CR.20はチェレスティーノ・ロザテッリ技師の出世作となった機体で、1925年のイタリア空軍次期戦闘機の仕様書に基くものである。
この仕様書は新型のフィアットA20発動機を中心とするもので、フィアットとしては自社製エンジン搭載という有利な立場にあった。
また、ロザテッリは前作CR.1の性能向上案のひとつとして、A20の試作発動機をCR.1に搭載したCR.10を既に手掛けていた。
CR.20の試作にあたっては、鋼管骨組に軽金属又は羽布張りという全般構造は継承しているものの、CR.1の逆一葉半(下翼の方が大きい)から一転して通常のセスキプランとした。
試作機は4機が製作され、1号機の初飛行は1926年6月19日にトリノのフィアット社有飛行場から行われた。試作機は7.7mm機銃4挺の強武装でパリ航空サロンでの話題をさらったが、結局標準的な2挺装備で落ち着いた。
審査の結果は予想通りフィアットの圧勝に終わり、量産機は1927年から流れはじめ、1930年までに250機あまりが生産された。この型はリトアニアが1928年に15機、ハンガリーが1機を購入している。
また、水上戦闘機型であるCR.20「イドロ」はCMASAとマッキで合計46機が製作された。但し、このタイプはカタログ性能的にはフロートの負担をあまり感じさせないのだが、飛行特性の面ではかなり悪化しており、特に宙返りの頂点で失速して背面降下に陥る癖が問題視されていた。
結局、水上戦闘機としてはその後のCR.20の発展に伴うかたちで、発動機をA20AQ及びアッソ・カッチアとした試作機が1機ずつ作られたが、いずれも生産には入らなかった。
CR.20は実用された結果、脚構造が脆弱で、特にゴム製ショックアブソーバーの能力に不足があることがわかり、1928年に油気圧式オレオと車輪ブレーキを組み込み、また空気抵抗も減少させた新型の脚を装着したCR.20bisが製作された。
審査の結果、この脚は成績良好と認められ、1930年から1932年までに235機が製作された。また、CR.20bisは1931年の生産分からA20発動機の補機類を改正したA20 AQを搭載して生産されており、この中〜後期生産分をCR.20bisAQとして区別することもある。
CR.20bisAQは従来の型よりもエンジンの吹上がりと頑張りが利き、上昇率と高高度性能でやや勝っていた。
CR.20bisはハンガリーに12機、オーストリアに16機、パラグアイに6機が売れ、CR.20bisAQはやはりオーストリアが16機を購入している。
このうち、オーストリア機はドイツとの併合後はしばらくルフトヴァッフェで練習機として使用されていた。また、パラグアイ空軍機はボリビアとの間で1932年〜35年まで戦われたグラン・チャコ戦争で実戦に投入されている。
また、エンジン換装機としてはAQと同じく1931年に登場したCR.20「アッソ」があり、エンジンをイソッタ=フラスキーニ・アッソ・カッチアに換装し、水平安定板とエルロンの面積をそれぞれ増している。
CR.20「アッソ」は各型の中でも中低空での加速と運動性に優れ、優美な機首形状もあってイタリア空軍パイロットに好まれた。また、アニメ映画「紅の豚」に登場するイタリア空軍の戦闘機はこれである。
CR.20「アッソ」はイタリア空軍専用型で、輸出はない。このタイプはCMASAとマッキで製作され、CMASAが100機、マッキが104機の合計204機を1933年まで生産した。
この他、複座練習機型としてCR.20またはCR.20bisを改造したCR.20Bと呼ばれる機体が少数作られており、ハンガリーに1機、オーストリアに4機、それぞれ輸出もされた。
イタリア空軍ではCR.20bisAQ及びCR.20「アッソ」はリビア戦役(サヌーシー戦争)とエチオピア戦役に参加しているが、どちらの戦いにも敵に空軍戦力がなかったので地上攻撃機として使われ、その優れた空戦性能を生かす機会は訪れなかった。
とはいえ、空軍曲技チームの使用機としてもCR.20bisとCR.20「アッソ」が使われており、ここでは無類の運動性を遺憾なく発揮した。
CR.30及びCR.32と交代して一線を退くと、CR.20は曲技練習機や練習戦闘機として飛行学校に移り、1938〜1939年頃まで活躍を続けた。
CR.20bis | CR.20"Idro" | CR.20"Asso" | |
全幅 | 9.80m | 同じ | 同じ |
全長 | 6.71m | 不明 | 6.70m |
全高 | 2.79m | 不明 | 2.75m |
翼面積 | 25.50m2 | 同じ | 25.65m2 |
自重 | 970kg | 1,030kg | 1,067kg |
全備重量 | 1,390kg | 1,390kg | 1,487kg |
武装 | 7.7mmヴィッカース機銃*2 | 同じ | 同じ |
発動機 | フィアットA20 AQ 水冷V型12気筒 410馬力 | フィアットA20 水冷V型12気筒 410馬力 | イソッタ=フラスキーニ・アッソ・カッチア 水冷V型12気筒 450馬力 |
最高速度 | 276km/h | 254km/h | 270km/h |
実用上昇限度 | 8,500m | 6,100m | 5,000m |
航続距離 | 600km | 580km | 570km |
乗員 | 1名 | 同じ | 同じ |