フィアットCR32
フィアットのCR30に続く複葉戦闘機。軽快で運動性に優れたと評される機体ではあるが、1930年代の各国複葉戦闘機を見回して運動性に劣った例は極めて少なく、本質を言い当てているとは言い難い。その好評が仇となり、イタリア戦闘機の進化の足を引っ張ったが如く語られるCR32は、1931年に設計が始まり、1933年に初飛行した機体で、イメージしやすい日本機で言えば、ちょうど九二式二型戦闘機が600馬力の同クラスエンジンを搭載したライバル機とも考えられる。
フィアットCR32はこの同クラスエンジンを積んだドイツ人、フォークト博士設計のこの日本陸軍戦闘機より遙かに高速で、当時としてはなかなかの快速戦闘機だったことは否定できない。また、1930年代の戦闘機はあのMe109Bでさえ7.92mm二挺であったことを考えると重武装ですらある。更に後期型では両翼に7.7mm各一挺を増設しているのだから、最早我が飛燕一型甲と同等となる。当時欧州を視察して歩いた日本の航空調査団もこの戦闘機を見て大いに参考としたはずである。ただ、その俊足が仇となり、なかなか用途廃止とはならず改良が続けられ、一部は悲劇的にも第二次世界大戦にイタリアが参戦した後にさえ戦闘機として使用された。
CR32は登場した時点では名機だったが、仮にあと20km/h最高速度が低かったとしても、名機とは評されないだろうが活躍は同等だったに違いない。そしてきっと適当な引退の時期を得ることが出来たに違いない。
(文章:キソッタ・ホラスキーニ)
諸元
全幅 | 9.5m |
全長 | 7.45m |
全備重量 | 1,850kg |
武装 | 12.7mm 機銃*2 |
発動機 | フィアットA30RA bis 600馬力 |
最高速度 | 375km/h |
実用上昇限度 | 8,800m |
航続距離 | 680km |
[戻る]