蒼空の果てに

      宇都宮氏の質問に対する回答。 (15−10−12)

 最後に質問です。あるHPに次のようなことが書いてありました。
“(前略)これら特攻出撃部隊の少なからぬ人が、敵艦船に突入寸前、「帝国海軍の馬鹿
野郎」とか「帝国海軍を永久に呪う」などの電文を打って死んでいったといいます。これ
が華々しかったはずの、あの特攻隊の真の姿でもあると言われます。”
こんなことは本で見たこともありませんし、聞いたことも無いので嘘だと思っています。
蒼空様はこの様な話を聞いたことがありますでしょうか。

 これは当時の通信機の搭載状況や、特攻隊員の心情を知らない方の創作だと思います。
下記を参考にしてください。

★HP「自衛隊こぼれ話」の「老兵の繰り言」の抜粋です。
 
☆われわれの子供の頃は「恥」や「世間体」がしつけの基本だったように思う。子供が悪
い事をすれば親の恥であった。「世間に顔向けができない」が親が子供を諭す言葉であり、
「そんなことをして、恥ずかしくないのか!」などが先生が生徒を叱る常套語であった。

 また軍隊では、いくら厳しい制裁を受けても我慢する以外になかった。逃亡すれば本人
はもとより、 親や親族までが嘲笑の的にされる時代であった。ところが、昨今では「恥」
という言葉は死語になったも同然である。☆ 

★映画「月光の夏」のシナリオからの抜粋です。

北条圭一郎中尉と村上伍長の会話。
☆
北条「お前に頼みがある」「お前は、あす、雁ノ巣飛行場で一式戦闘機一機を受領し、
  知覧へ飛び、特攻出撃する。間違いないか」
村上「はい。本日命令をいただきました」
北条「おれの頼みを聞いてくれ!」
村上「はっ?」
北条「おれは、悪天候で、やむなく部下たちを連れて引き返した。むだ死にさせないため
  だ。いのちは惜しまぬ。だが、むだにはしたくない。的確に敵空母を狙うために出直
  すつもりだった」
村上「(うなずく)」
北条「矢ヶ島参謀は、おれがいのち惜しさに引き返したと、頭から疑ってかかつた。
  やつは、特攻で出ていった者を侮辱している。特攻の精神をも冒涜するものだ!
  机の上で作戦を立てて、指図だけしているやつになにがわかる。ここにいるみんな、
  腹の中で怒っている。悔し涙を飲んでいる。お前もわかるなっ」
村上「はい」
北条「おれは、矢ヶ島参謀を許さん。・・・・殺したい」 「おれは、やつにニラまれ、
  どこへも行かせてもらえない。生殺しにあっている」
村上「・・・・」
北条「軍刀でも拳銃でもいい、あればおれの手でやる。刺し違えてやる。お前に頼みはし
  ない」  「村上。あす、雁ノ巣を離陸したら、司令部の矢ヶ島参謀の部屋めがけて
  突く込んでくれ」   「頼む!」
村上「中尉殿・・・・」 「勘弁してください・・・・、中尉殿。私には、とても、でき
  ません・・・・」
北条「そうだろうなぁ、頼んだおれが悪い。お前にも、残される親御さんがいるんだ」
村上「中尉殿のお気持ちは、私にもわかります。ですが・・・・」
北条「もうよい。すまなかった。忘れてくれ」
村上「すみません・・・・。私は、こんどは必ず、必ず、敵艦に体当たりいたします」☆


★参考HP。「最後の親孝行」「特攻隊員の心情」
最後の親孝行
「白菊特攻隊」出陣・「白菊特攻隊」戦死者名簿・特攻隊員の心情

当時の軍人は単なる個人的な存在でなく、一家一族の代表であり郷土の代表として戦場に
臨みました。だから、卑怯未練な振舞いで「恥」を晒すことは、一族一門の「恥」であり、
郷土の「恥」と心得てわが身を律していました。
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