フィンランドが第二次大戦に何とか間に合わせた唯一の国産戦闘機であるが、お隣りスウェーデンよりも着手は早かったにもかかわらず、全体にあまり冴えない飛行機になってしまった。
全体に一般的な低翼単葉引込脚の戦闘機で、発動機は国産できずスウェーデンの海賊版ツインワスプを輸入して使用していた。
構造は鋼管フレームに合板張り、主翼は全木製、動翼は鋼管羽布張りというもので、やはり北欧の急造戦闘機であるスウェーデンのJ22と同じであるが、できあがってみるとわずかに遅れて着手したJ22よりも完成が1年近く遅れたばかりか、同じエンジンをつけているにもかかわらず性能面でもかなり差をつけられてしまった。やはり、国内の基礎工業力の差が如実に出てしまったかたちである。
1939年の暮れから1940年早春にかけてのいわゆる冬戦争で戦闘機不足を痛感したフィンランド空軍は、戦闘機の国産化を企図することとなる。
要求は1940年夏に出され、タンペレにある国営航空機工廠(Valtion Lentkonetehdas)のウェゲルイス技師が設計主任となって開発が進められた。設計案をまとめる段階からけっこう手間取り、既にこのへんから隣国J22に追いつかれはじめている。
遅れを取り戻そうと急いで作った試作機ミルスキI は1942年夏に初飛行したものの、接着剤の強度不足で翼や胴体の外板は機動するまでもなくはがれて飛んでいってしまうわ、縦安定不良で飛んでいること自体非常に危なっかしいっわ、機体構造そのものの強度も不足気味で昇降舵は飛ぶわエルロンも飛ぶわ主翼は撓むわで、明らかに欠陥品であった。作られた試作機4機が全て事故で失われるというていたらくである。
注目したいのは排気管の配置で、既にミルスキI の段階でFw190や五式戦に似た胴体側面に一列に並べた推力排気管となっている。おそらくネタ元はFw190なのであろうけれども。
必死の改良作業が続けられ、なんとか使えるまでにもってきたミルスキII 46機が第26戦闘機隊(HLeLv.26)での慣熟訓練を終え、ようやく実戦配備になったのは1944年10月、ソ連との休戦は9月上旬であり、結局、間に合わなかったのである。
このあと、ミルスキII は1機だけ作って、生産はミルスキIII に移行するすることになった。ミルスキIII は当時進行中のピョレミルスキのための研究成果を採り入れ、更に空力的にリファインされたものになっていたが、いかんせん発動機が1065馬力のままなのでたいして性能向上もせず、戦争も終わってしまったこともあって10機だけが作られたにとどまった。
ミルスキII の武装は国産の12.7mmLKK/42を4挺、木製主翼の強度に鑑みて全てを胴体に同調機銃として配置している。このへんはソ連のラボーチキン戦闘機にも例がある。装弾数は内側2挺が220発、外側2挺は240発。
性能的に十分でなくなってきていることは自覚症状もあり、戦闘爆撃機として使うつもりで両翼下に100kg爆弾を吊ることができる。ここには150リットルの増槽を吊ることもできる。
プロペラはミルスキI 一号機では金属製三翅、ハミルトン・スタンダードのハイドロマチック定速であるが、ミルスキI 二号機以降、及びミルスキII ではブレードが木製三翅(直径3m)になり、ユンカース電動をライセンスしたVLS8002定速となっている。
離陸滑走距離は300m、同着陸距離は400mと、当時の戦闘機としてはかなり浮くのに時間がかかるようで、上昇力も3,000mまで3分30秒、5,000mまで6分24秒とあまりほめられたものとはいえない。
ミルスキII は休戦後のラップランドにいたドイツ軍に対する掃討作戦に参加しているが、この戦闘は両軍ともに真剣ではなく、ミルスキは損害を出していないし、ほとんど損害も与えていないものと見られる。
1944年末にはミルスキII は練習飛行隊に移管された。ミルスキII と、ミルスキIII は戦後はあまり長く在籍せず、1948年までには全機引退している。
・・・まあ、なにしろ、人口たったの350万人の小国が、ほんとうにはじめて作った(この前には・・・というかほとんど同時進行でフォッカーD.XXI を作ったことがあるきり)うえに、いきなり低翼単葉1000馬力引込脚戦闘機であったという点を考えに入れれば、多少へぼな戦闘機だとしても納得が行く、というよりも、むしろほめてあげたくなる、そんな飛行機ではある。
全幅 | 11.00m |
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全長 | 8.35m |
全高 | 3.00m |
翼面積 | 18.00m2 |
自重 | 2,337kg |
全備重量 | 2,947kg |
最大離陸重量 | 3,213kg |
最高速度 | 515km/h(3,300m) |
巡航速度 | 400km/h |
失速速度 | 145km/h |
上昇時間 | 6,000mまで10分00秒 |
上昇限度 | 9,500m |
航続距離 | 650km(増槽装備 1,100km) |
武装 | 12.7mmLKK/42機銃*4 100kg爆弾*2 |
発動機 | SFA STWC3-G 空冷星型14気筒 1,065馬力 |
乗員 | 1 |