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ウェストランド ライサンダー(Lysander) パラソル高翼の直協機

 ウェストランド・ライサンダーは 1935 年に「陸軍直接協力機」いわゆる直協機として設計され、1936 年 6 月 15 日に初飛行した機体です。下方視界を確保するためパラソル高翼とし、低速飛行性能確保のため主翼全長にわたる前縁スリットを備え、不整地でも運用できるよう頑丈な固定脚を持っていました。機体表面の大部分は羽布張りで外見は古臭いですが骨格は全金属製で、平面ガラスを多用した背の高い風防でコクピットは密閉式、三翅の可変ピッチプロペラを備えるなど意外とモダンな面も多い機体です。
 ライサンダーはこの他にも主脚カバー内に固定機銃を持っていたり、脚カバー外側には爆弾架が取り付けられたり、後部胴体下面というとんでもない位置にも爆弾架を持っていたり、胴体下面には増槽または貨物パックが装着できるなどイギリス機らしい妙なギミックにあふれた機体で、地上銃撃や爆撃などの機能も持ち高い汎用性を誇りました。しかし対するドイツのフィゼラー Fi.156 シュトルヒに比べると遥かに重く大柄で、本来の任務である直協・観測・連絡機としてはいささか使いにくい面があったのではないかと思われます。

 ライサンダーは当初の設計どおり直協機としても使われましたが、大戦初期に戦闘機に対する脆弱性を露呈したあと、その活躍は制空権が確保されている戦場に限られました。多くは戦線後方で哨戒・連絡・標的曳航などのいわゆる雑用機として地味な貢献をしています。また持ち前の STOL(短距離離着陸性能)を活かしてドイツ占領下のパルチザン(抗戦組織)への物資補給・人員輸送にも活躍しています。
(文・ささき)


緒元(Lysander III)
製作1935年
生産数1423(全タイプ合計)
乗員2
全幅50ft(15.24m)
全長30ft 6in(9.3m)
全高--
主翼面積260ft2(24.15m2)
乾燥重量4160LBs(1887Kg)
全備重量6016LBs(2729Kg)
武装7.7mm 機銃×2(脚カバー内)+7.7mm 機銃×2(後方旋回)
発動機ブリストル・マーキュリー XX 空冷9気筒 840hp
最高速度230mph(370Km/h) 高度 15000ft(4572m)
最低速度全備重量で 55mph(89Km/h)
実用上昇限度26000ft(7925m)
航続距離540ml(869Km)

ライサンダー サブタイプ一覧
サブタイプ生産数特徴
Lysander I169初期量産型
マーキュリー XII(890hp)
Lysander II517ペルセウス XII(905hp)エンジンに換装
Lysander III267マーキュリー XX(870hp)エンジンに換装
後部銃座が連装に強化
Lysander IIIA370マーキュリー 30(870hp)エンジンに換装
Lysander T.T.III170IIIA の非武装標的曳航型

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