FAQ(よくある質問と回答)



Q.プロペラを通して撃つ機関銃は、どうしてプロペラを撃ち抜かないのですか?
A.「同調装置」と呼ばれる機構によって、プロペラに当たらない瞬間だけ発射されるように調整されているためです。
同調装置の原理はプロペラ回転軸にカムが装備されており、この動きが油圧または電気信号で機関銃のところまで誘導され、安全装置に入ります。こうしてプロペラとプロペラの間の空間だけ安全装置が解除され、弾丸が発射されるようになります。
三枚プロペラで回転数 2,000rpm だと、プロペラは一秒間に 100 回ほど銃口の前をプロペラが横切りますが、機銃の発射速度は 7.7mm 機銃で 600〜1,200rpm, つまり秒間 10 発〜20発程度です。従って、同調によって起こる発射速度低下はそれほど大きくありません。

Q.プロペラ軸を通して撃つ機関銃はどんな仕組みになっているのですか?
A.ギヤボックスが重要な役割を占めます。
プロペラ軸を通して撃つ機関銃は俗に「モーターカノン」と呼ばれます。これはV型対抗液冷エンジンのシリンダ間に機関部を置き、ギアボックスを介して砲口とプロペラ軸の位置を合わせています。言葉だけでは説明しにくいのですが、V型エンジンのギヤについてはハ40の写真、プロペラ軸貫通機銃の写真についてはP-39 の機関砲装備写真が参考になるでしょう。なお、厳密に言えば P-39 の機関砲は「モーターカノン」ではありません(エンジンに直接マウントされていないため)。

Q.機関銃や大砲の口径はなぜ中途半端なのでしょう?
A.いくつかの理由があります。
まずインチ表記の問題。7.62mm は 0.3 インチ、12.7mm は 0.5 インチ…という風に、インチにすると割り切れる口径が多いです。
次に内径/外形表記の問題。銃身には線条(ライフル)が彫られていますが、口径としてこの外径を計るか内径を計るか、はたまた平均値を取るかは決まっておらず、計りかたによって口径表記が違ってきます。
そして対数問題。例えば 1cm 単位に口径を揃えたと仮定しましょう。すると 10mm 弾と 20mm 弾の格差は大きすぎますが、200mm 砲と 210mm 砲の違いに大した意味があるとは思えません。こうして扱いやすい口径を選んでゆくと、口径系列は等差数列ではなく等比数列(に近い数列)を形成します。統計してみるとこの比率は(なぜか)約 1.3 になります。

Q.なぜ陸上用(歩兵用)機銃と航空用機銃はわざわざ別々のものを開発するのでしょう?
A.使用される環境が極端に違うからです。
陸上用機銃は多少重くても作動性第一で、泥や埃をかぶっても故障しないことが最重要条件です。一方航空機銃は泥や埃をかぶることは滅多になく、そのかわり軽いことが第一条件となります。この条件を両方満たすのは難しいので、どうしても別々のものになってしまいます。もっとも、米軍 M2 12.7mm のように両者の条件を兼ね備えた優秀な火器も希に存在します。

Q.銃身は長いほうが有利なのですか?
A.一般的にそうなります。
弾丸(弾頭)は銃身の中で加速されます。銃身が長ければ長時間の加速を与えることができ、弾頭初速を高めることができます。これによって一発あたりの威力は増大しますが、その反面発射速度(連射速度)は低下します。また銃本体・弾薬(銃身長に応じて薬莢を延長し火薬量も増やす必要がある)の重量増加もさることながら、初速の二乗に比例して増大する反動を受け止めるために機体構造も強化せねばならず、合計すればかなりの重量増加を招きます。銃身長はこれらの要素の兼ね合いから最適点が決定されるもので、「長ければいい」というものでもありません。



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