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材質別の装甲の耐弾性能について教えて下さい。 アルミ合金・スチール・チタンの各材質の耐弾性能の評価はどの様な順位になるのでしょうか? 私が想像しているのは、厚みが同じなら耐弾性の高い順に スチール →チタン →アルミ合金 重量から見た効率では チタン →アルミ合金 →スチール と想像してますが、実際どうなのでしょうか。 材質、弾種等の前提条件が曖昧で申し訳ありませんが、取り合えずAP弾を基準に教えてもらえたらと思います。 また、“RHA換算で何%”みたいな形で数字で示してもらえたら大変ありがたいです。 宜しくお願いいたします。 ニワトリ |
- 誰も答えていないようなので質問内容に関するヒントだけを。
質問の体を成していません。何故かというと拘束条件が全くないからです。
これでは有識者だって答えようがありません。漠然としすぎです。
完全理想状態でのそれなのか。現実としてのそれなのか。
どのような使用法等を前提にするのか。
この辺をしっかり示さないと駄目でしょう。
はっきりと言えば全ての金属・延性非金属材料が鋼と同じ用い方をすることはできません。確かに置き換えられた例もあるでしょう。しかし、それは鋼の示す特定の傾向・性能のみを置き換え材料の特性に依存したため成立したと見るべきであり、その置き換えによって発生したペナルティを何らかの形で受容しているからこその置き換え実装である事をまずは考える必要があります。
sorya
- やはり条件が漠然としすぎてますか・・・・了解いたしました。
もっと絞り込んだかたちで再度伺いたいのですが、試射場で直立したプレートに正面から弾丸(7.62〜20o程度のAP弾)を撃ち込むような仮定ではどうでしょうか?
実際の使用用途としてはボディアーマーのハードプレートや第二次大戦中の航空機の座席後方防弾板等、それ単体で防弾性のみを求められている物をイメージしています。
元質問の前半の順位の評価でもかまいませんので、宜しかったらご教示下さい。
ニワトリ
- 1.仮に全ての材料がMises則に倣う形で振る舞う、完全弾塑性体であると仮定。
2.仮に全ての材料の応力-歪特性及び破断応力、破断(体積)歪が完全一致すると仮定。
3.標的は半径方向無限と仮定。
4.特性にばらつきが生じない同一被弾状況が再現されると仮定。
という極めて理想的な条件ならば、抗堪力は初期密度×衝撃波速度(=衝撃インピーダンス)。大雑把には初期密度×バルク音速(=音響インピーダンス)の比率で相対評価が可能です。
理由としては、単位体積あたりのエネルギー蓄積量が同一な材料においては、標的が受けるエネルギの違いのみが抗堪力の違いとして現れるからです。弾丸等とはいえ、何かに衝突したらその条件に見合う作用を弾丸自体に受けます。衝撃インピーダンスというのはその比率(弾丸自体に反作用されるエネルギ、標的に加わるエネルギ)を計算するために必要な指標になります。
なお、現実的な回答をちょっとだけすると、アルミニウム、チタンは装甲材料としては?になります。理由としては、この材料は特にプラギング(=栓抜
き)破壊が発生しやすいため、不必要に厚くしたり、分厚い裏打ちを当てる必要性があるためです。チタンならばβ相が多いもの、アルミならばジェラルミンが最悪の結果を引き起こす事が非常に多いです。
sorya
- 回答ありがとうございます。
文意は大体分かりましたが、恥ずかしながら文系出身ゆえ個々の専門用語の理解についてはちょっと自信がありません。その旨ご容赦下さい。
質問の発端なんですが、私の知人(業界人では全くありません)が加工が困難な点を除けば、金属の装甲材料としてはチタン合金が理想的であると言っていたのに対し、今もってなお一部特殊用途にしか使われていないのに疑問を感じたのが始まりです。
>3.の後半部分について追加の質問なんですが、
@プラギング破壊(Plugging?)とはどのような現象でしょうか?
弾着点の外周に亀裂が入りごっそり抜けるような現象でしょうか。
A結論から言うとベストの金属装甲材料はやはりスチール系となるのでしょうか?
以上、宜しくお願いいたします。
ニワトリ
- まあ、とりあえず強いはしませんが"まるいち"のような特殊記号は使わないのが吉。
1:
正確には「プラグ破壊(Plug Failure)」ですね。プラギング破壊となるとプラグ破壊破壊になってしまいます。よって多謝。そして、その具体的な現象というのはニワトリ氏の考えるとおりのものです。とりあえず下記に考察の一助となるポインタを示します。
http://www.asc2004.com/Manuscripts/sessionC/CS-14.pdf
なお、プラグ破壊とは数マイクロメートルの高温滑り帯(=断熱剪断帯/adiabatic shear band)の発生及び成長によって、弾径に近い領域が打ち抜かれてしまう現象の事を厳密には言います。打ち抜きというと型を用いてシートメタルを抜く行程のアレです。あれと発生原理はほぼ同じです。
ついでに言いますと"adiabatic"+"shear"+"band"で検索すると、チタンのプラグ破壊が世界クラスで激しく大量にヒットするくらい、何処にでもある、誰でも知ってる(機械工学専攻ならば)ような現象です。
2:
ベストとまではいいませんが、鋼は多種多様なものがありかつ、経年変化量が少ないため、広範囲な領域で安定的に使用できる非常に優れた材料であることは確かです(錆はしますし、水素脆化も起こしますが)。何より設計がしやすいし、性能も出しやすいです。これは、別に装甲云々だけではなく、材料一般論としてもそうです。
3:まとめ
チタンは1)衝撃荷重・歪み(10^3<)が掛からない、2)極小的な荷重が掛からない、3)弾性を示す領域のかなり低い部分での繰り返し荷重が掛かる、4)出来る限り重量を減らしたい、という条件下では工学的に良い材料です。しかし、その運用条件を外すと一気に悪い面が表に出てきます。
総チタン装甲云々と{どこかの国が|どこかの会社が}意気揚々として発表した場合、何処の国の研究者・技術者も眉に滴るくらい唾をたっぷり浸けて聞くか、スルーします。ある意味猫またぎ材料です。使用するにはそれなりのノウハウがあり、それは永年基礎研究を行っていない限り、それを会得することは出来ません。そして実用型チタン系装甲は総云々と述べられるような実装は施すことはありません。性質を分かっている国ならば特にです。
ま。もっとも、とにかくはったりをかましたい国・企業ならばやってしまうかもしれませんがね。
私が#1でしつこいまでに拘束条件を述べよと言ったのも、#3でしつこいまでの理想的な拘束条件を唄ったのも、全ては以上の話があるからです。
sorya
- >1)衝撃荷重・歪み(10^3<)が掛からない、2)極小的な荷重が掛からない、3)弾性を示す領域のかなり低い部分での繰り返し荷重が掛かる、4)出来る限り重量を減らしたい、という条件下では工学的に良い材料です
航空機の構造材等には向いているが、極端な衝撃、負荷が局部的に掛かる装甲材料等には不向きと理解いたしました。
目から鱗のお話しを色々ありがとうございました。また機会がありましたら宜しくお願いいたします。
ニワトリ