プロペラ軸内から発射する機関砲、モーターキャノンの実用化をめざし試作された戦闘機。 昭和10年9月、フランスから輸入したドボアチンD-510に搭載 されていたプロペラ軸内から発射する20oモーターキャノンに着目 した日本陸軍は、その搭載が可能なエンジンであるイスパノスイザ12Xcrを 搭載した戦闘機の試作を中島飛行機に依頼した。 中島ではフランスから2名の技師を招へいし、森重信技師を 設計主務者として、低翼単葉・引込脚の機体としてまとめ上げた。 実機は昭和11年10月にドボアチンD-513に似た形で完成。 しかし、テストの結果、同時期に試作されていたキ27、キ28、キ33に、 陸軍が重視する旋回性の面で劣り、1機のみの試作で終わった。 形態的には、前述した3機の試作戦闘機がいずれも固定脚を採用していた のと対照的に尾輪を含め引込脚とし、直線テーパ翼にスプリット・フラップを 装備するなど、この当時としてはかなり進歩的な設計でしたが、旋回性が 劣ったうえ、最大速度も他の3機種とさほど変わらないというものになったため 不採用もやむをえないものでしてた。ただ、この時点で単発戦闘機に20o機関砲 の装備を考えていたことは特筆に値し、なぜ、この発想をそのまま進展させて、 重戦として試作されたキ44(2式単戦)にその装備を考えなかったのかと、 悔やまれてなりません。このあたりにも日本陸軍の機種選定に対する統一見解の 無さがかいま見えます。 |
諸元 | |
全幅(m) | 12.00 |
全長(m) | 8.50 |
全高(m) | 3.30 |
主翼面積(u) | 17.0 |
自重(s) | 1,400 |
全備重量(s) | 1,900 |
エンジン |
イスパノスイザ「12Xcr」 液冷V型12気筒 670馬力 |
プロペラ | 金属固定ピッチ3翅、直径2.90m |
最大速度 | 480Km/h |
航続距離 | 800q |
上昇時間 | 5,000mまで6分30秒 |
実用上昇限度 | 10,500m |
武装 |
20oモーターキャノン×1, 7.7o×2(主翼) |