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ARSENAL DELANNE 10C2
Copyrigts 1998 N. Asakura, Alle Rights Reserved
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アルスナルとはフランス語で「軍隊の工場」といった意味の単語である。
正式名称はARSENAL DE L'AERONAUTIQUE。航空技術工廠とでも訳しておこう。
当時の日本でいう海軍航空技術廠(空技廠)のような実験機関で、パリ郊外の
VILLACOUBLAY(ヴィラクブレー)に1936年に設置された。1936年は一部の航空会社を
のぞき航空軍事産業を国営化した年であり、この機関もその国営化法によって設置さ
れた。
ドゥランヌとは、設計者のマルセル・ドゥランヌ(Marcel Delanne)にちなむ名称で
ある。
フランスの航空機には、このように設計者や設計会社の社長さん(創業者)の名前を
付けることがほとんどである。
マルセル・ドゥランヌ(デュランと表記してある邦訳書が多いが、デュランなら
Durandとなるはずである。ちなみにどうでもいいことだがDurandというのはフランス
でも有名な楽譜の出版社である)はタンデム翼(串型翼)という翼の形式にこだわり
つくした設計者で、この10C2の他に同じタンデム翼の爆撃機であるDL150や三座戦闘
機であるDelanne 120などを設計している。これらの飛行機はどれもこれも非常にユ
ニークで変わったデザインのものばかりであり、もともと変な(強く見えない)デザ
インが多いフランス機の中でもとりわけ異彩を放っている。
タンデム翼(串型翼)というのは言葉で説明するのが難しいが、主翼後方にある水平
尾翼が普通のものより大きくて上面から見ると主翼が2枚あるような印象を受ける翼
の配置形式である。空力学的には「重心点が移動しても安定が良く、前翼の後流が後
翼にあたるため、たえずスロット効果を得ることができ、失速速度が低い」(*1)
とのことである?。ドゥランヌ博士以外にもこの翼型の支持者はいたようで、写真の
ような飛行機(S.F.C.A. "CINQ-DEMI TAUPIN"という機体)が1937年のジェーン年鑑
のフランスのページに掲載されている。
名称の後のCは、Chasse、すなわち戦闘機であることを意味する。
2 は乗員の数である。
この飛行機が戦闘機であるとは、外見からはとても想像できないだろう。
最大速度は高度4500メートルで550km/hというのが公称ではあるが、「公称」という
ものはなかなかあてにならないので、少し割り引いた方がいいだろう。
少なくとも私にはこの機体が零戦と同じ速度で飛ぶようにはどうしても見えないので
ある。
ただし、もし飛んだとしたら、それは非常に感動的な眺めなのではないかと思う。
この10C2が航空技術廠で開発される前に、マルセル・ドゥランヌはSAFRA(フランス
航空研究株式会社)社で復座の軽飛行機Delanne 20(解説参照)を設計している。こ
れは何と1938年8月10日の初飛行で墜落してしまったが、改良を加えた2号機が1939
年3月に初飛行し、その後約600時間もの飛行実験を行った。同時に190 P-2というグ
ライダーも開発し、ともにタンデム翼形式が優れた特質を持っていることを証明した
。
その結果を受けて開発されたのが、このドゥランヌ10C2である。
機体は全金属製である。主脚の収納がまた独特で、胴体の気流を乱さぬよう、主脚を
外に出している時でも脚収納部分の扉は閉められるようになっていたようだ。
原型の完成が近づいた時、工場はドイツ軍に占領されてしまった。
ドイツ空軍はこの珍妙な機体に関心を示し、研究を続行させた。タキシング・テスト
が長引いたが、1941年の10月に初飛行に成功している。機体はさらに研究するためド
イツ軍が接収したが、その後の本機の境遇は不明である。
機体のマーキングは、フランス軍の塗装と、ドイツ空軍の塗装の2種類があったとい
う資料がある(*2)
性能所元は次の通りである。(*1による)
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<この部分はフランスでの資料と照合中です>
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参考文献文献
(*1)航空情報No.196「第2次大戦仏・伊・ソ軍用機の全貌」(1965 酣燈社)
(*2)Hi-Tech Model社 Delanne 10C2(72分の1模型)の説明書(インスト)
(*3)Jean Cuny et Raymond Danel :LEO45, AMIOT350 et autre B4(Docavia
No.23)
(*4)月刊モデルグラフィックス1990年2月号(vol.64 大日本絵画)
(*5)Jean Cuny et Raymond Danel l'Aviation de Chasse Francaise 1918-1940,
1973
参照はできなかったがDELANNE 10C2についての参考文献書誌(抄)
(*6)William Green War Planes of the Second World War, Volume2, 1960
(*7)Air Enthusiast 1972年5月号
(*8)Royal Air Force Flying Revue 1956年9月号
(*9)John Brindley French Fighters of World War Two, 1971
註 資料*3は、後に宮崎駿「大飛行艇時代」(1992 大日本絵画)(に再掲された
(一部改変))
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ドゥランヌ木製試作機
#出典:『航空朝日』第三巻第一二号(昭和17年12月1日発行) 69p-70p
#注:原文は旧仮名遣いの縦書き文なので、文章を横書きにし、新仮名遣いに改める
とともに、漢数字で表された数字#を半角英数字に改めた。
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ドゥランヌ・20・T02(斬新な複座戦闘機ドゥランヌの木製試作機)の飛行試験は頗る
良好であった。その結果実物機にはイスパノ12Y発動機が装備されることとなろう。
写真及び三面図はルノー6B-O1空冷直列型180馬力エンジンをつけた複座の試作機を
示している。(第28図イ及びロ)
構造-ドゥランヌ機の揚力面は串型に配置された前後二翼から成っている。前翼は高
い肩翼であって付根は細くなっており、V型の支柱で支えられている。この翼は箱型
の桁を持っており、合板張りである。また自動的に作動する前縁隙間翼と、翼弦の
24.5%の隙間補助翼と、22%の反りのついた下げ翼を有している。補助翼の普通の操
作範囲はプラス13.5度からマイナス25度であるが着陸には反りのある下げ翼と補助翼
とが油圧でプラス40度も動かされる。前翼の全面積は9.23平方米、後翼は片持翼の設
計であり、二つの箱形の貫通桁を持っており、平面形は真直ぐな後縁と梯形をなして
いる。方向舵と垂直尾翼とは後翼の両端にあり、その後縁には正負ともに22度動くと
ころの、翼弦の24.5%の補助翼がついており、これは着陸時にはプラス35度からマイ
ナス7度まで動く。昇降舵も翼弦の24.5%を占め、正負30度操作され得る。後翼の面
積は4.77平方米で、方向舵面積は0.64平方米である。胴体は合板による張殻で、二つ
の座席が前後に並び、プラスティック製の透明な覆によりカバーされている。
要目及び性能-翼幅7.86米全長6.78米、全高2.40米翼面積14平方米、最大速度262粁
/時、最小速度70粁/時、離陸距離38米。
イスパノ12Y機関砲付発動機を装備する実物戦闘機は、馬力数と座席の配置を除く
ほかは上にのべた試作機と同じであるといわれている。
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