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ボートOS2Uキングフィッシャー

 第二次大戦中の米海軍艦載観測機の標準タイプとも言える機体で、1939年制式採用であるが量産機の引渡しは1940年からなので、太平洋を隔てて、零式水上観測機の直接のライバルにあたる機体でもある。

 性能諸元を見るとあまりぱっとしない飛行機であるが、技術的にはいろいろと凝ったところのある機体である。

 全金属製中翼配置の単フロート型水上機であるが、機体構造には最新技術のスポット溶接がふんだんに適用され、機体外板にはリベットが一切ない平滑な表面を見せる。
 主翼は同社のF4Uと同じように、前半部を金属製、後半部を羽布張りの構成。補助翼は離着水時にフラップと連動して下がるドループエプロン方式で、この際の横操縦のために補助翼前方にスポイラーを装備する。

 エンジンは450馬力の空冷9気筒星型ワスプ・ジュニアで、低馬力なのは元々の要求性能が低かったためである。米海軍は敵観測機の排除をあくまで空母搭載の艦戦で行うつもりだったようだが、来るべき決戦では互いの空母戦力との激突で艦上機戦力を消耗し、決戦時の観測機は自力で妨害を排除しながらの任務遂行がありうると日本海軍では考えていた。
 このため、単葉機にもかかわらず、複葉だが875馬力の零観に100km/h近く速度で劣り、空戦性能はまったく及ばなかった。
 武装は7.62mm機銃*1を右主翼付根に、もう*1を後席の旋回銃座に装備。
 照準器はMk.V照準眼鏡を操縦席に持つ。
 両翼に1箇所ずつあるパイロンには、45kgか54kgの爆弾、または147kgの爆雷を懸吊することができる。
 プロペラは直径2.59mのハミルトンスタンダード/ハイドロマチック定速2翅。

 また、これは米海軍の艦載水偵に共通であるが、当初より陸上機と兼用可能なことが要求されていた。
 これは、内陸部の工場で作ることを容易にするためで、完成機は工場側の飛行場から飛び立ち、海岸に面した作業場で固定脚と浮舟を取替える。
 本機の浮舟は主としてエド社製であった。
 OS2Uの場合、陸上機仕様のままで近海哨戒任務についた機体もかなりの数に上る。

 最初に配備についたのはVO-4のBB45小隊、即ち戦艦コロラド搭載のOS2U-1の3機である。
 観測飛行隊VOは一個戦艦戦隊(3隻)あたりに一隊が宛てられ、一個VOは9機編成なので、都合米戦艦の搭載機は1隻3機となる。この数量がどうやって決められたかは手持ちの資料では不詳だが…。
 OS2U-1の生産数は54機、うち5機は陸上基地配備。
 次のサブタイプOS2U-2を初めて搭載したのは、ほぼ時を同じくして完成したばかりのBB-55ノースカロライナとBB-56ワシントンである。
 OS2U-2での変更点は、エンジン換装(同エンジン同馬力だが、全開高度が低いタイプに)、無防備であったのが63kg近くの防弾鋼鈑を要所に貼り、主翼燃料タンクを自動防漏式に、エンジンまわりの燃料系統に二酸化炭素消火装置を追加して、一挙に防禦を向上した。
 OS2U-2の生産数は158機で、うち113機が陸上基地配備となった(フロート製造が間に合わなかったため)が、後にフロート70機分が納入されて、配備先の変更はなかったものの運用に幅を持たせることができた。
 続くOS2U-3は1306機が生産されたシリーズ最多生産型で、且つ最終生産型である。全てが水上機型として納入された。
 このタイプになると全燃料タンクが自動防漏式となり、防弾鋼鈑もエンジンに15kg、操縦士席に59.4kg、観測員席に25.4kgと、合計100kgの装甲を持つ。
 エンジンは陸海軍共通規格のR-985-NA-2/-8となったが、馬力は変わっていないので、飛行性能的には初期型からだんだんと悪くなっている。
 1941年3月から42年12月まで生産され、42年2月からはヴォートがF4Uに全力投入するためフィラデルフィア海軍航空工廠に生産が移り、1006機がヴォート製OS2U-3、300機がNAF製OS2N-1となっている。各型合計で1518機が生産された。

 太平洋戦争では戦艦同士の洋上決戦は起こらず、本来の任務である弾着観測には対地艦砲射撃のときにたまに出動する程度であったが、とりあえず終戦まで戦艦の全艦、重巡洋艦及び大型軽巡洋艦の一部に搭載されて雑用などに便利に働いた。
 陸上型は大西洋側の哨戒飛行隊で任務にあり、これも終戦まで沿岸部の哨戒任務についていた。

 また、英国にもOS2U-3の100機が引渡され、キングフィッシャーMk.Tとしてフェアリー・シーフォックスと交代または肩代わりした。
 この他、オーストラリアに18機(軽巡ホバートの艦載機)、チリに15機(戦艦アルミランテ・ラトーレ搭載機他)、アルゼンチンに9機(巡洋艦搭載機)、ウルグアイに6機、メキシコに6機、ドミニカに3機が輸出または供与されている。

(文:まなかじ)


諸元(OS2U-3水上機型)
全幅10.95m
全長10.31m
全高4.61m
翼面積24.15m2
全備重量2,068kg
燃料搭載量923.6l
最高速度275km/h(1,524m)
巡航速度192km/h
初期上昇率244m/min
上昇限度6,126m
航続距離1,327km
武装7.62mmコルト/ブローニングM2*2(固定装備*1 旋回機銃*1)
発動機プラット&ホイットニーR-985-NA-2/-8ワスプ・ジュニア空冷9気筒星型450馬力
乗員2

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