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カプロニ・ヴィッツォーラF.4/5/6

 1936年、イタリア空軍の新型引込脚全金属製単座単葉戦闘機(…長すぎ)のコンペティションである、R計画に応募した作品の一つ。
 マッキMC200や、フィアットG50と同世代ということになる。

 計画責任者はファブリツィでF.4の主務者を兼ね(型式の「F」はFabriziのF)、F.5がリパルベッリである。また、両機の共通部分(主翼や脚など)はイタロ・バルデッサーリが責任者になっていた。
 R計画の仕様は、一応、全金属製機という条件であったのだが、F.4/5は、胴体や尾翼こそ金属製セミモノコックであるが、主翼は木製であった。片持低翼単葉で、細めで形のいい楕円翼である。
 主脚は内方引込の一般的な構成で、G50やMC200とちがって車輪は片持式に支持される。尾輪は完全引込。
 F.4とF.5は同じ機体を用いて、装備エンジンを違えるという方法で並行して開発されるはずであったが、設計が進むうちに共通部分は部品レベルでしか確保できなくなってしまった。

 F.4は、当初イゾッタ=フラスキーニ・アッソ121RC40(液冷V型12気筒)890馬力の装備を予定していたが、ドイツからのDB601Aの輸入を待ってそれを装備することに改められたため、国産空冷エンジン装備のF.5が先に進空することとなった。
 試作機の完成は1940年の暮れになった。初飛行はマッキMC.72で有名なフランチェスコ・アジェロが行なったが、試験飛行を繰り返すうちに、今度はDB605の輸入にあわせてF.6の開発に移行することになって、計画は中止されてしまった。

 F.5は、フィアットA74RC38(空冷星型14気筒)870馬力を装備し、最大速度510km/h(3000m) 上昇時間は6500mまで6分30秒と、MC200に匹敵する好性能を発揮した。
 これにより、増加試作機が11機、発注・製作されたが、結局制式採用とはならなかった。とはいえ、製造された11機は空軍に納入され、ローマ地区の防空戦闘機隊に配備された。この増加試作機は、垂直尾翼と方向舵を一号機よりも増積しており、尾輪は半引込式になっている。

 F.6は、主務者がグリエルモ・ネグリとなり、F.4の一号機を改造して試作機が作られ、二号機は主翼も全金属構造としてF.6Mと呼称された。
 F.6Mは主翼を改めるとともに翼内機銃を増設しており、また計画では翼内機銃をMG151/20に強化することも考慮されていた。
 1941年にカルロ・アントネッリの操縦で初飛行を果たしたが、F.6Mは「セリエ・5」の他の機体(MC205やG55、Re2005)に性能面で及ばず、またしても制式採用とはならなかった。
 1942年になって、供給量が限られていて「競争率が高い」DB605(あるいは国産FIAT「ティフォーネ」)を諦め、イゾッタ=フラスキーニ・ゼータを搭載し、更に主翼を改設計したF.6Zが計画された。
 イゾッタ=フラスキーニ・ゼータRC25/60は定格1250馬力であるが緊急時最大出力は1500馬力に達した。
 F.6Zの試作機は1機が作られ、1943年にアントニオ・モダの操縦で初飛行した。テストでは最大速度640km/hをマークしたが、発動機の生産が順調でなく、また戦況逼迫の度が高くなっており、結局採用に至らないままに休戦を迎えてしまった。

 F.4、F.5ともに運動性に優れ、高空性能ではMC200やMC202を上回る面もあり、全体に優れた戦闘機の素質を有していたが、開発元のカプロニ・ヴィッツォーラはカプロニ飛行学校を改組して作られた会社のため、生産設備が貧弱で、大量発注に対応できなかったことが最大の敗因と思われる。

(文章:ダリオ・マナカジーニ)


諸元
F.4F.5F.6MF.6Z
全幅11.35m11.30m11.35m11.82m
全長9.15m7.90m9.15m9.25m
全高3.02m3.00m3.02m3.02m
翼面積18.81m217.6m218.81m218.50m2
自重2,462kg1,850kg2,265kg1,818kg(装備なし乾燥重量)
全備重量3,000kg(離陸最大)2,350kg2,885kg2,238kg(2,890kg:離陸最大)
武装ブレダSAFAT 12.7mm機銃*2同じブレダSAFAT 12.7mm機銃*4同じ
発動機ダイムラーベンツDB601A液冷倒立V型12気筒 1175馬力フィアットA74RC38空冷星型14気筒 870馬力ダイムラーベンツDB605A液冷倒立V型12気筒 1475馬力イゾッタ=フラスキーニ・ゼータRC25/60液冷X型24気筒 1250馬力
最高速度550km/h510km/h(3,000m)570km/h(5,000m)640km/h
実用上昇限度10,300m9,500m10,300m8,000m
上昇時間6,500mまで6分30秒
航続距離950km770km950km1,100km

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