」)。

2. プロペラピッチを 2900rpm に設定せよ。

3. 尾輪を固定せよ。

4. 必要であれば、ブーストオーバーライドを引くこと。

5. 必要であれば、フラップを 15 度に下ろすこと。

 スロットルをなだらかに +250mm、または必要であれば 400mm に開く。

 警告:この操作を急激に行ってはならない。

しばらく経ったあと、、尾部をゆるやかに持ち上げよ。

エンジントルクを相殺するため、充分な右ラダーを踏み込むこと。

速度が 150Km/h(93mph) に達したなら、ゆるやかに操縦桿を引いて離陸させよ。

離陸後は急激に機首を持ち上げず、速度が 250Km/h(155mph) になるまでは機首を押さえること。

脚を引き込めよ。この操作はブレーキで主輪の回転を止めてから行わなければならない。さもなければ、自由回転するタイヤが収納庫に擦れて焼損する恐れがある。

脚の引き込みは 250Km/h(155mph) 未満では行わないこと(*1)。さもなくば機体はかなりの高度を失うことになる。
*1 原文 Avoid retracting the landing gear at less than 250km/h as the plane will lose considerable altitude.

低回転による長時間の暖機運転後、またはタキシングに時間がかかったあとの離陸では、一度スロットルを全開にすることが薦められる。これによってプラグに付着したオイルが吹き飛ばされ、燃料流量が増し、燃料系に混入した気泡を抹消する効果が得られる。

プロペラ制御機構が貧弱なため、過回転がしばしば発生する。離陸後は回転計に注意を払うこと。

●離陸時のエンジン停止

機体速度が低ければ、スロットルを閉じてブレーキをかけよ。

機体が既に浮いているが滑走路の上であれば、脚を引き込めて胴体着地せよ。

●上昇

全力上昇時は次の点に注意すること:

1. 自動混合気制御を「自動」に設定せよ。

2. 吸入圧がミリタリーパワーに達するまでスロットルを開くこと。

3. 筒温が 230℃を超えないようカウルフラップを調整すること。通常は「全開」の状態に設定される。

4. 高度 5000m(16400ft) までの上昇速度は 260Km/h(163mph) である。それ以降は 1000m ごとに 10Km/h(6mph) を減じること。この結果 9000m(29500ft)での上昇速度は 220Km/h(137mph)となる。上昇速度は筒温および油温に多大な影響を与える。オーバーヒートを防ぐため、充分な上昇速度を保ち続けることは重要である。

5. 連続した上昇時にブーストオーバーライドを使用してはならない。

6. エマージェンシーストップを「全閉」に設定せよ。上昇中に多すぎる燃料が供給されるとエンジンが震動を起こす。これが起きた場合はレバーを調節せよ。

7. 吸入圧が 80mm に達した高度(通常約 3500m, 11500ft)で過給器を切り替えよ。この時回転数は 2600rpm 付近にまで落ちるはずである。

8. この機体の燃料消費量はミリタリーパワーにおいて 500 - 550 リットル毎時(132 - 145 ガロン毎時)である。

通常の上昇では次の手順が推奨される。

1. フルパワーによる上昇が必要でない場合、吸入圧 +100mm(34Hg) および 2600rpm で上昇することが推奨される。

2. 通常の操作において、一速から二速への過給器切り替えは次の通り:

a. 切り替え高度は 13000ft(約 4000m) で吸入圧約 31Hg である。

b. スロットルを約 60% に閉じよ。

c. 過給器を一速から二速へ切り替えよ。

d. 吸入圧を再調節せよ。

3. 通常の上昇設定は次の通り。

高度(ft)
高度(m)
3280
1000
6567
2000
9842
3000
12123
4000
16404
5000
19685
6000
22966
7000
26246
8000
29527
9000
32808
10000
回転数
(rpm)
2600260026002600260026002600260026002600
吸入圧 34343431343431343742
対気速度
(mph)
162162162162162152149140130124
排気温 720710740750690690680660630560
筒温1
筒温2
210
130
160
140
160
130
170
130
170
130
180
135
180
125
170
120
160
115
145
100
外側油温
中側油温
52
82
58
85
60
88
62
90
65
90
67
92
70
98
70
95
71
95
72
96
油圧 11110710510110110098978285
燃料圧 5.14.84.54.54.34.14.14.14.14.5
過給圧(*1) 21.021.021.021.011.011.011.011.011.011.0
*1 原文 High-blower pressure

●特殊飛行

 この機体は容易に特殊飛行を行うことができる。欠陥に由来する運動制限はない。

 しかしながら、急旋回を伴う機動は避けること。スナップロールやスピンは胴体に損傷を与える恐れがある。

 背面飛行を行わないこと。背面飛行は油圧をゼロにまで低下させる。

 急降下から高速で引き起こすとき、荷重は4G未満でなければならない。

 特殊飛行を行うときは十分な高度と速度を確保しておくことが必要である。機体の癖は常に念頭に置いておくこと。

 エンジンの磨耗を避けるため、飛行練習は 2600rpm にて行うこと。

 垂直降下を除き、エレベータートリムは巡航状態に留めておくこと。


 スピン特性は良好であり、この機体が回復不可能なスピンに入ることはない。機体がスピンに入った場合は、全ての舵面を中立位置に戻すこと。

 ループ機動の初速は 250mph である。

 インメルマン機動の初速は約 250mph である。インメルマンによって得られる高度は約 2500ft である。

 シャンデル機動は角度 80 度(*1)、初速 220mph の上昇から開始する。吸入圧 +100mm(34Hg までスロットルを開くこと。速度が 90 - 100mph に落ちてきたら、通常の手順で機動を完了する。
原文 Execute teh Chandelle by climbing at an initial speed of approximately 220mph and at tn angne of 80.

注意:シャンデルの初動は荷重が 3G を超えないようゆるやかに始めなければならない。

 スプリットS機動はまずピッチレバーを 2600rpm に設定する。水平飛行速度は約 170mph。通常の手順で半スナップロールまたは半スローロールでスプリットSに入れる。機動によって失われる高度は約 3000ft である。水平飛行に戻ったとき、速度は約 250mph となる。

 スローロールは 2600 回転 200mph において行う。手順は通常通りである。

 急旋回は回転数 2600 - 2900mph、吸入圧 35 - 40Hg、初速約 250mph で行う。トルクの影響により左旋回では機首下げになる傾向がある。右旋回では機首上げになる。

 急降下を行う場合、タブを回しすぎてはならない。操縦桿が重くなっても、極端な場合でない限りタブを 50 度以上に下げてはならない。急降下を行うにはまず高度を充分に取り、最高速度制限(464mph) に達するまで徐々に速度を上げる。

 典型的な急降下の手順は次の通りである。

1. 高度 16500ft、2900rpm、吸入圧 26Hg、速度 220mph でハーフロールを打ち機首を下に向ける。

2. 急降下中は吸入圧 40Hg に達するまでスロットルを開く。

3. 急降下からの引き起こしは高度約 4300ft で行う。

4. 注意事項

a. 許容最高回転数を超えないこと(3200rpm, 20Hg で 30 秒間、さもなくば 2900rpm)。

b. 引き起こし時にはスロットルを半分まで閉じること。

c. 急降下を行う予定がある場合、コクピットに入った時点でエレベータートリムの位置を確認すること。

d. 降下中に機体が震動を始めたら、スロットルを閉じてゆっくり開きなおすこと。

e. 垂直降下の場合は速度増加と高度減少が著しいので、特別な注意が必要である。

●巡航

 以下に示す表は同型機の一機によって得られた性能値である。

高度(ft)
高度(m)
3280
1000
3280
1000
9842
3000
9842
3000
13123
4000
13123
4000
22966
7000
22966
7000
rpm 19002000 19002000 19002000 19002000
吸入圧(Hg) 24
26
24
26
24
26
24
26
24
26
24
26
22
24
22
24
燃料消費
(ガロン毎時)
35
39
38
41
36.5
40
40.3
44.3
38.5
42
46.3
46
38
41.5
42.3
46
計器速度(mph) 210-198
216-205
215-207
223-215
211-200
217-206
218-207
223-216
211-202
217-205
218-208
222-215
185-173
192-180
196-182
204-189
真速度(mph) 221-208
229-215
227-217
234-228
246-232
253-240
254-240
260-252
258-248
266-252
268-254
272-264
266-247
278-259
284-261
295-272
航続距離(マイル) 1050
970
1010
952
1042
1000
1005
942
1060
990
980
922
993
950
935
895
航続時間 4時間51分
4時間24分
4時間33分
4時間8分
4時間28分
4時間4分
4時間4分
3時間24分
4時間10分
3時間48分
3時間45分
3時間27分
3時間52分
3時間32分
3時間26分
3時間11分
特記事項 過給一速過給一速 過給一速過給一速 過給一速過給一速 過給二速過給二速


●着陸に関する記述はページ欠落


●エンジンの停止

 エンジンの停止手順は次の通りである。

1. 筒温が 130 ℃になるまでエンジンを冷ます。筒温 130 ℃以上でエンジンを切ってはならない。

2. スロットルを閉じ、エマージェンシー・ストップ・レバーを最低位置にまで下げてエンジンを止める。

3. エンジンが停止し混合気が全て燃焼したなら、点火スイッチと電源を切る。

4. エンジンが停止したあとカウルフラップは全開にしておく。特別な場合を除いて、燃料バルブを閉じてエンジンを止めてはならない。

5. 次の飛行または緊急任務に備えるため、エンジン停止後は次の手順を行うこと。

a. ピッチレバーを最高に設定せよ。

b. エマージェンシー・ストップ・レバーを「フル・リッチ」に設定せよ。

c. バイパスバルブを閉じよ。

d. 燃料バルブを全タンクに設定せよ。

e. トリムが0になっていることを確認せよ。


セクションIII 飛行データ


飛行制限一覧

項目降下加速フラップ15度フラップ30度着陸脚収納着陸脚展開機動エンジン回転
制限431mph 未満5G 未満168mph 未満155mph 未満155mph 未満155mph 未満急旋回(スナップロールおよびスピンなど)、背面飛行は禁止22Hg 未満, 3200rpm で 30 秒


セクションIV 緊急手順


●着陸復行手順

 着陸復行を行う場合、操縦者は十分な高度があるうちに決断を下さなければならない。着陸復行が決まったら次の手順に従うこと。

1. スロットルを大きく開く。

2. 必要であれば着陸脚を収納する。

3. トリムを0度に設定する。

4. 高度 650ft 以上、速度 145mph 以上でフラップを収納する。

●油圧損失

 エンジンまたはエンジン駆動油圧ポンプの故障により油圧を失った場合、手動ポンプを使うことで油圧を維持できる。手動ポンプは往復式である。

 油圧を失った場合でも、着陸脚は次の手順により引き出すことができる。

1. 主脚はセレクターを「下げ」位置に設定し、機体を激しく揺さぶることで自重を利用し引き出すことができる。

2. 尾輪には強制引き出しスプリングが装備されている。セレクターを「下げ」位置に設定することでロックが外れ、スプリングの力で尾輪を出すことができる。

●火災

 風防には緊急リリースが装備されていない。テストした機体302号機のコクピットには消火器が装備されていたが、これは標準装備ではない。

●脱出

 推奨される脱出手順は次の通りである。

1. 速度を 135mph に落とす。

2. キャノピーを開く。

3. 機体を背面に入れる。

4. 脱出する。


セクションV 装備品


●無線装置

 標準 AAF 無線機が装備されている。

●爆撃

 この機体は急降下爆撃に適している。以下に急降下爆撃の手順を示す。

1. 高度約 5000ft, 速度 130mph で降下を開始し、降下角は 55 度に設定する。

2. 機銃の照準器を使用し、目標を 300Km リングに捕らえる。

3. 速度約 360mph、高度約 2000ft に達したら爆弾を投下する。

4. 爆弾を離したら速やかに引き起こすこと。引き起こしで失う高度は約 1000ft である。

 スロットルには電気式の爆弾投下ボタンが、また操縦席左側の床には手動式の投下レバーが装備されている。

●射撃

 照準器は AAF-N3S と同様のタイプで、150〜300Km の Sic リングを備えている。照準時には安定が重要事項である。

 主翼銃が片側だけジャムした場合、射撃を続けることは不可能となる。

 基本的な射撃の手順はほとんどの戦闘機と同じである。

 胴体銃は操縦桿の用心鉄の下の赤いボタンで発射される。主翼銃は用心鉄が操縦桿後方へと動かされたとき、発射ボタンが押されるようになっている。
 主計器板の中央下部に二本の装填ハンドルが装備されている。左側のハンドルは主翼銃を装填し、右側は胴体の同調銃を装填する。

●酸素装備

 AAF の低圧デマンド型酸素供給装置が備えられている。

●武装および装甲

 操縦席後部には 13mm 厚の装甲板が備えられている。この装甲はパイロットの頭部から腰のあたりまでを保護する。

 遮風板後部には 65mm 厚の防弾ガラスを備える準備がされている(テストされたフランクI型 T2-302 号機には装備されていない)。

 二挺の 12.7mm 固定銃はエンジン同調式で、操縦席前方左右に備えられている。各銃あたり約 350 発の弾薬が搭載可能である。

 二挺の 20mm 機銃は左右主翼の主脚外側に装備され、自由発射である。各銃あたり約 150 発の弾薬が搭載可能である。

 全ての機銃は油圧装填、電気発射式である。


原語−訳語対応
Manifold Pressure吸入圧
Blower過給器
Low speed一速
High speed二速
Change-Over切り替え
Exhaust Temp排気温
Cylinder Temp筒温
Oil Temp油温
Oil Temp Inlet内側油温
Oil Temp Outlet外側油温
Oil Pressure油圧
Fuel Pressure燃料圧