そこで製作されたのが、このドンである。
1936年に要求仕様が出され、デハビランドは手っ取り早く1937年6月には初飛行にこぎつけた。
木金混成(木の割合多め)のデハビランド製機スタンダードな構成であるが、エンジンにジプシー・キングを採用しているあたりが目を引く。このエンジンは他には使われず、結局ドン専用エンジンとなってしまったというもので、95台しか作られていないというマイナー発動機である。
尾翼まわりもかなり安定性を意識したつくりで、このクラスの軽量機に動力銃塔を搭載する苦労を偲ばせる。
前席は並列複座、後席には電動駆動の鳥かご風の動力銃塔を持ち、操縦訓練の場合はここにも教官が座る。これで、銃塔を回しながら前席のパイロット訓練生にああでもないこうでもないと指図をたれるという寸法。訓練生一人に教官二人をつけるというのだから、英軍の気迫たるや凄まじい。
銃塔にも訓練生を配置して射撃訓練にも使う気はあったようだが、こちらはどちらかといえば添え物で、メインはパイロットの訓練にあった。
1937年中には既に生産機が部隊配備されるという急ぎようで、英空軍の気合のほどがわかるというものである。
しかし、1938年になって状況は一変、英国空軍は予算を潤沢にもらえるようになり、デファイアントでの訓練もできるようになった。
ドンも、まだ試作機も飛んでいない1936年に250機の発注を受けたものの、30機を納入したところでキャンセルされてしまう。
納入された30機も、後席の銃塔を潰して、連絡機として使用されることとなった。
とにもかくにも、英空軍の複座戦闘機にかける(なにかがまちがった)情熱に翻弄された機体であるといえる。

| 全幅 | 14.48m |
|---|---|
| 全長 | 11.38m |
| 全高 | 2.87m |
| 翼面積 | 28.24m2 |
| 自重 | 2,291kg |
| 全備重量 | 2,962kg |
| 武装 | 7.7mmヴィッカースK機銃*1(後席動力銃座) |
| 発動機 | デハビランド・ジプシー・キングI 液冷倒立V型12気筒 525馬力 |
| 最高速度 | 304km/h(2,667m) |
| 実用上昇限度 | 7,102m |
| 航続距離 | 1,432km |
| 乗員 | 3 |