空中戦闘教範 昭和19年3月(海軍)

さて今回は海軍です。
陸軍と違い、ぱっと読むだけでも勇ましい語句が目に付きますが、(笑)
それはともかく陸軍が理論臭かったのに対し、海軍は実に現場臭いという印象を受けます。
で、以下気になったところ抜粋です。
全部書き写せって?
んな無体な(TT

単座機に於いて特に注意すべき事項左の如し

第一章単機戦闘

第16

敵航空機を撃破するには編隊の集団威力を以てするを原則とするも戦闘進展の結果は単機戦闘に終始すること多し。故に搭乗者は単機戦闘に最も習熟しあるを要 す

第17
戦闘に影響すべき飛行機性能及び武装左に如し
  1. 速度
  2. 上昇力
  3. 上昇限度
  4. 視界
  5. 操縦性
  6. 機銃数及び射界
単座機は一般に速力、上昇力及び運動性他の機種に比し優秀にして奇襲に適するも其の武装は前方固定中のみなるを以て敵の奇襲を蒙り易し、単座機の操縦者は 特に旺盛なる攻撃精神に富み操縦術、射撃術に熟達し常に先制の利を占め一発良く敵を撃墜しえる技量を要す

第29
攻撃は速やかに敵に近接し射撃後直に離脱するを以て本旨とす
急降下・急上昇は戦闘の基本運動なり

第30
同高度戦は我に速力の余裕無く高度の優越を得難き時惹起するものにして巴戦となるを例とす
巴戦とは常に敵の運動に追従し機を得て射撃を行うものにして一般に円運動となるものなり

第44
攻撃に対し敵錐揉みを以て離脱を図るときは我は敵を見失わざる如く旋回降下し敵の錐揉み脱出時に攻撃を加うべし
錐揉み実施中は射撃困難なるも其の脱出時は絶好の攻撃時期なり追尾中は常に敵の上空にあるを要す

メモ:米軍は戦法として錐揉みを使ってたのでしょうか?

第48

戦闘紛糾し同高度戦となるときは容易に照準の機会を捕らえ難く彼我の機尾を追い巴戦となるものなり。
徒に焦慮することなく追撃の要項により沈着執拗に占位運動に専念し好機を捕えて射撃すべし。交戦に疲れ離脱を図ることあるべからず
巴戦に於いては敵を見失わざるに勤め特殊飛行を以て反撃を行う場合は特に留意を要す
敵特殊飛行を行う時は我亦之を行い追従すべきも敵錐揉みによって離脱を図るときは第44に準じ追撃すべし。
巴戦に於いては我が速力に留意すべし。過大なる時は旋回圏大となり且運動性敏活を缺くるに至る


第2章編隊空戦
第108
列機は令なくして編隊を離れ単機戦闘を企図すべからず。
司令官敵の存在を知らざるものと認めたるときは一時列外に出で指揮官機の前方に進出し信号により警告し
若し其の遑なき時は発砲して注意を喚起すべし。複隊にありては状況により小隊の単機戦闘を行うを可とすることあり

メモ:無線機を使う、まともに使えるように努力するといったような発想は海軍には無いようです・・・

第113

飛行機隊指揮官は戦術に通じ攻撃精神に富み特に戦闘飛行機隊指揮官は操縦および射撃技量優秀なるを要す。
又其の部下の性質技量を知り各個戦闘の能力を判断し飛行機隊の戦闘能力に就き確信あるを要す
各個の戦闘能力は左記の要素により消長す
  1. 精神力
  2. 操縦技量
  3. 射撃技量
メモ:ほんと精神力好きですね・・・海軍・・・


第3章
第1項 単座機隊の編成及び陣形

第118

小隊は3機を以て編成するを標準とす。
是各機の運動性能を阻害することなく隊形保持に便にして且戦術的に最有利なればなり

第119
小隊の基本戦闘隊形を凸梯陣とし常距離3機長常高度差1機高牟を標準とす。
然れども戦闘の状況により高度差を附せざるを可とすることあり

第132
編隊の攻撃は同時攻撃又は逐次攻撃を以てし敵の分散するに至らば各個の戦闘に移るを例とす。
同時攻撃は編隊各機相対する敵機に対し同時に攻撃を行い逐次攻撃は各機逐次敵同一機に対し攻撃を行うにあり
同時攻撃に於いては指揮官機は短時間減速し部下各機の気勢を見て攻撃を開始するを要す。
第一次の攻撃は極めて慎重に是を実施し一挙敵の多数を撃墜し敵編隊を混乱に陥らしむべし。
爾後の混戦裡に於いては各機の高度獲得容易ならずして同高度戦となり巴戦を惹起し易し。
巴戦は彼我共に傷つき且戦闘長時間に亙り決定的戦勝を期し難し


第3項 複座機又は多座機に対する戦闘

第152
複座機隊又は多座機隊に対する戦闘は単座機隊に対する戦闘に準じ之を実施すべし

第153
攻撃は集団にして反復執拗に之を実施し敵を混乱分散せしむるに努べし
過早に編隊を解き各個の戦闘を行わざるを可とす
集団攻撃は敵防御銃火を分散せしむるの利あり





この時期陸軍は単機戦闘の危険性をはっきり認識し戒めるという文句すらあるのに、
海軍は巴戦も単機戦闘も未だ捨てきってない印象を受けます。
ちなみに単機戦闘に関するページ数は全ページ97ページだっけ?のうち30数ページ以上を割いてます。
目次と最後の解説欄除くと割合は半分近くに達します。
内容は第44のように「こういうときはこういう機動を」というように機動の解説です。
残りに編隊空戦、夜間戦闘を割り当てています。

海軍が空戦において結局何に重点を置いていたかが印象付けられました。
まあ期待の雷電が全然ダメで紫電は足ぽっきんだし前線にいるのが零戦しかないので仕方なしとは思いますが、
巴戦の項目にしたって「おまえは後ろを気にしなくていいのか」と突っ込みたくなります。
それとも零戦の後方視界はゆがんで見えないから気にするなということなんでしょうか(マテ
なんかこう、攻撃一辺倒といった内容です。
無論、こういうときは逃げてもかまわんよとかも多少はあるのですがね・・・

とりあえず今回は面倒なのでここまで。
教範はこれだけじゃないようなので他も読んでみようと思いますってどうせ同じようなこと書いてあるんだろうな・・・