ピアッジオP.111
 イタリア空軍は1938年に高高度高速双発爆撃機の仕様を策定した。
 この計画に対してはピアッジオに一社特命というかたちで試作が命ぜられ、ピアッジオではP.108の設計者として知られるジョバンニ・カシラギ技師を設計主任として試作にあたった。
 全金属構造の双発低翼単葉機で、特に高高度飛行を考慮して操縦席を与圧し、発動機は二段過給器つきの特製機であるピアッジオP.XII RC100/2/Vを装着していた。
 計画は中途で変更され、実戦機の原型から、将来予定されるP.108の高高度型に備える研究機という位置付けに変った。
 試作機は1機のみ製作され、1941年4月9日にニッコロ・ラーナの操縦で初飛行を果たした。
 伝えられる性能はなかなかのもので、高度1万メートルでの最大速度は570km/hを超え、与圧操縦席も概ね良好な成績を挙げた。
 1943年初めまでにギドニア実験場を基地として百数十回にわたる試験飛行を実施し、貴重なデータを多量に収集したが、結局それはイタリアの戦争遂行の役には立たなかった。
 休戦時には機体は飛行不能状態でギドニアの格納庫にあり、そのまま廃棄処分となった。
 エンジンが量産機ではなく、また過給器の調整や取扱いにも細心の注意が必要だったとはいえ、高高度偵察機への転用が考えられなかったのは惜しまれるところだろう。
(文章:ダリオ・マナカジーニ)


いかにもナセルストールを起こしそうなエンジンナセルの配置ですが、そのへんは大丈夫だったのでしょうか?(ぉ

諸元
全幅17.30m
全長12.40m
全高不明
翼面積40.00m2
自重2,340kg
全備重量5,250kg
離陸最大重量7,590kg
武装なし
発動機ピアッジオP.XII RC100/2/V 空冷星型14気筒 1000馬力
最高速度575km/h(10,000m)
巡航速度450km/h
実用上昇限度12,000m
航続距離1,600km(推算値)
乗員3名

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