♪故郷♪

蒼空の果てに


遺詠 故郷の母


 奥中渉君は大分県下毛郡今津町の出身。県立中津中学より甲種飛行予科練習生として、
昭和十八年八月、鹿児島航空隊に入隊。飛行術練習生は大井航空隊で偵察専修である。
実施部隊は八○一空偵察七○三飛行隊に所属した。
一式陸攻
 昭和二十年四月二十一日、一式陸攻に電探員として搭乗し鹿屋基地を発進。索敵実施 中敵夜間戦闘機と交戦戦死。享年十七歳。

国の為 志願し吾も人なれば  故郷思えば心淋しき

兄鷲の 手柄聞くたび思うかな 早く征きたし決戦の空

あこがれの 七つ釦に身をかため 思ひ浮かぶは故郷の母

この次は 半年ぶりの今津駅 おどる心はも早や吾が家へ

茶畑の 続く彼方に富士の峰 故郷の母に見せたくぞある

大君に 捧げまつらん吾が命 嵐に向かう若桜花

かくあれと 諭す桜の押花を 文にしたため送りし吾が母

二つなき 命を忠と孝に分け いでや巣立たん南海の空

大空に 冴ゆる月夜は変わらねど 変われば変わる人の身の上

青空を 翔けて飛び行く索敵行 富士の姿は下に見えけり

くるしみに たえし後こそ桜花 色も香もあり人に賞でらむ
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