サヴォイア・マルケッティ SM.66
 SM.66は双胴の三発大型旅客飛行艇である。
 設計の基礎となったのは有名な双発双胴飛行艇S.55で、これの拡大版と言ってよい。
 全長はほとんど変らないものの、主翼スパンは9メートルほども大きくなり、客席はよりゆったりと作ってあったにもかかわらず、人数は5〜7名増している。
 また、艇体底面は1920年代のイタリア艇に特徴的なアーチ状断面から、コンベンショナルなV字チャイン断面に変更されている。
 乗員は主副操縦士と航法士の3名で、副操縦士はスチュワードを兼任する。操縦席は両艇体の中央、エンジン下部の中央翼に位置し、翼内の通路を通って客室に連絡している。
 原型機は550馬力のフィアットA22 Rと3翅プロペラを装着して1932年に初飛行したが、これはやや出力不足で、4翅プロペラつきの750馬力フィアットA24 Rに換装された。結果は満足すべきものとなり、まず3機がアエロ・エスプレッソ航空からの発注を受けた。
 その後も順調に売れ、SANA航空が4機、国営アラ・リットリア航空が23機、SAM航空が7機を購入している。原型機を含め、合計38機が製作された。
 1933年〜1934年にかけて地中海越えのブラッチァーノ〜チュニス、トリポリ間、1937年からはブリンディジ〜アテネ、アレキサンドリア、ロードス島間の各路線に投入された。
 本機は頑丈で、また整備性も良かったため長寿命で、1940年の開戦時にもなお20機ほどが現役旅客機として就航していたが、開戦に伴い全機が海軍に徴用されて海上救難機として使用された。
 とはいえ老朽機でもあり、軍用任務に就くと半年ほどで急速にくたびれ、1940年いっぱいで各機とも用途廃止となって引退している。

(文章:ダリオ・マナカジーニ)


着水滑走中のSM.66です。長大な主翼がよくわかります。

推力線は離水に有利なように仰角がつけられています。

諸元
全幅33.00m
全長16.63m
全高4.89m
翼面積126.70m2
自重7,450kg
全備重量10,930kg
武装なし(徴用後は7.7mmブレダSAFAT機銃*2)
発動機フィアットA24 R 液冷V型12気筒 750馬力
最大速度264km/h
巡航速度222〜234km/h
実用上昇限度5,630m
航続距離1,290km
乗員3名 乗客14〜18名(徴用後は7名)

[戻る]