指揮官たちの特攻 2001-8 新潮社
135頁抜粋
名簿を細かく見ていて気づいたのは、ここでも下士官の中に、当時の私と同年の十七歳
が八人、さらに一歳年少の十六歳が三人も居たことである。
年齢といい、甲種飛行予科練習生十三期という年次からいっても、操縦技術が身につく
までには至っていない。
まして、水上機の操縦は前述のようにかなり難しく、水上機乗りはたいていの陸上機を
乗りこなせるが、その逆は不可能とされている。
とすれば、この少年兵たちは後席へ偵察員として乗ったわけだが、電信機も機銃も下ろ
してしまっているので、役割としては、ただ目をみはって、敵機や敵艦を探すということ。
これなら少年でもできるのだが、仮に敵機を見つけても、敵艦を探し当てて突入するに
しても何もすることがない。
ただただ眼を見開き続けて、死に向かうのみ。どんな思いの三、四時間であったことか。
★これでは英霊やご遺族は浮ばれません!
興味本意の創作でなく、水上機による「特攻隊」の真の姿を後世に残してください!
予科練甲飛十三期生の「水上機」による特攻戦死者は、操縦員10名、偵察員4名です。
天草空(操4名)福山空(操1名・偵1名)宅間空(操5名・偵2名)北浦空(偵1名)。
彼らは正規の飛行術練習生を卒業して、一人前の搭乗員として「特攻隊」に編入されたの
です。 特攻戦死者名簿(水上機)参照。
飛行術練習生の訓練期間は、操縦員は中間練習機教程が陸上機水上機とも4ヶ月。次に、
実用機教程は機種によって異なります。我々のクラスの例では、最長の戦闘機が6ヶ月。
艦爆・艦攻・中攻が5ヶ月。これに対し水上機は2ヶ月でした。また、偵察員は6ヶ月で
飛行術練習生を卒業します。
水上機の実用機教程の訓練期間が短いのは、水上偵察機要員としての訓練が主体だから
です。陸上機のように、急降下爆撃や雷撃それに戦闘機の空戦技術のような、機種に応じ
た高度の技術を必要とする訓練がありません。(二座水偵の場合は一部空戦訓練あり)
甲飛十三期の水上機組は、20年2月までに卒業して実施部隊へ出ています。陸上機組
は、中練が終わる時期に燃料不足等の理由で訓練が中止され、卒業していません。また、
偵察員は前期(飛練38期)が卒業して実施部隊で勤務していました。
☆「水上機乗りはたいていの陸上機を乗りこなせるが・・・」
★本当にそうでしょうか? 離陸着陸は水上機に比べ習得し易いかも知れません。しかし、
急降下爆撃や雷撃それに戦闘機の空戦技術など、それぞれの機種に対応した技能は、一朝
一夕に練達できるものではないと思います。