フェアリー シーフォックス
別にフェアリー・フォックスという飛行機があるが、その水上機型というわけではなく、新規設計の機体である。
S11/32の仕様書に基づき、初飛行は1936年5月27日、制式採用は1937年で、生産は1938年までに64機、就役期間は1941年一杯と、水偵としては比較的短命な生涯であった。
本機は、英海軍の軽巡洋艦リアンダー級とアリシューザ(II)級、オーストラリア海軍のパース級、及び特設巡洋艦の搭載機として使用された。
要するに、ウォーラスを搭載するには航空兵装の規模が小さすぎる艦に搭載する、オスプレイ水上機の直接の後継機として開発されたもの。
複葉複座の比較的小型な双浮舟水上機で、鋼管と軽金属の骨組に、胴体はジュラルミンの薄板張り、翼と尾部は羽布張りの構成である。
エンジンはネイピア・レイピアYだが、このエンジンは空冷H型16気筒という構成である。
プロペラはデハビランド木製固定ピッチ(2翅)のものと、フェアリー金属製リード(3翅)のものがある。
操縦員席は解放式だが、偵察員席は密閉風防を備えている。
後方の防禦機銃は風防を開けずに、胴体上面の扉を開いて射撃するようになっている。なにがどうでも、偵察員を風に当てたくなかったらしい。
航続距離はわずか708kmであるから、索敵機としてよりも弾着観測機として使うつもりだったのだろう。巡航速度はかなり低いので、滞空時間はそれなりの数値になる。
弾着観測機といえば、シーフォックスの唯一の見せ場は、あのラプラタ沖海戦である。
ドイツのポケット戦艦アドミラル・グラフ・シュペーに対して遠距離砲戦を仕掛けたハーウッド戦隊は、旗艦エイジャックスから発艦したシーフォックスの弾着観測で砲撃を行なった。
また、シーフォックスは宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」にも出演している。
初めてのお届けものをする際に、キキがまずぐーんと高度を取る場面で、キキの下方を斜めに横切るオレンジ色に塗装された複葉水上機が、シーフォックスである。
(文章:ダリオ・マナカジーニ)
諸元
全幅 | 12.19m |
全長 | 10.82m |
全長 | 3.68m |
翼面積 | 40.3m2 |
自重 | 1,730kg |
全備重量 | 2,459kg |
最高速度 | 200km/h(1,785m) |
実用上昇限度 | 3,360m |
航続距離 | 708km |
エンジン | ネイピア・レイピアVI空冷H型16気筒395馬力 |
武装 | 7.7mmヴィッカーズK機銃*1(後席旋回) |
乗員 | 2名 |
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