> 雷電について > (1)あの太胴は純粋に空力的にみてどうだったのでしょうか?速度的にはそれなりに出ていたように思いますが(33型)。 当時の風洞実験では零戦より形状抵抗が低いと出たそうですが、現代の定説では 紡錘状の胴体がペラ後流を阻害するため逆効果だったと言われています。しかし私は あまり失敗でもなかったと思います。21 型ですら 596Km/h(ただし高度 5,000m) で 紫電改の 595Km/h をわずかに上回ります。33 型の 614Km/h(6,000m) という値は 彩雲の 604Km/h より速く、陸軍の新司偵U型 630Km/h にひけを取らない成績です。 この実績を見る限り、「紡錘形状によるペラ後流の阻害」による抵抗はさほどの 悪影響を与えていないように思えます。むしろ太い胴体と長い機首・低い座席に よって着陸視界が悪化したことが問題ですね。
> (2)振動問題が起きなければどうなっていたでしょうか?また同じ火星単発の強風、天山では振動問題はどうなっていたのでしょうか?天山のプロペラを雷電につけたら? 震動問題が顕在化したのは油圧VDM4枚ペラと直噴・水メタ噴射装備の火星23型を 搭載してからですが、この時冷却ファンも増速回転式に換装されています。私はこの 増速回転ファンも震動問題に一枚噛んでいるのではないかと疑っています。雷電の震動 問題は複雑な共振現象で、ペラだけを換えて解決する性質のものではなかったと思い ます。
> (3)延長軸、太胴を採用せず素直に胴体を絞っていたらどれほどの性能が期待できたでしょうか? 延長軸を廃止しカウリングを通常形式(新司偵程度の絞り形状にとどめる)にしても 大して性能は低下しなかったと思います。むしろエンジントラブルが激減して稼働率は 飛躍的に向上、パイロットも雷電名物のエンジン停止の恐怖から解放され、より任務に 専念することができたと思います。
> (4)側面形を太胴にして(高い位置に操縦席を置き視界を確保するため)胴体平面形を細く絞ったら?(鯛みたいに縦に平たくなる。太胴と細胴の中庸) そうすると F6F に似た形になると思います(笑)。「デブ」「イモ」「後方視界ゼロ」と 何かにつけ悪口を言われる F6F ですが、平面形を見れば意外とスリムで、後部胴体が 縦長に絞られているので見かけほど視界が悪くなかったことがわかります。しかし カウリングを前後に短縮する(3)案とは違って、こちらは正面投影面積がモロに増加 するので空力的に不利です。最高速度は14試の段階で 570Km/h から 550Km/h 程度に 落ちてしまうでしょう。14試局戦の趣旨は「速度と上昇力」ですから、零戦と大差 ないこのスペックでは採用されそうにありません…。
> (5)ハー104を搭載していたら?(後ろを重くしないとバランスがとれない?) 重量増加が馬力増加を喰ってしまうと思います。下手をすると逆効果になるでしょう。 実際陸軍97司偵に「栄」を載せた海軍二式陸偵12型は97司偵2型より性能が 低下していますし、フィンランドでフォッカーD-21 に R-1820 を積んだ改造機も 性能が低下しています。しかしマーリン I 910hp から出発しグリフォン 2,200hp まで耐えたスピットファイヤーのような例外もありますが…胴体も尾翼もほとんど 新規設計になってますからねぇ。
|