平成15年8月、某所でこんな事を聞かれた。「五式中戦車に搭載予定があったと伝えられる、九九式八糎高射砲のドイツの原形砲はなんでしょうか?またこの砲はクルップ製と伝えられていますが、架構の形状は典型的なラインメタル形式です。だから
ラインメタルの砲だと思うのですがと゜う思いますか?」と、そして「重量が本によって色々違う重量が書いてありますが、有る本に書いてある九九式八糎高射砲の砲身重量とSKL45の後継のSKC/30の砲身重量が一致するので原型はSKC/30に間違いないと思います。」とのことであった。
私は世界の艦船の平成14年9月増刊号に「ドイツのSKL45の陸上砲台型が南京で日本軍に捕獲され、それをデッドコピーしたのが九九式八糎高射砲だ。」と書いた。
NAVAL WEAPONS OF WW2によれば、ドイツの8.8センチ高射砲SKL45はSKC30の原型であり、砲の性能と使用する弾丸は同じとある。また同書によればSKC30は薬室交換式の高射砲で、垂直鎖栓式である。
さてこの砲に関する一次資料で確かな資料は2っ有り、その1っは昭和十四年八月(1939年)九九式八糎高射砲準制式制定の際の本砲の説明書である。
この資料から本砲が中国の呂集団から昭和十三年以前に捕獲された克式八糎高射砲である事も記されている。
またこの砲は捕獲後技術研究本部に下付されているがその下付申請がもう1っの一次資料である。その資料の一覧には克式の本砲とラインメタルの各種砲が含まれている。従って日本陸軍がドイツの火砲を全て克式(クルップ式)と呼んだわけでは無い事が判った。また銘板から号機まで読みとっている所から見て、克式が誤っている可能性は極めて少ない。
これらの一次資料から推定すれば、
本砲はクルップ式である。
各種八糎砲の諸元
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SKC/30 |
SKL45 |
九九式八糎砲
(輸入品) |
口径(mm) |
88 |
88 |
88 |
重量 尾栓含む(kg) |
1,230 |
2,500 |
1250 |
全長(mm) |
3,960 |
4,000 |
3,980 |
ボアの長さ(mm) |
3,706 |
|
? |
薬室長(mm) |
530 |
|
? |
薬室容積 |
3.67dm3 |
|
? |
施条長(mm) |
3109.5 |
|
? |
弾丸重量(kg) |
9.0 |
|
? |
発射薬重量(kg) |
2.82 |
|
? |
初速(m/s) |
790 |
890 |
820 |
圧力(kg/cm2) |
2750 |
|
? |
砲身寿命 |
7000EFC |
|
? |
最大射程 |
14,175 |
|
15,400 |
43.5度 |
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根拠文献 |
NAVAL WEAPONS OF WW2 |
HP
www.warships1
.com/Weapons/
WNGER
_88mm-45
_skc13.htm |
準制式制定説明書 |
www.warships1.com/Weapons/WNGER_88mm-45_skc13.htm
のSKL45の写真と九九式八糎高角砲は類似点が多く、なんらかの関係が有るのは明かである。ただし砲身重量が妙に異なるのが気になる処である。
"German Capital Ships of World War Two" by M.J.
Whitley
"German Warships 1815-1945" by
Erich Groner
の2冊の本を今後調べてみたい。