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PZL P.7/11/24

 このシリーズの出発点となったのは、1929年にシグムント・プラウスキ技師の設計によって完成したP.1戦闘機である。
 極めて視界に優れたガル翼配置と、(当時としては)斬新な全金属構造、緊急時には投棄可能な胴体内燃料タンクを特徴とし、基本構造は最終型のP.24まで変更はされていない。

 P.1はイスパノスイザ12L水冷V型エンジンを装備していたが、いくつかの小改造を経て、P.2、P.6と進化したが、いずれも試作止まりに終っていた。
 ついにP.7に至ってブリストル・ジュピターVIIF(チェコのスコダがライセンス生産していたもの)空冷星型エンジンを得てほぼ完成型となり、ポーランド空軍の主力戦闘機として、150機の大量発注を受けた。
 1932年夏からポーランド空軍への配備が開始され、1933年中にはポーランドの第一線戦闘機隊は全てP.7への改変を終えていた。
 P.7の武装は7.7ミリのヴィッカーズクラスEを胴体両側面に1挺ずつの2挺である。
 1933年に全金属製の高性能単葉戦闘機を主力戦闘機として配備完了していた国は他になく、この当時、ポーランド空軍は世界最強空軍の最右翼を形成していたのである。

 更に、1931年には次期戦闘機であるP.11が進空しており、後継機の開発も万全であった。
 また、同時に試作されていたP.8及びP.9が液冷のロレーヌ・ディートリッヒ12Hペトレルを搭載、P.10がRRケストレルを搭載して試験されていたが、P.11が好成績のために中止に終っている。
 P.11は、基本的にP.7のエンジンを、ジュピターからPZLでライセンス生産したマーキュリーIV Sに強化して、主翼面積と方向舵面積を増積したマイナーチェンジ版である。
 試作機(P.11I)はP.6の試作機を更に改造して作られたが、この機体はまだジュピターを搭載していた。この結果を踏まえ、本命のマーキュリーIV Sを搭載した試作2号機(P.11II)、更に試作3号機(P.11III)を経て、量産機P.11aが50機発注された。
 P.7に比べて速度は60km/h(!)ほども速くなり、P.7でもすでに評判の高かった上昇力も更に増して、同時代のI-15やCR32と並ぶ欧州最強戦闘機の一つとなった。
 もちろん、He51やAr68などは敵ではなく、Bf109といえどもB/C/D型あたりでは圧倒的性能差といえるだけの優位は持っていないのである。
 主要生産型は操縦席後方の胴体断面形を楕円形からだるま型にして更に後方視界の改善を図り、エンジンをマーキュリーVI S2に強化、更に武装を7.92ミリPWU wz.36機銃を4挺(翼内*2 胴体両側面*2)と大幅増強したP.11cで、1935年から36年までに175機が生産された。

 しかし、あまりの傑作機は後継機登場の遅れを招くというのは世の倣いというもので、ポーランド空軍の開戦時の戦闘機兵力はP.11cが85%を占めており、しかも残りの部分はそれより旧いP.11aとP.7という編制になっていた。
 九五〜九六式にあたり、しかも原型は九一式という旧式戦闘機を主力装備としたまま、膨張するドイツ空軍に対して数的戦力においても劣位な状態で1939年9月を迎えることになってしまう。
 後継機P.50の完成が遅れ、しかも試作機が低性能のため、つなぎとしてP.11cの発動機をマーキュリーVIIIに換装したP.11gが急遽準備され、ドイツ軍侵攻時には生産ラインの切換が終了して量産を開始するばかりのところにまできていたが、結局P.11gは部隊配備には至っていない。
 P.11gは「コブジ」という愛称がつけられる予定であった。
 ポーランド空軍戦闘機隊は激しく反撃し、空中戦でドイツ空軍に機数でほぼ同等の被害を与えはした。短い交戦期間に幾人かのエースを生み出しさえしている。
 しかし、数と総合戦力に上回るドイツ空軍に押し切られ、東からのソ連軍の侵入を受けてポーランド空軍は崩壊した。

 P.11はルーマニアに輸出され、これはP.11bと呼ばれる。グノームローン9Kミストラルを装備しているP.11a仕様機で、50機が輸出された。
 また、IARが製造権を購入しており、これはP.11fと呼ばれる。こちらは同じくミストラルを搭載しているが、P.11c仕様機で、1936年から1938年にかけて80機を製作した。

 P.24は輸出専用のタイプで、ポーランド軍には就役していない。
 デフォルトではフランス製のグノームローン14N7を装備しているが、ルーマニア空軍機はIARでライセンスされたグノームローン14Kを装備しているし、トルコ向けの機体は、現地でフィアットA74に換装されたものがある。
 もうこのあたりになるとこの形式の限界に達しており、940馬力のエンジンを装備して408km/hしか出ない。
 かなりの重武装で、イスパノスイザかエリコンの20mm機関砲*2と、ヴィッカース7.7mm*2を装備、50kg爆弾*2または100kg爆弾*1を搭載できる。
 トルコはP.24A 14機、P.24C 26機を購入し、P.24A 20機をノックダウン方式で組み立てた。この他P.24G 1機を見本として購入している。
 ブルガリアはP.24B 14機、P.24F 26機を購入。
 ギリシアはP.24Fを25機、P.24G 6機を購入。
 ルーマニアはP.24Eを6機購入し、製造権を買ってIARで24機を製作した。
 また、この他、グノームローン14N01を搭載したP.24Jの試作機が各国に見本として譲渡されている。
 
(文章:ダリオ・マナカジーニ)


諸元
P.7aP.11cP.24F
全幅10.57m10.72m10.70m
全長6.98m(7.46mとする資料もあり)7.55m7.60m
全高2.74m2.85m2.70m
翼面積17.90m217.90m217.90m2
自重1,090kg1,150kg1,330kg
全備重量1,470kg1,630kg2,000kg
最高速度327km/h(5,000m)390km/h(5,000m)430km/h(4,490m)
実用上昇限度8,500m9,000m10,500m
航続距離650km700km700km
初期上昇率800m/min
武装7.7mmヴィッカーズE機銃*27.92mmPWU wz.36機銃*420mmエリコンFF機関砲*2 7.7mmヴィッカーズE機銃*2
発動機スコダ・ジュピターVIIF 空冷星型9気筒 485馬力PZL・マーキュリーVIS2 空冷星型9気筒 645馬力グノームローン14N07 空冷星型14気筒 970馬力
乗員1名同じ同じ

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