great britain
スーパーマリン ウォーラス

 スピットファイアと同じ、レジナルド・ミッチェル技師の設計になる。
 というか、もともとミッチェルは水上機屋であり、スピットファイアの方が例外なのだが…。Walrusとはセイウチの意。

 ウォーラスは、先行している水陸両用多用途機であるスーパーマリン・シーガルから直接発達した機体で、原型機はシーガルMk.Vと呼ばれていた。
 カタパルト射出の艦載機として作られているが、空母からの発着艦も可能な設計になっている。

 着陸装置は車輪のみ下翼に引込み、脚支柱は飛行中、一見して胴体から下翼に出た支柱のように斜めに露出して見える。
 この脚は水上でブレーキとして(陸上機での車輪のチョーク止めと同様に)使用することで、離水時の滑走距離を短くすることができた。
 また、やや波のある海面での細かい水上操作にはエンジン出力を高くしておく必要があるが、これも脚を降ろしておくことで容易にすることができた。

 四人乗りの木金混成構造の複葉機で、ブリストル・ペガサスの単発。エンジンを推進式に配置しているのは、洋上での揚収時の取り扱いを考慮したものである。銃座は機首と後部胴体にあるが、それぞれ副操縦士と偵察員がかけもちで銃手を務める。

 原型機は1933年6月21日に初飛行し、1936年に海軍航空隊に制式採用された。
 35年から36年までソーンダーズ・ロウ(スーパーマリン)で製作されたMk.Iは216機生産(試作機含む)され、その後生産はサローに移り、性能はほとんど変わらないが艇体を金属製から木製に変更したMK.IIが44年までに461機製作された。

 戦艦、重巡洋艦、大型軽巡洋艦、空母(護衛空母含む)に搭載され、索敵/触接、弾着観測、陸上や他艦隊との秘密連絡、対潜哨戒に用いられた。
 艦載機分の数量はMk.Iでほぼ間に合ったし、大西洋での枢軸国水上艦艇の脅威が減り、且つ航空母艦戦力の充実を見た大戦中盤には英海軍主要大型水上戦闘艦の航空兵装は廃止されて対空火器を増備する傾向にあったために余剰機を生じたが、近海での洋上救難に非常に有用(救難機には水陸両用機という特性は極めて有利である)なことと、後継機のシーオッターの開発の遅れから、Mk.IIの生産は追加され、1944年まで続けられることとなった。
 爆弾架は当初装備されていなかったが、対潜哨戒任務に多用されるようになって、Mk.IIの中期頃から造り付けで装備されるようになり、Mk.I及びMk.IIの初期生産分にもリトロフィットされている。

 戦後は、民間に払い下げられた機体が、南氷洋で捕鯨船団から鯨の捜索の任務についたことがある。
 この試みはあまりうまくいかなかったが、英国人め、飛行機まで使って鯨採りをしていながら、今になって捕鯨に言掛かりをつけてくるとは、ふてえ野郎ドモだ…。

 戦前の1936年にMk.I(まだ制式採用前だったのでシーガルMk.Vとして)を6機トルコへ、また戦後に中古のMk.II 8機を無償でアルゼンチンへの輸出実績がある。

(文:まなかじ)



諸元(Mk.I)
全幅13.97m
全長11.46m
全高4.65m(地上姿勢)
翼面積56.7m2
自重2,230kg
全備重量3,261kg
最高速度217km/h(1,450m)
巡航速度153km/h
初期上昇率244m/min
上昇限度5,650m
航続距離965km
武装7.7oヴィッカーズK*2〜3 (後に爆弾または爆雷340kg)
発動機ブリストル・ペガサスII 空冷9気筒星型775馬力
乗員4

[戻る]