しまった敵艦だ!

空母ゲームで41万おまけ


 「少年サンデー」昭和39(1964)年11月29日号掲載の広告である。


エポック社の空母ゲーム

着艦用意!
エポック社の 空母ゲーム

空母から飛び立つ飛行機、空母に着艦する飛行機、スイッチ1つで自由に操作できるリモコンゲーム!


 右上の「リモコンパワーボックス」で、「センター・タワー」から延びる棒に繋がれた「艦上戦斗機」を操作、「着艦用空母」にピタリと降ろすゲームであるようだ。飛行機は、タワーを中心に旋回するので、上の写真の飛行甲板をよーく見ると、中央6と7の間の線が、カーブしているのがわかるだろう。
 
 「艦上戦斗機」(この表記も時代がかっているなあ)が「ゼロ戦」のつもりであるのは、「キミもボクもゼロ戦のパイロット!」の一文で明白だが、風防天蓋後方が透明で無いのはよろしくないし、4枚プロペラでは烈風か紫電改になってしまう。主脚は外側に引き込まれてしまうように見えてならない、と、実にアヤシゲな「ゼロ戦」なのだが深くはツッコまない。
 問題なのは「空母」だ。このカタチ、どう贔屓目に見ても、戦後のものとしか思えない。飛行甲板にデカデカと描かれた「67」は、米海軍の「ジョン・F・ケネディ」(起工1964年!)と同じだ。つまりこれは、

 ゼロ戦が、米国最新鋭航空母艦に離着艦するゲームなのである

 少年向け戦記ブームのさなかに、こんなデタラメをやってても許されたのか、と個人的に驚愕している次第なのだが、殆どの読者諸氏にはご理解いただけないでしょうね(笑)。もっとも、当時の米国空母から飛び立つ戦闘機であれば、カタパルトで射出されるのであるから、「ゼロ戦」が「ファントム」になっていても、これはこれで都合が悪いのであります。
 実物空母の飛行甲板には、降りた飛行機を素早く止めるため、制動索(アレスティングワイヤー)の何本かが張られており、戦闘機には着艦拘束鉤(アレスティングフック、着艦フック)があって、着艦の際カギをワイヤーに引っかけなければいけないのであるが、ゲーム板(と呼んでも許されるだろう、『甲板』だから)を横切る点線の横には、ちゃんとヒモが一本延びていて、飛行機の車輪が引っかかるようになっている。さすがは「魚雷戦ゲーム」のエポック。ビミョーに凝ったゲームである…。
 今時の「大きな」お子様向けにリニューアルするのなら、電磁石で爆弾の一つも下げ、「爆撃もできます」くらいにしてもらいたいものだ。

 広告にあるように価格は780円。当時の少年サンデーが50円、浅草ロック座ストリップ入場料は200円、東京の銭湯23円(今では430円もする)、日雇いの平均賃金889円、銀行の大卒初任給が2万3千円である(『値段史年表』より)。ちなみに同誌の懸賞に出ている切手「見返り美人」の市価は2千円!との事である。

(おまけのお断り)ここは「懐かしゲームサイト」では無いので、以下実物の箱、本体、プレイインプレッションには続きません、悪しからず。今買うと結構な値段になること請け合いで、それだけの資金は次のネタ集めに使うのが、読者諸氏と自分のタメである。