ZUG(01/5/26 06:27)
でもロンメル元帥も正しい。 結局、ルントシュテット、ロンメル両名とも正しいのです。 それを確認する作業として、両元帥の考えを簡単にまとめると以下の様になります。
《ロンメル》 ロンメル 「大西洋岸を防衛する作戦計画を立てろとな?簡単だ、造作も無いことである」 OKW 「おおっ流石ロンメル元帥、頼もしいお言葉。でもそんな事が可能ですか」 ロンメル 「出来る。まず大西洋海岸の敵上陸予想地点をベトンで覆い、 地雷一億個を敷設して完全防衛体制を整える。 しかる後に、敵上陸後は機甲兵力を集中投入して兵站陸揚げの前に全てを叩き落す。 もちろん、それを行うに足る西方軍の機甲兵力は全て使わせてもらう…… おいっ聞いているのか」 OKW 「(ビックリ顔)そんなこと出来る訳ないじゃないですか。 一体どこにそんな戦費と資材があると言うのです」 ロンメル 「私は勝てる作戦を立てろと言われたから立てたに過ぎない。 戦費だの資材だのは私の仕事ではない。それは諸君らが行うことだ。 大体、北アフリカの時もだなあ、後3個師団あれば勝てたんだ。 あん時にケチるから今こんな目に合っているんだよ。 それをグデーリアンの野郎……(この後数十分も怒り続ける)」 OKW 「……」 ロンメル 「何も全沿岸を守るとは言わん。ノルマンディーだけで良い。 連合軍はここに来る」 OKW 「……(総統と相談しなくちゃ)」
《ルントシュテット元帥》 ル元帥 「君ぃ、ノルマンイディーかカレーかなんてナゾナゾをしている場合ではないのだよ」 OKH 「でも敵の進出先を考えるのは重要ではないのですか? それに元帥はカレー防衛を提唱なさっているではありませんか」 ル元帥 「カレー防衛ではない、カレーに兵力を置くのだ」 OKH 「それはどう違うので」 ル元帥 「どこに上陸するのか分からない以上、敵の手を読んで配備するなど無駄が大きい。 予定地点はベルギーかも知らんし、南仏の半島付け根かも知らんのだ。 そんな長い海岸線を全て守れと?馬鹿馬鹿しい。 重点防御して敵に裏をかかれたら一体どうする」 OKH 「それでは何処を守ると言うので」 ル元帥 「守るのではなく、敵の意図を挫くのだ。 その目的から敵上陸予想地帯の真ん中、つまりカレーに兵力を置く。 一番英本土に近いし、どの海岸に上陸されても対応が可能だ。 浜砂なんぞは敵にくれてやれ。内陸に侵攻してきたら全西方軍でもって迎え討ってやる」 OKW 「……(総統と相談しなくちゃ)」
とまあ意訳たっぷりの寸劇風にしてみました。 ル元帥案に人気がないのは、 「カレー防衛を提唱し外れた元帥より、ロンメル元帥の方が敵の意図を読んだ」 と思われている点です。 南方軍集団司令時代の失敗(あれ失敗かなあ?ロストフ放棄なんて当然じゃあ……) も点数を低くしている原因かもしれませんね。 ですが、ル元帥は海岸の防衛なんぞは重要視せず、 機動防御の一点のみに意見が集約されているのです。 そして後知恵しか持ち合わせていない私からすれば、ル元帥案は理に適っているのです。
一方、ロンメル元帥の無茶のように思える防衛計画も、 連合軍はそれ位しないと勝てない相手であると見ぬいている点が素晴らしいです。 北アフリカで英米両軍の対応に手を焼いた経験が活きているのでしょう。 つまりどちらも正しいことを言っているので、ヒトラーが激論の間に立って悩んだのも頷けます。 そして両方の意見を実現しようとした結果が、A・B軍集団の配置となって表れたと見ています。
このような大きな戦ともなると膨大な「たられば」が存在しますが、 運に頼らない大きな「たられば」があります。 それは、「ル元帥案をロ元帥が実現する」と言うものです。 12月の疲弊した兵力で行われた反抗作戦(ラインの守り=バルジ)よりも、 比較的充実した兵力で行われた機動防御こそが連合軍に対する最大の痛撃であったと思います。 それを実現するには、老練と気鋭両者の才能が必要で、 もしかしたらそれこそがヒトラーの狙いだったのかも知れません。 でも反目したまま時が過ぎちゃった (;_;) 惜しいのは上陸後の数時間ではなく、上陸前の大事な時間を議論に費やしてしまったことです。
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