カント Z.1011
 Z.1011は1934年に出された単葉引込脚の高速双発爆撃機の要求仕様に基いて試作された。この仕様ではカント、ブレダ、CMASA、フィアット、カプロニ・ベルガマスキ、ピアッジオの6社が設計案を応募している。
 設計はフィリッポ・ザッパータが担当した。ザッパータ得意の全木製構造で作られた、双尾翼の低翼機である。3人乗りの高速爆撃機として作られ、防御武装は背面の旋回銃座に1挺、両翼付根に前方固定の2挺、合計わずか3挺の7.7ミリ機銃を持つのみである。もっとも、この頃に設計された単葉爆撃機としては特に貧弱というほどではないが。
 設計案は1935年に空軍の承認を受け、試作機12機の発注が契約された。(後に6機に縮小)
 試作1号機(MM.20541)は当初は空冷星型のグノームローンK14 RCを装着して完成し、1936年3月2日にマリオ・ストッパーニの操縦で初飛行したが、性能が予定した値に達せず、発動機を液冷のイソッタ=フラスキーニ・アッソXI RC40に換装し、翼幅も約3メートル増して28.05メートルとされることとなった。
 しかし、改良後もこの競作のライバルであるフィアットBR.20やカプロニ・ベルガマスキCa.135には性能面で及ばず、ピアッジオP.32のような特色も持たなかったZ.1011はあえなく落選となった。
 製作された6機は爆撃/航法学校で練習機として使用された。また、ピアッジオXI RC40を装着した高高度飛行実験機に改造するという計画もあったが、結局これは専用のピアッジオP.111を開発することに落ち着き、話は立ち消えになった。

(文章:ダリオ・マナカジーニ)


空冷発動機装備の試作1号機。

手前に写っているのはZ.1007の試作機です。

胴体下部に垂下銃塔を追加した機体。

諸元(試作1号機)
全幅28.05m(当初は25.00m)
全長17.50m
全高5.25m
自重6,700kg
全備重量8,800kg
武装7.7mmブレダSAFAT機銃*3 爆弾1000kg
発動機イソッタ=フラスキーニ・アッソXI RC40 液冷V型12気筒 840馬力
(当初はグノームローンK.14 RC 空冷星型14気筒 950馬力)
最大速度370km/h
巡航速度326km/h
実用上昇限度7,900m
航続距離2,000km
乗員3名

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