設計原簿とは
厚い布張の黒表紙、厚手の紙に設計や研究の進展とともにペン書きされた、たった1冊しか無い設計や研究の記録のことです。各大砲や舟艇毎に1冊づつ準備され、設計や研究の進捗とともに書かれており、正確で虚飾の無い特級の資料です。例えば5式戦車砲の場合、各試験射撃毎に実施された日、場所、試験員、壊れたり傷んだ部品がどれだけあったかまで全て判りますし、設計ミスやその改善の方法等も隠すことなく記載されています。
当時は各陸軍の研究所が作成していたと推定されますが、筆者が発見したのは第1陸軍技術研究所の原簿群でです。他には防衛庁戦史室に第10技術研究所の原簿が1冊有るだけで、他の技術研究所の原簿が現存しているか否かは不明です。
砲や機関銃などの武器の研究を担当した、第1陸軍技術研究所が作成した設計、研究原簿群は300冊以上あったと思われます。その内の何冊かが焼かれずに戦後も残っていて今回発見されました。この中には5式中戦車の5式戦車砲やカト砲、ホリ砲、ナト砲等の原簿が含まれていました。終戦直前に書かれた原簿が見つかったことにより、設計内容や研究内容が明らかになり、かつ大量の写真が添付されていた事により、学研の「日本の戦車と砲戦車」が企画されました。
2002.04.06改訂