フィアットG55
イタリアは理論に於いても機体製作に於いても航空先進国の一国であり、ようやく国際水準に近づいた日本とは事情が異なる点がいくつか存在する。
高性能液冷エンジンの生産もその一つであり、日本が苦労の果てに諦めたDB600系エンジンの発展型であるDB605を比較的容易に生産に移している。
問題はそのエンジンを搭載する機体であった。既に前世代にR計画として各社に並行して機体を発注していた為に、ベースとなる機体はマッキにもレジアーネにもそしてフィアットにも存在していたが、機体設計も古く、フィアットG50にDB605Aを搭載したG50V(ヴェローチェ=速い、ということであろうか)は不採用に終わり、機体は新規設計によることとなり、G55として試作されることとなった。
エンジンが一流であるために、性能もそこそこで、最大速度630km/hを記録する高速戦闘機として完成し、期待がかけられたが、生産は遅々として進まず、試作機を含めて30機程度がイタリア降伏以前に完成し実戦に投入された。降伏後はドイツ側で百機以上が生産されたとされるが、詳細は不明であり、活動もまた低調なものであった。
また、G55は機体強度が高く、魚雷を搭載したG55Sが企画されたことも注目に値する。更に、DB603を搭載したG56も試作され、最大速度685km/hを発揮し、更に戦後にはイスパノスイザ12Z89エンジンを搭載したG59も生産されている。
まさに戦闘機はエンジン次第であることが身に浸みるG55の物語ではあるものの、それならば何故、機体も一緒にドイツから導入しなかったのか、と言う問題も、ひとつ考察に値するのではないだろうか。
(文章:キソッタ・ホラスキーニ)
諸元
全幅 | 11.85m |
全長 | 9.37m |
全備重量 | 3,700kg |
武装 | 12.7mm 機銃*2 爆弾 320kg |
発動機 | フィアットRAC1050RC 1475馬力 |
最高速度 | 630km/h |
実用上昇限度 | 12,700m |
航続距離 | 1,200km |
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