1934年に初飛行したブレダBa.64多用途軍用機の近代化改修版として、同年にイタリア空軍がブレダに発注したものである。
ブレダではBa.64の設計を担当したアントニオ・パラーノ、ジュゼッペ・パンツァーリの両技師を据えて計画に取り組んだ。
全般的な線図や鋼管骨組みの構成はBa.64を引き継いだが、胴体・主翼とも羽布混在から動翼を除く全外被が軽金属に変わり、操縦席は単座の密閉風防となった。また、主翼にハンドレー・ページ式自動前縁スラットがついた。
作業はかなりのハイペースで進み、1935年9月にはエンジンにイゾッタ・フラスキーニ(グノームローヌ)K14をつけた原型機(MM.325)が初飛行している。
機銃装備はBa.64と同じである。弾数は翼内12.7ミリ各銃350発、7.7ミリは各銃550発となっている。
爆弾倉容量は300kgまでに増強され、翼下爆弾架4つとあわせて、理論的には最大1トンを搭載できるが、これで飛び立つには乗員を1名とし、燃料もかなり減らし、しかもかなり長い滑走距離を必要とした。よって、通常は500kg以内の搭載量で運用されていた。
Ba.65は1936年に制式採用となり、81機が発注された。これらは原型機と同じく単座機として完成したが、後になって複座機に改修されている。複座改修型の中には12.7ミリ機銃付きのブレダL銃塔を装備したものもあるが、イタリア空軍では銃塔装備は重量・空気抵抗が過大であるとしてごく少数を採用したのみである。
1937年には13機がスペイン戦争に出動中の第65スクァドリッリアに供給され、8月からサンタンデル、テルエル、エブロ河の各会戦を転戦したが、中でもエブロ河では3機の攻撃で橋梁に爆弾を全弾命中させ、橋梁を完全破壊して共和国側の増援を断つという大戦果を挙げた。しかし、これはまぐれ当たりか、さもなくばよほどの名手が操っていたものであろう。
もともと操縦性は良いとは言えないところへもってきて、武装を搭載すると操縦桿から手を離すことができないほどに不安定となる他、これまたただでさえ高くない最大速度も40〜50km/hほど落ち、全開でクリーン時の巡航速度程度となる。爆装時の実際の巡航速度は300km/h強で、護衛のCR32も巡航速度で飛んで全く困らなかったということからも裏づけられる。
更に137機が追加発注され、80機をブレダ、57機をカプロニ・ヴィッツォーラで1939年7月までに生産した。
追加発注分はスペインでの戦訓に基づき、発動機がフィアットA80 RC41に強化されており、またその大部分が複座機として製作された。このロットはBa.65bisとして区分されるが、Ba.65の複座改修機もbisと呼ばれるため、Ba.65 A80という区分もされる。
1938年にはフィアットA80のもの6機と、複座改修したK14のもの4機がスペインに増派されている。
実戦部隊からはニッビオ(Nibbio:鳶の意)の愛称をもらったが、正式なものではない。
イタリア空軍では地上攻撃部隊である第5及び第50ストルモでBa.64とともに使われ、1940年6月の参戦時には在籍154機を数えたが、北アフリカ戦線で急速に消耗し、1941年5月2日までになんと全機がすっかり失われてしまった。
英軍機による空戦損耗や地上撃破、また対空砲火もさることながら、砂塵による磨耗性の故障には大変に悩まされ、更には英地上軍の機動戦により飛行場に遺棄された機体も少なくない。
輸出実績としては1938年春にイラクへ25機、1938年秋にチリへ20機、1939年11月にポルトガルへ10機がある。
イラク向けの機体はフィアットA80発動機装備で、7.7ミリ機銃付きのブレダL銃塔装備の複座型23機、複操縦装置付きの練習機型が2機という内訳であった。これらは1941年に起きた反英暴動で戦闘に参加したが、鎮圧の過程で全機が失われた。
チリ向けの機はピアッジオP.XI RC40(1000馬力)を装備しており、17機が単座型、複操縦装置付きの練習機型が3機である。
ポルトガル機はフィアットA80装備、7.7ミリ機銃付きブレダL銃塔装備の複座型である。
また、中国に売り込むために複座型にP&W R1830ツインワスプを搭載する案があったが、さまざまの事情からこれは実現しなかった。
Ba.65 | Ba.65bis | |
全幅 | 12.10m | 同じ |
全長 | 9.30m | 9.60m |
全高 | 3.10m | 3.20m |
翼面積 | 23.50m2 | 同じ |
自重 | 2,400kg | 2,750kg |
全備重量 | 2,950kg | 3,635kg |
武装 | 12.7mmブレダSAFAT機銃*2 7.7mmブレダSAFAT機銃*2 爆弾最大1000kg | 12.7mmブレダSAFAT機銃*2 7.7mmブレダSAFAT機銃*3 爆弾最大1000kg |
発動機 | イゾッタ・フラスキーニK14 空冷星型14気筒 900馬力 | フィアットA80 RC41 空冷星型18気筒 1,000馬力 |
最高速度 | 430km/h(4,100m) | 410km/h(4,100m) |
巡航速度 | 365km/h | |
実用上昇限度 | 7,900m | 6,300m |
航続距離 | 800km | 550km(フェリー:1100km) |
乗員 | 1名 | 2名 |