ブラックバーンB-24スキュア
 ホーカー・オスプレイの後継を求める、1934年発の艦隊航空隊用で急降下爆撃も可能な艦上複座戦闘機の要求仕様O.27/34に応えて設計された。
 アヴロ、ボールトン・ポール、ホーカー、ヴィッカースの各社が設計案を提出したが、全金属構造、引込脚、フラップ、可変ピッチプロペラと当時の最新技術をふんだんに盛り込んだブラックバーン案が採用となった。
 試作機の発注は1935年4月に出ているが、さすがに新機軸満載のせいか初飛行までには2年あまりかかり、1937年2月9日となった。
 とはいえ、一度飛んでしまうとその後の進展はすこぶる好調で、各種テストはほとんど問題なくパスしている。
 スキュアはあまり本格的な「艦爆」とは言いがたいものがあるが、とにかく「急降下爆撃ができる戦闘機」なのだという点は忘れてはならないだろう。
 SBDや九九艦爆が「空戦もできる急降下爆撃機」として作られていたところからすると、英海軍の艦爆に対する考え方は興味深い。
 試作機はもともとブリストル・マーキュリーIX(840馬力)を搭載していたが、このエンジンはブレニムとグラジェーターのために優先権が与えられており、スキュアとしてはブリストル・パーシュース(ペルセウス)XII(890馬力)へ換装することになった。
 このため、生産型はひとつしかないにもかかわらず型式番号はMk.IIとなっている。
 量産機は1938年10月から納入され、190機が生産されて1940年3月までに完納された。

 開戦初期にはかなりの活躍を見せ、39年9月26日には空母アークロイヤル搭載の第803飛行隊所属機がドルニエDo18を撃墜して第二次大戦におけるイギリス軍機としての初撃墜を果たす。
 40年4月10日には第800及び第803飛行隊のスキュア16機がスカパ・フローのハットストン基地から夜間出撃、払暁を衝いてベルゲン港のドイツ艦艇を奇襲、軽巡ケーニヒスベルクを撃沈、実戦において航空攻撃のみで軍艦を撃沈した初の事例を達成している。直撃3発、至近弾3発を記録、このうち、ノルウェー軍の海岸砲から受けた損傷部に近い位置への至近弾により浸水が増大し、直撃1発は艦の電源を止めて排水ポンプが働かなくなるという不運が重なった。
 この他に繋留していた桟橋に5発が命中しており、停泊中の目標とはいえ、爆撃精度は結果としてかなり高かった。第800、第803の両飛行隊は開戦以来哨戒任務と対潜攻撃の訓練ばかりで、この日の攻撃には夜間出撃、払暁攻撃、航続距離いっぱいという困難な条件が重なっていたこともあり、熟練搭乗員ばかりを選んで(その結果、第800は出撃5機に対して搭乗7組、第803は出撃11機に対して搭乗9組という混成チームを組んだ)出撃させた結果と思われる。それでも、報告によれば急降下接敵の角度、投弾高度はまちまちで、訓練不足は明らかであった。
 4月21日には地中海から急遽呼び戻されたアークロイヤルに第800と第801、グローリアスに第803が搭載されて即日スカパ・フローを出撃、早くも4月24日からノルウェー北部を転戦する。第803はグローリアスと共に保有機を海底送りにされ、ナルヴィク撤退とともに第801はフューリアスに転属、アークロイヤルはイタリア参戦を受けて地中海へと戻った。
 ダイナモ作戦(ダンケルク撤退)に際しては第806飛行隊と、臨時にフューリアスから展開していた第801飛行隊がダートリング基地から上空支援に出たが、さしたる戦果は挙げていない。
 アークロイヤルは第800飛行隊を載せたまま地中海に戻り、1940年中はイラストリアスの第806、アークロイヤルは第800、交替して第808、更に交替して第807、フォーミダブルは再編成った第803、そしてジブラルタルに展開する第805の各飛行隊がスクアを装備して活動した他、イーグルの第813(シーグラジェーター装備)に第806から数機が派遣されている。
 1941年中にはフルマーまたはシーハリケーンに任務を譲って引退し、「急降下爆撃もできる雷撃機」バラクーダの登場まで英海軍の急降下爆撃機の系譜は途切れることになる。
 その後は英軍お得意の標的曳航(笑)や、練習・連絡などの雑用任務に就いていた。

(文章:まなかじ)



諸元(Skua Mk.II)
全幅14.07m
全長10.85m
全高3.81m
翼面積28.98m2
自重2,090kg
離陸最大重量3,732kg
武装7.7mm機銃*5(翼内ブローニング*4 後席旋回ヴィッカースK*1) 227kg爆弾*1 14kg爆弾*8
発動機ブリストル・パーシュースXII 空冷星型9気筒 890馬力
最高速度362km/h(1,980m)
巡航速度266km/h(4,570m)
実用上昇限度6,160m
海面上昇率482m/min
航続距離1,223km
乗員2

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