サヴォイア・マルケッティ社では1934年のマックロバートソン・レース(ロンドン〜メルボルン間)に向けた多発機レーサーとしてSM.79の開発を開始した。
結局、マックロバートソンには間に合わず、初飛行は1934年10月になったものの、試作1号機(I-MAGO)はピアッジオ・ステラP.IX RC2(610馬力)を搭載して完成し、1935年6月にはミラノ〜ローマ間でのタイムを更新、更にはアルファ・ロメオ125 RC35(750馬力)に換装して、各種荷重を積載しての1000km、2000km周回コースでの記録を軒並み総なめとするなど、目覚しい活躍を見せた。
民間型SM.79には、レース専用のSM.79C、大西洋横断航路向け8座席の旅客機SM.79T、双発型の原型機SM.79Bなどがあり、これらの開発は同時に並行して進められていた。
しかしながら、試作2号機は早くも高速爆撃機として作られて試験にとりかかっており、レジア・アエロナウティカ向けの軍用機としても開発は並行して進んでいた。
1937年はSM.79にとって栄光の年となり、軍用型SM.79Iがスペイン戦争に出征してデビューを飾れば、SM.79CS(軍用型から改造のC仕様)6機をイストル〜ダマスカス〜パリ間連絡レースに参加させ、ワンツースリーを独占し、更に6位と8位にも入賞(1機リタイヤ)させた。特に第4位はもともと本機が狙っていたマックロバートソンの勝者、デハビランドDH88コメット(G-ACSS)「グロブナー・ハウス」であり、参加を逸した仇を見事に討ち果たしたのである。
スペイン戦争ではSM.79は両陣営に参加した爆撃機の中でも最優秀を争うもので、空中戦での損失ゼロという恐るべき成果を見せた。これにはイタリア空軍としても大いに自信を深めることとなり、本来の計画では主力爆撃機となるはずであったBR.20を押さえて、イタリアの次期主力爆撃機の地位にのし上がることになる。
なお、スペイン戦に参加して残った約80機のSM.79はそのままフランコ軍に供与された。
1940年6月の開戦時には、エンジンを強化したSM.79II(ピアッジオP.XI RC40 1000馬力)も登場してきており、レジア・アエロナウティカの在籍機594機、実働575機、空軍爆撃機兵力の約3分の2がSM.79で固められていた。
もっとも、IIは基本性能こそIに比べて向上してはいるが、エンジンの信頼性の面ではやや問題があったとされる。
また、雷撃機としてもイタリア軍の各種爆撃機で試験した結果、最も成績が良く、雷撃部隊が創設されるとSM.79で装備されるようになった。
のちにSM.84が登場してきても、SM.84の低性能のためSM.79は引退できず、それどころか更にSM.79IIIに発展せざるを得なくなった。
全体にはサヴォイア・マルケッティ社スタンダードの木金合成構造、全木製低翼単葉という構造法で、胴体後部は羽布張り。
機銃は「額」の前方固定機銃と、背面後上方向けの旋回銃、胴体底部後下方向けの旋回銃が12.7ミリ、胴体側面の旋回銃は左右両面を1挺の7.7ミリで賄う。
後には胴体側面も12.7ミリとなり、SM.79IIIでは敵艦の高角機銃を制圧することを目的として「額」の固定銃を20ミリに強化している。
SM.79IIIは1942年末に登場を始め、胴体内に700リットルの燃料タンクを増設、エンジンをアルファ・ロメオ128 RC18(860馬力)に強化し、更にこれにエタノール噴射(制限時間20分)を追加することで緊急出力900馬力以上を得ることができ、その場合の速度は480〜485km/hに達した。とはいうものの、これを使用するとエンジンの磨耗が激しく、稼働率を大幅に下げることとなった。
代替エンジンとしてはフィアットA80 RC41空冷星型18気筒1030馬力、アルファ・ロメオ135 RC32空冷星型14気筒1350馬力も装着されたものもあるが、極めて少ない。
また、この頃には夜間攻撃が主用されるようになっており、消炎排気管が標準装備となっている。(もちろん、生き残りのIIにも装着されていた)
SM.79はイタリア空軍のシリアル(MMナンバー)を与えられているだけで、試作機1機を含む各型合計1218機が1936年から1943年までに製作された。長い生産期間に55ものロットに細分されて発注されている。
休戦時の残存数はわずか61機となっていたが、このうちの34機が共同交戦空軍に参加している。
では、ANRの使用機は差し引き27機しかなかったかというとそうでもなく、サヴォイア・マルケッティ工場からはなお十数機がANRに渡ったらしい。
共同交戦空軍では輸送機としてのみ使用されたが、ANRではなお終戦まで雷撃機として使用された。
輸出実績としては三発型SM.79Iをユーゴスラビアに45機、双発型SM.79Bをイラクに4機(アルファ・ロメオ128 RC18)、ブラジルに4機(フィアットA80 RC41)、ルーマニアに24機(グノームローン14Kミストラルマヨール)があり、ルーマニアでは更に発動機をJumo211Daに換装したタイプ(S.79JR:JRはJunkers-Romaniaの意)を8機購入した。
更にS.79JRはライセンスを取得してIARで100機以上が量産され、同空軍の主力爆撃機として使用された。
SM.79I | SM.79III | SM.79JR | |
全幅 | 21.20m | 同じ(21.18mの資料あり) | 同じ |
全長 | 15.80m | 16.20m | 16.10m |
全高 | 4.61m | 4.60m | 4.40m |
翼面積 | 61.71m2 | 61.70m2(61.00m2の資料あり) | |
自重 | 6,950kg | 7,700kg | 7,195kg |
全備重量 | 10,500kg | 11,400kg | 10,471kg |
武装 | 12.7mmブレダSAFAT機銃*3 7.7mmブレダSAFAT機銃*1 爆弾最大1250kgまたは魚雷1本 | 20mmMG151/20機銃*1 12.7mmブレダSAFAT機銃*3 魚雷2本 | 7.7mmブレダSAFAT機銃*5 爆弾1200kg |
発動機 | アルファ・ロメオ126 RC34 空冷星型9気筒 780馬力 | アルファ・ロメオ128 RC18 空冷星型14気筒 860馬力 | ユンカースJumo211Da 液冷倒立V型12気筒 1220馬力 |
最高速度 | 430km/h(4,000m) | 475km/h(3,000m) | 444km/h |
巡航速度 | 340km/h | 370km/h | |
実用上昇限度 | 6,500m | 7,000m | 7,400m |
航続距離 | 1,900km(フェリー:3,300km) | 2,300km(フェリー:2,800km) | 1,900km |
乗員 | 4〜5名 | 4名 | 5名 |