蒼空の果てに
伊 東 宣 夫 君 鎮魂歌 伊東宣夫君鎮魂歌歌詞。 伊東宣夫君鎮魂歌歌碑。 鎮魂歌(筑前琵琶歌) 筑前琵琶大師範、熊手旭宸氏(福岡県小郡市在住)は、若くして散華された特攻隊員に 対して深い関心を寄せられ、 「知覧挽歌」や「第二国分基地特攻鎮魂歌」など作曲されて いる。この鎮魂歌は故伊東宣夫君のご遺族から依頼されて、作詞作曲されたものである。 ♪鎮魂歌♪ あゝ海軍特別攻撃隊伊東宣夫鎮魂歌 “逝く春に 逢はで散り行く 若桜 御国の為ぞ 心は楽し” 十三塚原慰霊碑に 春は廻りて 咲き競う 花は宣夫が 今ここに 生まれ変りし 姿かと 在りしその日の 面影を 千本桜に 偲ぶなり 三千とせの 歴史守りて捨つる身の 命は軽し いざ行きて 祖国の幸を 守らんと 伊東宣夫が 雄々しくも 轟音残して飛び立ちし 特攻 第二国分基地 時しも 昭和二十年 弥生の嵐 吹き荒れて ますます募る 危機感に 特攻戦略 拡大し 凄絶苛酷の運命は 佐伯に生まれて 十有七春秋かけて 文学を誇る君にも 襲い来る 四月二十八日 夕まぐれ 一機 続いてまた一機 滑走すませ 南海へ 我身を捨てゝ 敵艦に 突入めざす 死の飛行 沖縄上空に着きければ 敵の包囲と要撃の 激しきさ中くぐり抜け 甲板めがけて 迫りゆく その攻撃のすさまじさ 交戦奮激やゝしばし やがて「ワレトツニユス、テンノウヘイカバンザイ」 一電文を最後とし 見事 敵艦に体当たり 悲壮の戦死を 遂げたりけり “死生命あり論ずるに足らず 鞠躬 唯応に至尊に酬ゆべし 奮躍難に赴いて死を辞せず 慷慨義に就く 日本魂” あゝなつかしい わたしたちの宣夫よ 思えばあなたとの 親子最後の 別れの日 あの茨城へ旅立ちの 凍てつく夜中の門司駅の プラットホームで 凛々しくも 「行きます」の たゞひとこと 見えなくなるまで あなたが振った 白い手袋よ あなたの乗った その名も 九九艦爆の 座席一面を 埋めていた 遅咲きの桜の花よ そして胸のポケットには 母の写真がしっかりと 抱かれていたという 御国の為に喜んで 名誉の極みと云いながら きついつらさのこの思い 思えば猛き子も親も いつか血を吐く不如帰 されど尊き心根は みごと報われ 幾星霜 天晴れ若き勇士らが 護りし国は 永久に 平和と共に 栄えゆく この世の春を 君知るや あゝ 思いは深し十三塚 み霊よ永遠に安かれと 香華も絶えぬ慰霊碑に 詣でる毎の 春秋に 涙ながらに 口ずさむ 君に手向けの 鎮魂歌 “そよ風に舞う 桜の花びらに かっての君の笑顔がある 黄菊白菊かおる 秋の日差しに あなたの囁きがきこえる” 護国に殉じ昇進し 海軍少尉と祀られし いとしき宣夫のその最後 語り伝えてわが家に 行末長く残すなり 琵琶の調べに歌うなり (完) 第二国分基地特攻鎮魂歌(白雲にのりて) 岩元喜吉 作詞 熊手旭宸 作曲 白雲にのりて 君かえりませ 靖国の 宮にみたまは鎮まるも おりおり帰れ母の夢路に (大江少佐ご母堂の詠歌) 祖国の安泰を念じて 雄々しくも 護国の花と散華せし 父よ母よ恋しの人よ そして弟よ 蒼く冷たい南溟の 波の果てより よみがえり 南風のかゞやく白雲に 君 乗り給ひ ふるさとの 吾がふところに還りませ 今日よりは 詔とうとみ海原を 鎮めまつらん つはもの吾は (吉田隊員辞世) 大東亜共栄圈の夢やぶれ ミッドウエー沖の海戦に 大敗喫せし わが軍は ガダルカナルを撤退し 制空権を失いて 沖縄本土の決戦と 戦局まさに嵐よび 祖国の危急累卵の はた危きに瀕したり 御国の興亡 この一挙 上 自らも のたまへば 一億こぞり この時と 生も死もなし 国難に この身ひとつを 捧げんと 花も二十の 若桜 一機能く 一艦を屠るべし まなじり上げて 決然と 爆装重き 二百五十瓩 愛機に抱き 天翔けり 肉弾もろとも 敵艦に 砕け散りたる 雄々しさよ 征くこゝろ 撃滅の二字にたぎるなり 軽きいのちの 重きつとめぞ (宮内隊員辞世) 身を清め 心しずめて 明日は散る 南溟の空の 塵となり 海の藻屑と 果つるとも 今は悔なき 生命なり 吾を育てし ふるさとの 父母同胞の在します 祖国の栄え 祈りつゝ 十有余年 君国に 報ずる道は 唯一つ 一撃 必殺の 体当たり 「今夜は満月だ、沖縄の沖合高く月見して 敵を物色 おもむろに突込む 勇敢に 然も慎重に死んでみせる」(大塚隊員遺書) と豪語せし君 すでになし 「吾れ攻撃に成功 今より体当たりす」 (町田隊員電文) の電文を一期とし 轟音と共に 通信途絶えたり 国の楯と 散りし君らの血潮とも 特攻碑めぐり つつじは炎ゆる (鶴丸りつ詠歌) そよ風に舞う さくらの花びらに かっての君の笑顔がある 黄菊 白菊かおる 秋の日ざしに あなたの囁きが きこえる いま ふるさとは 繁栄と平和に せいせいと息づいている 然しそのかげに 赤い血潮を 民族の危急に 捧げて散った うら若い空の勇者 あなた方のあることを 私たちは忘れない 母国に打返す 波のように 今日もまた 白南風にのって なつかしい ふるさとへ 君かへりませ みたまよ 安らかに やすらかに (完) 本文へ戻る 次頁へ [AOZORANOHATENI]
伊 東 宣 夫 君 鎮魂歌
伊東宣夫君鎮魂歌歌碑。
鎮魂歌(筑前琵琶歌) 筑前琵琶大師範、熊手旭宸氏(福岡県小郡市在住)は、若くして散華された特攻隊員に 対して深い関心を寄せられ、 「知覧挽歌」や「第二国分基地特攻鎮魂歌」など作曲されて いる。この鎮魂歌は故伊東宣夫君のご遺族から依頼されて、作詞作曲されたものである。 ♪鎮魂歌♪ あゝ海軍特別攻撃隊伊東宣夫鎮魂歌 “逝く春に 逢はで散り行く 若桜 御国の為ぞ 心は楽し” 十三塚原慰霊碑に 春は廻りて 咲き競う 花は宣夫が 今ここに 生まれ変りし 姿かと 在りしその日の 面影を 千本桜に 偲ぶなり 三千とせの 歴史守りて捨つる身の 命は軽し いざ行きて 祖国の幸を 守らんと 伊東宣夫が 雄々しくも 轟音残して飛び立ちし 特攻 第二国分基地 時しも 昭和二十年 弥生の嵐 吹き荒れて ますます募る 危機感に 特攻戦略 拡大し 凄絶苛酷の運命は 佐伯に生まれて 十有七春秋かけて 文学を誇る君にも 襲い来る 四月二十八日 夕まぐれ 一機 続いてまた一機 滑走すませ 南海へ 我身を捨てゝ 敵艦に 突入めざす 死の飛行 沖縄上空に着きければ 敵の包囲と要撃の 激しきさ中くぐり抜け 甲板めがけて 迫りゆく その攻撃のすさまじさ 交戦奮激やゝしばし やがて「ワレトツニユス、テンノウヘイカバンザイ」 一電文を最後とし 見事 敵艦に体当たり 悲壮の戦死を 遂げたりけり “死生命あり論ずるに足らず 鞠躬 唯応に至尊に酬ゆべし 奮躍難に赴いて死を辞せず 慷慨義に就く 日本魂” あゝなつかしい わたしたちの宣夫よ 思えばあなたとの 親子最後の 別れの日 あの茨城へ旅立ちの 凍てつく夜中の門司駅の プラットホームで 凛々しくも 「行きます」の たゞひとこと 見えなくなるまで あなたが振った 白い手袋よ あなたの乗った その名も 九九艦爆の 座席一面を 埋めていた 遅咲きの桜の花よ そして胸のポケットには 母の写真がしっかりと 抱かれていたという 御国の為に喜んで 名誉の極みと云いながら きついつらさのこの思い 思えば猛き子も親も いつか血を吐く不如帰 されど尊き心根は みごと報われ 幾星霜 天晴れ若き勇士らが 護りし国は 永久に 平和と共に 栄えゆく この世の春を 君知るや あゝ 思いは深し十三塚 み霊よ永遠に安かれと 香華も絶えぬ慰霊碑に 詣でる毎の 春秋に 涙ながらに 口ずさむ 君に手向けの 鎮魂歌 “そよ風に舞う 桜の花びらに かっての君の笑顔がある 黄菊白菊かおる 秋の日差しに あなたの囁きがきこえる” 護国に殉じ昇進し 海軍少尉と祀られし いとしき宣夫のその最後 語り伝えてわが家に 行末長く残すなり 琵琶の調べに歌うなり (完) 第二国分基地特攻鎮魂歌(白雲にのりて) 岩元喜吉 作詞 熊手旭宸 作曲 白雲にのりて 君かえりませ 靖国の 宮にみたまは鎮まるも おりおり帰れ母の夢路に (大江少佐ご母堂の詠歌) 祖国の安泰を念じて 雄々しくも 護国の花と散華せし 父よ母よ恋しの人よ そして弟よ 蒼く冷たい南溟の 波の果てより よみがえり 南風のかゞやく白雲に 君 乗り給ひ ふるさとの 吾がふところに還りませ 今日よりは 詔とうとみ海原を 鎮めまつらん つはもの吾は (吉田隊員辞世) 大東亜共栄圈の夢やぶれ ミッドウエー沖の海戦に 大敗喫せし わが軍は ガダルカナルを撤退し 制空権を失いて 沖縄本土の決戦と 戦局まさに嵐よび 祖国の危急累卵の はた危きに瀕したり 御国の興亡 この一挙 上 自らも のたまへば 一億こぞり この時と 生も死もなし 国難に この身ひとつを 捧げんと 花も二十の 若桜 一機能く 一艦を屠るべし まなじり上げて 決然と 爆装重き 二百五十瓩 愛機に抱き 天翔けり 肉弾もろとも 敵艦に 砕け散りたる 雄々しさよ 征くこゝろ 撃滅の二字にたぎるなり 軽きいのちの 重きつとめぞ (宮内隊員辞世) 身を清め 心しずめて 明日は散る 南溟の空の 塵となり 海の藻屑と 果つるとも 今は悔なき 生命なり 吾を育てし ふるさとの 父母同胞の在します 祖国の栄え 祈りつゝ 十有余年 君国に 報ずる道は 唯一つ 一撃 必殺の 体当たり 「今夜は満月だ、沖縄の沖合高く月見して 敵を物色 おもむろに突込む 勇敢に 然も慎重に死んでみせる」(大塚隊員遺書) と豪語せし君 すでになし 「吾れ攻撃に成功 今より体当たりす」 (町田隊員電文) の電文を一期とし 轟音と共に 通信途絶えたり 国の楯と 散りし君らの血潮とも 特攻碑めぐり つつじは炎ゆる (鶴丸りつ詠歌) そよ風に舞う さくらの花びらに かっての君の笑顔がある 黄菊 白菊かおる 秋の日ざしに あなたの囁きが きこえる いま ふるさとは 繁栄と平和に せいせいと息づいている 然しそのかげに 赤い血潮を 民族の危急に 捧げて散った うら若い空の勇者 あなた方のあることを 私たちは忘れない 母国に打返す 波のように 今日もまた 白南風にのって なつかしい ふるさとへ 君かへりませ みたまよ 安らかに やすらかに (完)
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