タングステンと大日本帝国No.1

2001.11.05 

 12月はクリスマスを迎え、さぞかし日本の戦車で盛り上がることでしょう。
 そこでいずれは絶対に避けて通る事は出来ない対戦車砲弾の材料タングステンと大日本帝国の関係など書いてみたいとおもいます。なお日本におけるタングステン・カーバイト製の対戦車砲弾についてはいづれ「大家さん」「日本一の大砲の権威様」がきっと必ず書いてくれるでしょう。
 戦前、戦時中の日本のタングステンについて調べてみようなどと思うのは、よほどの物好きしかいません。書こうと決めたのはいいのですが、これがなかなか厄介な物で

  1. 「概説」
  2. 「日本本土」
  3. 「朝鮮半島と中国」
  4. 「南方」
 の4回に分けて発表していきます。
 大戦中、ドイツのキワモノ対戦車砲、ゲルリッヒ理論に基づく、2.8cm sPzB 41、4.2cm lePak 41、7.5cm Pak 41の砲弾、とノーマルな対戦車砲に使われたタングステン鋼芯弾Pzr40にはタングステンが使用されていました。大戦勃発後、対ソ戦が始まりシベリア鉄道が封鎖されると、入手が難しくなりより重要性の高い工具鋼に使用が優先され、タングステン製対戦車砲弾は生産されなくなります。

 戦前、ドイツはアメリカと共に大量のタングステンを輸入していました。ドイツは、まったくタングステンが取れない訳ではなさそうなのですが、必要量には全然足りませんでした。
 ところで、そもそもタングステンとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

 金属中3400℃という最高の融点を持ち、比重も19.2となかなか重いものです。主要鉱石は鉄マンガン重石(ウォルウラム鉄鉱)と灰重石であり、精錬は精鉱を処理し酸化物を作りこれを水素還元してタングステン粉末とします。最初の使用は皆さんよくご存知の白熱電球のタングステンフィラメントからでした。

 重要語説明(本当は私も理解していないが避けて通れない)

  1. フェロタングステン

      タングステン鉄合金で特殊磁性材料や高速度鋼製造に用いられる。電気炉中で鉄と共に炭素を混ぜて酸化物を還元して作られる。タングステン元素を多量に含有し、溶鋼中に元素を添加するのに用いられる。

  2. タングステンカーバイト

      タングステンと鉄とを炭素と直接結合させて炭化物とした物。極めて硬いが脆いので塊状として燒結して諸種の工具に用いる。コバルト粉末はバインダーとして広く用いられ、これをタングステン炭化物に混ぜて1,500℃前後で燒結する。
     コバルトの量は3〜20%で、高含有の物は耐衝撃性の大きい工具に用いられる。
     他のバインダーとしてはニッケルが主として用いられる。
 2点がなんとな〜く分かれば、これからの話にはついていけます。
 タングステンカーバイトは超硬工具材料として1926年ドイツのクルップ社で開発したウィディア(Widia)以来よく用いられています。また、先に述べたドイツの対戦車砲弾もこれです。


 引用・参考文献
「THE ILLUSTRATED ENCYCLOPEDIA OF AMMUNITION」
Ian V.Hogg

「SMALL ARMS, ARTILLERY AND SPECIAL WEPONS OF THE THIRD REICH」
THERRY GANDER and PETER CHAMBERLAIN

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