弾薬について



1 弾薬の構造


 近代的な自動火器のほとんどは密閉式の金属製弾薬を用います。一般的な弾薬の構造を図1−1に示します。

Fig.1-1
図1−1 弾薬の構造
  • 弾包:弾頭、推進薬、雷管を密閉式の薬莢に納めたものです。
  • 装薬:比較的燃焼速度の遅い火薬の一種で、燃焼時に発生する大量のガス圧で弾頭を推進します。
  • 薬莢:主に真鍮で造られていますが、鉄製の場合もあります。
  • 雷管:装薬に着火させるための点火材が充填されています。点火方式には衝撃式(パーカッション)と電気式(エレクトリック)があります。
  • 弾頭:実際に射出される部分です。
  • 弾芯:安価かつ高比重の鉛合金で造られています。
  • 被覆:発射時の高熱から弾芯を守り、同時に銃身の摩耗を防ぐため銅合金で被覆されています。拳銃弾では合成樹脂の被覆や、被覆のない鉛弾が使われることもあります。

 弾頭・薬莢には用途に応じて様々な種類と形状があります。弾頭の解説は3章にまわして、ここでは薬莢形状の相違について解説します。
Fig.1-2
図1−2 薬莢形状
  • ボトルネック:ライフル弾に多い形状で、薬莢先端が絞ってあります。口径が制限されますが高初速を得られる利点があります。絞った部分のことを「ショルダー(肩)」と呼んだりもします。

  • ストレート:薬莢が円筒形で、拳銃弾または砲弾に多い形状です。火薬量に対して大口径・大重量の弾頭を使うため、初速が低くなる傾向にあります。

  • テーパード:薬莢全体を絞った形状で、大口径と高初速を要求される対戦車砲弾などに見られます。弾倉や装填機構の対応が難しいため、自動火器にはあまり使われません。
Fig.1-3
図1−3 リム形状
  • リムレス(通常形式):薬室からの排出時にツメ(エキストラクター)をひっかけるため、薬莢底部に溝があります。

  • リムド(R):薬莢底部に張り出し(リム)があります。装填・排莢の作動が確実ですが、反面リムが潰れたり歪んだりして動作不良を起こしやすい欠点があります。弾倉を「バナナ型」や「ドラム型」に設計せざるを得ず、これがかさばる欠点もあります。

  • セミリムド(SR):薬莢底部に溝がある上に縁が出っ張っています。通常形式とリムドの特徴を合わせ持ちます。

  • ベルティッド(B):口径の割にパワーの大きな弾薬に使われ、圧力の集中する薬莢底部の肉圧を増してあります。工作に余分なコストがかかるので軍用弾(特に弾数を消費する小口径)にはあまり見られません。

  • リベィティッド(RB):薬莢底面が絞り込んであります。機関部をコンパクトにする目的で大口径機関砲などに使われます。

2 弾薬の名称


 弾薬は通常 7.7x54R というような表記で表されます。7.7 は口径、54 は薬莢長をそれぞれミリで表したもので、最後の R は薬莢形状です。この口径×薬莢長+薬莢形状は世界共通の表記方法ですが、これとは別に弾薬メーカーによる命名や軍による命名が使われることもあります。

 アメリカ製の民間向け弾薬は .38Special.45ACP のように、インチ表記の口径+商品名という命名がが多いです。しかもインチ表記の場合、必ずしも正確な口径を指しているとは限りません。.44Magnum の実口径は 10.9mm(.429in) ですし、.308Remington ライフル弾の実口径は 7.62mm(0.300in) です。これはメーカーが語呂合わせで命名していたり、弾頭外径ではなく銃身内径を記していたりするためです。また、アメリカ製の古い弾薬には 30-06 のような口径−火薬量表記も見られますが、これは黒色火薬を使っていた時代の名残りです。

 軍隊による命名とは例えば「Military ball M2 cal.30」とか「八九式七粍七実包」とかの名称で、弾頭種別や装薬量・改良番号によって異なる場合もあります。こういった細かい差異は兵站上では重要ですが、民間ではあまり馴染みがありません。


3 弾頭の種類

 図3−1に主要な弾頭の構造を示します。これはあくまで原理図であり、実際の弾頭の構造を大幅に簡略化して示してあります。
Fig.3-1
図3−1 弾頭種別
  • 通常弾(Ball):鉛の弾芯に銅被覆をかぶせた安価な弾頭です。材質が均一なので旋転による狂いが出にくく、命中精度が高い利点があります。

  • ソフトポイント弾(SP):俗にダムダム弾とも呼ばれ、弾頭先端の銅被覆を取り去り鉛を露出した弾頭です。人体内で変形するため殺傷力が強く、軍用としての使用はジュネーブ協定で禁止されています。

  • 徹甲弾(AP:Armor-Percing):装甲を撃ち抜くための弾頭で、弾芯にタングステン鋼などの硬化合金が仕込まれています。

  • 炸裂弾(HE:High-Explocive):炸薬を充填し信管を備えた弾頭で、火砲では榴弾とも呼ばれます。

  • 焼夷弾(Incendiary):燃焼材を充填した弾頭です。燃焼剤には燐の化合物が多用されました。

  • 曳光弾(Tracer):弾道を確認するための弾頭で、底部に燃焼剤が込められており、閃光と煙を曳きながら飛翔します。

 弾頭には複数の要素を兼ね備える場合があります。例えば先端部に硬化合金を使用した徹甲榴弾や、炸薬と燃焼剤を混合した焼夷炸裂弾などです。また、焼夷弾と曳光弾は構造が類似しているため、しばしば同一弾種で兼用されます。

 航空機銃では、用途に合わせて各弾種を混ぜて装填するのが普通です。たとえば徹甲弾・炸裂弾・徹甲弾・炸裂弾・曳光弾…といったように、一定の順序でベルトや弾倉に装填します。夜間戦闘の場合は輝度の低い夜間用曳光弾を使ったり、全く曳光弾を装填しない場合もあります。逆に爆撃機の旋回銃座では火力を多くみせかけるために(銃身の寿命が縮むのを承知で)曳光弾の比率を増すことも行われました。

 陸上火砲では榴散弾(炸裂弾に多数の鋼球を仕込んだ対人・対空弾)、成型炸薬弾(HEAT:漏斗状のライナーによって爆発を誘導し、高熱ガスで装甲を破る対戦車弾)、粘着榴弾(HESH:装甲表面に貼りついてから炸裂し内面剥離破壊を起こす対戦車弾)などが使われることもあります。これらの弾種はあまり航空用には使われませんが、空対地ロケット弾やミサイルなどには使用されています。


4 給弾方式について




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