D−デイ : 装甲兵(01/5/22 19:49)
Re:D−デイ : Edwerd(01/5/22 22:43)
ルントシュテット元帥 彼方は正しい : ZUG(01/5/26 06:27)
Re:ルントシュテット元帥 彼方は正しい : Edwerd(01/5/27 01:42)
Re[2]:ルントシュテット元帥 彼方は正しい : ZUG(01/5/29 01:39)
Re[3]:ルントシュテット元帥 彼方は正しい : Edwerd(01/5/29 15:17)


5633 Root [5635] [5652]
D−デイ
装甲兵(01/5/22 19:49)

D−デイにおいて,もしロンメル元帥の主張通りに歩兵師団と機甲師団(SS第12機甲師団や戦車教導師団等)がすべて海岸付近に配備されていたら,連合軍を海に追い落とすことができたのでしょうか? ソードの英軍とオマハの米軍くらいは蹴散らせたような気がするのですが・・・          
同じような議論が過去にあったらごめんなさい。


5635 [5633] なし
Re:D−デイ
Edwerd(01/5/22 22:43)

 私は基本的にそれは可能であったと考えます。ロンメルは「最初の24時間で勝敗は決する」というような事を言っていましたが、実際に三波から成る上陸第一陣が橋頭堡を確保するまでは、戦車や野砲などの支援火器の掩護が受けられない上陸軍は最も脆い状態でした。その様な状況で1個装甲大隊を中心とするカンプ・グルッペが突入しただけで、上陸海岸の連合軍は大混乱に陥ったはず。またその様な海岸地帯付近の狭量な範囲での混戦になれば、連合軍の航空支援もそれほど効果を発揮できなくなるでしょう。
 ただこの様な状況が現出するのは、ドイツ側が連合国の上陸地点を察知した上で、かなり巧妙に装甲部隊の偽装工作を行った場合だけでしょう。西方総軍B軍集団司令官の立場にあったロンメルが予備の装甲兵力の指揮に関してかなりの自由裁量権を与えられていたとして、史実で遅れてノルマンディー戦に投入された装甲部隊の全てを掌握していたとしたら(軍事的に見た場合、実際にはそれは非現実で、せいぜいその半分くらいが妥当なところだろうが)、物理的に転用可能なドイツ軍の装甲兵力は、カーンにあった第21装甲師団を覗けばSS第1、第2、第9、第10、第11、第12、第17(全てSS)のそうそうたるものとなる。しかし逆にこれだけの戦力を一地域に集中するとなると、当時の連合国が情報戦でドイツを一枚も二枚も上回っていた事を考えると、その意図をD‐DAYの作戦実施段階まで秘匿できたかどうか疑わしい。
 そうなると作戦のGOサインを出すまでに、とことん迷い続けたアイゼンハワーが作戦を延期していた可能性は高いのではないだろうか。


5652 [5633] [5656]
ルントシュテット元帥 彼方は正しい
ZUG(01/5/26 06:27)

でもロンメル元帥も正しい。
結局、ルントシュテット、ロンメル両名とも正しいのです。
それを確認する作業として、両元帥の考えを簡単にまとめると以下の様になります。

《ロンメル》
ロンメル 「大西洋岸を防衛する作戦計画を立てろとな?簡単だ、造作も無いことである」
OKW   「おおっ流石ロンメル元帥、頼もしいお言葉。でもそんな事が可能ですか」
ロンメル 「出来る。まず大西洋海岸の敵上陸予想地点をベトンで覆い、
       地雷一億個を敷設して完全防衛体制を整える。
       しかる後に、敵上陸後は機甲兵力を集中投入して兵站陸揚げの前に全てを叩き落す。
       もちろん、それを行うに足る西方軍の機甲兵力は全て使わせてもらう……
       おいっ聞いているのか」
OKW   「(ビックリ顔)そんなこと出来る訳ないじゃないですか。
       一体どこにそんな戦費と資材があると言うのです」
ロンメル 「私は勝てる作戦を立てろと言われたから立てたに過ぎない。
       戦費だの資材だのは私の仕事ではない。それは諸君らが行うことだ。
       大体、北アフリカの時もだなあ、後3個師団あれば勝てたんだ。
       あん時にケチるから今こんな目に合っているんだよ。
       それをグデーリアンの野郎……(この後数十分も怒り続ける)」
OKW   「……」
ロンメル 「何も全沿岸を守るとは言わん。ノルマンディーだけで良い。
       連合軍はここに来る」
OKW   「……(総統と相談しなくちゃ)」


《ルントシュテット元帥》
ル元帥 「君ぃ、ノルマンイディーかカレーかなんてナゾナゾをしている場合ではないのだよ」
OKH   「でも敵の進出先を考えるのは重要ではないのですか?
       それに元帥はカレー防衛を提唱なさっているではありませんか」
ル元帥 「カレー防衛ではない、カレーに兵力を置くのだ」
OKH   「それはどう違うので」
ル元帥 「どこに上陸するのか分からない以上、敵の手を読んで配備するなど無駄が大きい。
      予定地点はベルギーかも知らんし、南仏の半島付け根かも知らんのだ。
      そんな長い海岸線を全て守れと?馬鹿馬鹿しい。
      重点防御して敵に裏をかかれたら一体どうする」
OKH   「それでは何処を守ると言うので」
ル元帥 「守るのではなく、敵の意図を挫くのだ。
      その目的から敵上陸予想地帯の真ん中、つまりカレーに兵力を置く。
      一番英本土に近いし、どの海岸に上陸されても対応が可能だ。
      浜砂なんぞは敵にくれてやれ。内陸に侵攻してきたら全西方軍でもって迎え討ってやる」
OKW   「……(総統と相談しなくちゃ)」


とまあ意訳たっぷりの寸劇風にしてみました。
ル元帥案に人気がないのは、
「カレー防衛を提唱し外れた元帥より、ロンメル元帥の方が敵の意図を読んだ」
と思われている点です。
南方軍集団司令時代の失敗(あれ失敗かなあ?ロストフ放棄なんて当然じゃあ……)
も点数を低くしている原因かもしれませんね。
ですが、ル元帥は海岸の防衛なんぞは重要視せず、
機動防御の一点のみに意見が集約されているのです。
そして後知恵しか持ち合わせていない私からすれば、ル元帥案は理に適っているのです。

一方、ロンメル元帥の無茶のように思える防衛計画も、
連合軍はそれ位しないと勝てない相手であると見ぬいている点が素晴らしいです。
北アフリカで英米両軍の対応に手を焼いた経験が活きているのでしょう。
つまりどちらも正しいことを言っているので、ヒトラーが激論の間に立って悩んだのも頷けます。
そして両方の意見を実現しようとした結果が、A・B軍集団の配置となって表れたと見ています。

このような大きな戦ともなると膨大な「たられば」が存在しますが、
運に頼らない大きな「たられば」があります。
それは、「ル元帥案をロ元帥が実現する」と言うものです。
12月の疲弊した兵力で行われた反抗作戦(ラインの守り=バルジ)よりも、
比較的充実した兵力で行われた機動防御こそが連合軍に対する最大の痛撃であったと思います。
それを実現するには、老練と気鋭両者の才能が必要で、
もしかしたらそれこそがヒトラーの狙いだったのかも知れません。
でも反目したまま時が過ぎちゃった (;_;)
惜しいのは上陸後の数時間ではなく、上陸前の大事な時間を議論に費やしてしまったことです。


5656 [5652] [5677]
Re:ルントシュテット元帥 彼方は正しい
Edwerd(01/5/27 01:42)

ルントシュテットとロンメルの持論の双方に理が合ったというのは確かにうなづけるものが多いと思う。ルントシュテットは長大な海岸線全てを死守する事などそもそも不可能であるという見地に立って、内陸部での機動防御で連合軍を迎え撃つと言う戦略を提唱した。しかしそれは純戦術的な理論上では全くの正論である事に間違いはないのだろうが、一方で連合軍が圧倒的な航空優勢を持っていた事を見逃しており、彼の正論も連合軍のその熾烈な航空阻止攻撃という現実の前には正論足り得えなかったと思う。
 だがロンメルは北アフリカ戦線での経験から、連合国空軍の制空権下で昼間の機動作戦など画餅でしかないという実状を把握しており、彼が提唱した最も敵が上陸して来る可能性の高い地域に的を絞った水際での作戦の方がより現実的ではなかったのではないか?
 確かに北はオランダから南はピレネー山脈まで、その長大な海岸線の全てを鉄壁の守りで固めるという「大西洋の壁」などというのは、ドイツお得意の喧伝工作の域を出ていない実現不可能な事である。しかしルントシュテットの言う「この長大な海岸線全てを守ろうとする事自体ナンセンスである」という考え方が、そもそも敵がこの海岸線の何処からでも侵入し得るという可能性から導き出されているとしたら少し早計ではないかと思う。
 上陸作戦には完全な制海権と制空権が必用であり、少なくとも連合軍の上陸地点はその長距離戦闘機の勢力圏内に限定されているはずである。それでも上陸部隊が航空支援を受け得る範囲は、カレーからコタンタン半島までかなりの幅を持つ戦域が考えられるが、更に付近に相応の港湾があるかどうか、上陸に適した適当な幅を持つ海岸があるかどうか、内陸へ向けた良好な幹線道路が必要数存在するかなどその必要条件を吟味していく過程で、上陸作戦が可能と思われる地域は限定されて行くはずである。
 その意味で期を同じくして双方の陣営がカレーとノルマンディーに注目していたのは伊達ではなく、結果として連合国側の情報戦の方が一枚上手であったとは言えドイツ側の読みも良い線を行っていたと言えるのではないか?
 連合国の意図を読めないからと言って、直ちに内陸部での迎撃に走ってしまうのは極端な発想であって、理想を言えばノルマンディー、カレー、そしてその中間にあるル・アーブルなどの地域に絞ってその海岸地区に各2〜3個の装甲師団を配備し、敵の主攻勢方面が判明しだい他の地区から夜間移動によって転進させるという幾分ロンメルの主張に近い戦略を採るベきだったのではないかと思う。それでも他の地区からの増援は殆ど当てにはできないが、上陸地点での反撃は史実よりも強力なものとなっただろうし、そこでより長く増援部隊到着までの時間もを稼げたに違いないのではないかと思う。


5677 [5656] [5689]
Re[2]:ルントシュテット元帥 彼方は正しい
ZUG(01/5/29 01:39)

Edwerdさんお手柔らかに。


>一方で連合軍が圧倒的な航空優勢を持っていた事を見逃しており、
>彼の正論も連合軍のその熾烈な航空阻止攻撃という現実の前には正論足り得えなかったと思う。

ル元帥がどの程度英米連合軍の航空勢力を認識していたかは知らないのですが、
連合軍の航空的イニシアチブはドイツ軍には常に付きまとう問題なので、
仕方ないようにも思います。

色々と尽きない話題がてんこ盛りですが、
端的に言って私が思う『ドイツ軍がノルマンディーでやってはいけない事』は、
・イギリス軍を甘く見てはいけない
・艦砲射撃を舐めてはいけない
です。


イギリス軍はカーンの攻略に手間取り、ヴィレル・ボカージュでビットマンにけちょんけちょんにやられ、
そしてグッドウッド作戦の結果からどうしても悪い点を付けられがちですが、
元々敵の反撃を引き受けつつ、それでも進撃することを目的とした難しい役回りだったことを思うと、
結構奮戦したんだなあと見てます。
そしてカーンからファレーズまでの戦闘期間はイギリス軍の損害ばかりが目立ちますが、
結局目的を果たせずに敗退したのはドイツ軍の方です。

それに第21装甲師団の投入が遅れたことを惜しむ声が長らく語られますが(かくいう私も)、
確かに、効果的な反撃にはその前段階が必要ですし、時間稼ぎの為だけでもカーンの防衛と予備攻撃は必要不可欠です。
ですが、初日の遅れがあっても目標を掴み損ね、歩兵の随伴が間に合わないのですから、
酷く混乱していたのは容易に想像できます。
そして、初日の随伴歩兵を伴なわない機甲兵力が、どれだけ戦力を発揮できたのかも疑問が残ります。
辛いことに、カーン一帯は艦砲の射程距離内なんですよね。


仮にゴールドとジュノー(イギリス上陸の右翼、カーンから見て左)の海岸に混乱を与えたとして、
その後の疲弊した兵力で、史実のような粘りが発揮できたかは難しい問題です。
さらに言えば、上陸の第一悌団(英かカナダ)を壊滅させたとして、
その海岸地帯に降り注ぐ砲撃は確実にドイツ軍に無視できない損害を発生させるでしょう。
最悪の場合、その後に上陸するイギリス軍を防ぐことは出来なくなります。
つまりカーンの早期放棄という絶対してはならない事態に成りかねません。

Edwerdさんも同じような見地から海岸の絶対防御を推していると思われますが、
補給路と通信連絡路の防衛は難しいですよね。
これさえ完全解消できたら全面的にロンメル案を指示できるのですが。


5689 [5677] なし
Re[3]:ルントシュテット元帥 彼方は正しい
Edwerd(01/5/29 15:17)

 なるべく感情的にならないよう努めますが…
しかし私の最初の記事をよく読んで頂けたら御分かりと思いますが、私の見解は前記事でのZUGさんのそれとは多分に異なりますので反論してみたいと思います。

ZUGさんの見解を要約する次の通りになると理解したのですが…
1 英軍の実力は無視できないものである。
2 第21装甲師団は史実で初動の遅れがあったのにも関わらず
  諸兵連合を組む歩兵部隊が間に合わず、よって装甲兵力を
  十分に活かせなかったが、ロンメルの防衛戦略でもそれは
  起こり得る。
3 艦砲射撃によって被る損害が甚大。
4 海岸地帯に突撃した後の部隊の疲労が大きくそこを保持で
  きない。
5 その結果、水際で敵を叩く戦法の失敗でカーンの早期の喪
  失を招く。
6 補給・通信連絡線の維持が困難

 この内、私が同意できる意見は1番目だけです。
確かにこの時期の英軍は長期にわたるドイツ軍との戦闘経験から、彼らがアマチュアと見下していたアメリカ兵に比べて、その士気・錬度などで格段の違いがあるだけの実力をもった精強な軍隊でした。しかしそれは十分な奥行きを持った橋頭堡を確立し、歩兵を中心に戦車・野砲などの支援兵力を備えた戦闘部隊としての体勢を整えた上で発揮されるものであり、「歩兵が頭も上げられずに海岸の浪打際で釘付けにされている」と言う状況ではどんな軍隊でもその力を発揮する事はできません。
 2に関しては、私の見解はロンメルの戦略に則って、海岸地区に2、3個の装甲師団が偽装・隠匿配備されいるという事が前提条件となっているので、論議の対象から外れてると思います。
 3の艦砲射撃について。作戦当初、艦砲の目標は沿岸砲台やトーチカなどにの固定陣地に対して重点を当てられており、その点においては確かに絶大な効果がありました。しかし通常の戦闘部隊に対しては、相応の友軍が交戦状態にある状況でこれを支援するという場合でないと、余り効果はありません。艦砲は通常より大規模な間接砲射撃の効果があると思いますが、例えまぐれ当たりの至近弾が一部の守備隊を恐慌に陥れたとしても、その機を捕えて突破口を開くだけの地上部隊が足場を得ていなければ意味がないという事です。また、そもそも上陸時に、友軍兵士で溢れ返っている海岸の指呼の間にある敵守備隊に砲撃するのは無理ですし、至近の後背地にいる装甲兵力に対しても、それが曲射弾道による間接砲撃の域を出ない以上、狙って当たるものではありません。
 4に関しては2と3の条件を踏まえた上で考えてもらうと、これは逆で、暫定的なものでも橋頭堡を築き上げてしまった後の、統制の整った戦闘部隊(各種支援部隊が整っていると言う意味)を相手にするより、海岸で砲や装甲車輌を陸揚げ待ちしていて、重火器の支援を得られない歩兵部隊だけを相手にする方が、どう考えても遥かに楽に倒せるし、攻撃した部隊の疲労・損耗度は少ないでしょう。海岸に進出するまでの交通阻止攻撃(艦砲による被害は先の通り、無視できるほどなので考慮しない)による損害の事を言っているのだとしたら、この想定はその様な状況に陥らないためのロンメルの戦略を前提としているので、ドイツ軍の装甲部隊は被害が出る前に海岸地区に突入し、そこを席巻してしまいます。
 5 上記の理由から海岸に急派された部隊は十分に余力を残しているでしょう。仮に壮絶な消耗戦を演じて部隊交代の必要があっても、最初から海岸付近に機動力のある装甲兵力を拘置してあるので、その要求は満たせる。
また、上陸第一波が撃退された上陸海岸に再度の敵前上陸を試みるには、かなり時間を要して部隊の揚陸スケジュールを再調整するが必要あります。第一波の強襲上陸隊が必用とする特別な装備や資材は、先に撃退された時にその多くを遺棄してしまっているだろうから、現実問題として直後にそれを試みるのは不可能でしょう。オーバー・ロード作戦の様に莫大な時間と資材を投じ、細部まで綿密に練り上げた大規模かつ複雑な作戦計画ほど、一度一ヶ所で破綻が生じたら最後、簡単にやり直しは利かないものだと思う。
 6 この見解が一番良く判らなかったのですが…。この時点で補給・連絡線の維持を心配しなければならないのは上陸を試みる連合軍の方で(橋頭堡を確保してない段階ではその確立さえなされていない)、これがドイツ側の不利な点とする根拠は何なのでしょう。航空攻撃だけでは目に見えて効果がある程、これを麻痺させる事などできませんし(北アフリカにおける大敗走時においては、その長大な兵站線の割に、使用できる交通路が極端に限定されていた事でかなりの影響はあったでしょうが…)、第一、ロンメルの戦略だと前線備蓄分の補給量を心配する前に勝負は決まってしまうと思いますが…。

 また、Edwerdが…と思われそうですが、私は議論する時は真面目に議論したいので異論があれば遠慮なく言って下さい。私も自分の意見を組み立てながら勉強になったり、以外な知識を得られたりする事多々ありますので…。
かしこ


FlasH BBS Pro v1.41 [Shigeto Nakazawa]