FINLAND

VL トゥイスク

 トゥイスクとはフィンランド語で地吹雪(ブリザード)の意らしい。
 チェコスロバキアのレトフS.328を参考にして製作されているが、もともとレトフS.328はフィンランドの注文に沿って製作されたものであり、商談の折り合いがつかなくなってレトフ社との契約はご破算になったものの、一応フィンランド空軍としてはそれを生かす格好となったわけである。
 鋼管構造に羽布張り、木骨主翼というごく一般的な複葉機であるが、構造材に鋼管を採用したフィンランド初の飛行機という記念すべき機体でもある。
 オリジナルのレトフ機よりも一回り小さく、エンジン馬力は二回りほど小さい機体に仕上がっているが、機首と機尾が重心に対して長い独特のフォルム、或いは垂直尾翼の形状などはそのまま受け継がれている。
 価格が安く、飛行特性は素直そのもので、フィンランド製の機体としては最も成功した設計のひとつと言える。
 中等練習機として使われたものはトゥイスクO、観測、軽攻撃、連絡など前線での雑用機として用いられたものはトゥイスクTと呼ばれるが、とくに違いがあるわけではない。後席の旋回機銃の有無くらいであるが、これとて載せているか外しているかの違いでしかない。
 伝統に従い、フロートを履いたり雪橇を履いたりというのも自由自在で、水上機型と陸上機型は互換性がある。
 1933年春の要求提示に沿って設計が開始され、1934年1月10日に試作1号機(TU-149)が初飛行、続いてエンジンにライカミングR680-BA装備の試作2号機(TU-150)もすぐに飛んでいる。各種試験の結果ライカミングのエンジンは不採用となり、リンクス装備の型が1935年2月5日に採用決定、まず12機が発注された。生産初号機は1936年4月6日に任務に就き、夏までにこの一次生産分は予備エンジンで組んでしまった1機を含む13機全機が納入された。引き続き、1936年2月14日に二次生産分16機が発注され、こちらも1937年中に全機が納入されている。製造を2ロットに分割したのは予算上の制約のためである。
 製造ロットによってI 型、II 型として分けるが、機体に違いはない。一応、I 型として登録されているのはTU-151〜163の13機、II 型はTU-164〜179の16機。1940年までに試作機2機を含め合計31機が製作されている。
 練習機としては1950年まで在籍していた。TU-178はヘルシンキのフィンランド航空博物館で見ることができる。

(文:まなかじ)

TU-178
ヘルシンキに現存するTU-178。戦時中はエンジンは裸ではなく、深めのタウネンドリングをかぶせた機が多かったようです。

諸元(Tuisku I )
全幅12.10m
全長9.35m
全高3.26m
翼面積33.65m2
自重1,021kg(水上機仕様:1,198kg)
全備重量1,350kg(水上機仕様:1,625kg)
最高速度208km/h(水上機仕様:185km/h)
上昇時間3,000mまで19分00秒
上昇限度4,750m
航続距離955km(水上機仕様:930km)
武装7.62ミリ機銃*2(前方固定*1後席旋回*1) 爆弾100kg(12.5kgまたは25kg爆弾*4)
発動機アームストロング・シドレー リンクスIV C7 空冷9気筒星型215馬力
乗員2名

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