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WWIIの主力艦同士の夜間戦闘に関して質問なのですが、探照灯を照射しながらの射撃はイメージできるのですが、 目視を行えない段階から射撃できる、米海軍などのレーダー射撃では、水柱を確認しての、遠弾、近弾、などの弾着後の、射撃修正をどうやって行っていたのですか? 射撃管制レーダーと言えども、射撃データーが完璧に計算、想定できたとは思えないのですが。ご存知の方がおられれば、宜しくお願いいたします。 相良 |
- 解像度の高いレーダーなら弾着も観測できます。大戦末期の英米戦艦の射撃レーダーなら弾着観測も行えます。
また、射撃レーダーは計算する装置ではありません。
測距儀からの測距データから、位置計算をはじき出し、それに従って連射するという測距盲従射撃は大正末期から昭和初期に理論も機材も出来ています。
所謂電探盲従射撃は、この測距機材をレーダーにしただけのことです。
ですから、位置計算はできるんです(入力するデータの何割かの初期数値が憶測になる事は有りますが、数度の計測を行う事で概ね絞れるし、測距が正確ならそれだけで精度は凄く向上します)
SUDO
- 「射撃修正をどうやって行っていた」のかという文脈に沿って考えるならば、つまり測距データを積み重ねることによって、です。
基本的に艦砲の射撃というのは、測距データを点の集積として位置をプロットし、対勢図上、または射撃盤の歯車の中で追尾することで目標のベクトルを割り出し、その延長線上の点、すなわち発射〜着弾に要する時間を加算した未来位置を撃つ、ということになります。
この一種の「未来予想図」は、敵が大角度変針を行なうとか急増速を行なうとかしなければ有効です。
そして、射撃レーダーとはつまり電波測距儀なのです。極めて高精度で天候に左右されにくい測距儀ということになります。
レーダーによる測距は極めて正確ですから、遠近方向のズレは光学測距で測るよりも小さくなります。よって、これはどうやっても光学機器で見るより高精度ですから、問題になりません。
左右方向のズレも、測距が正確だという前提がありますから、「ベクトルとして」割出された結果も信頼が置けるわけで、結局一点に集中するわけです。
つまり、測距が正確であれば誤差が生じないのですから、測距を繰り返せば「ベクトル」の向きと長さはより確からしくなるわけで、その作業自体が射撃修正になりうるわけです。
水柱を観測しての修正というのは、結局のところ測距の過程で生ずる誤差を埋めるための操作に過ぎません。
測距に誤差がないとすれば、その作業は必ずしも必要ではなくなるわけです。
ただし、敵が大角度の変針や急激な速度変更を行なえば、それまでに集積したデータはわやになってしまいます。
しかし、これも光学測距においても条件は同じ(ベクトルとして求める作業は共通)であり、測距が速くて正確である以上、データが早く整うのはレーダー測距の方ということになります。
まなかじ
- いつもお世話になっております。1点教えてください。
<レーダーによる測距は極めて正確ですから、
<遠近方向のズレは光学測距で測るよりも小さくなります。
との事ですが、その理由がどうしても判りません。
(一般的な事実なのは理解しているのですが)
波長的には光の方が電波より短く精度が高そうな気がして・・・。
夜間で光学的にはターゲットが良く見えないからと理解してよろしいのでしょうか?
逆に言えば、日中、スモック等が無く光学的に見えるならば、光学照準
でもレーダーと同等かそれ以上の精度が出せるということでしょうか?
うましか
- >3. この時代の光学測距はステレオスコープによる三角法だからです。レーダーは電波の反射遅延から距離を計測しますので、距離が離れるほど誤差の開きは大きくなります。
ささき
- 光学測距は、三角関数に基く計測で、構造的に、基線長さに逆比例し、距離の二乗比例して誤差が拡大します。つまり距離が離れると級数的に誤差が増大します。
また、肉眼でピント合わせするのと同義ですから、当然ですが技量差も生じます。数十キロ離れたマスト相手にコレを果たすのは非常に難しい訳です(戦艦級等では複数の大型測距儀の平均値を用いる事で誤差を小さくしています)
気象条件の良い中遠距離で、大型の戦艦(例えば大和のように巨大な測距儀を多数積んでいる場合)ならば、レーダーに匹敵するか勝る測距精度も出ます。ただし、多数の測距から同じタイミングでデータが届くとは言い切れませんし、当然ですがデータ収集と平均値算出(この時に妙に外れたデータは落とすとかの作業も入ります)等が加わるので、一定時間内に行える測距回数は減ります。測距回数を重ねる事で、位置計算精度を向上させていくので、この点は適切なタイミングで数字を読み上げるなり、電気信号で流し込める電探の方が数段優位になります(但し、この測距回数の影響も、ルートで量るべきものですから、ある程度の時間を置けば大した意味はなくなります)
SUDO
- >3
計り方が、そもそも違います。
レーダー測距では、電波の発射〜目標反射〜反射波の到達を時間で測り、距離を求めます。この際、大きさは十分にでかい目標なので、メートル波だろうと、レーザーだろうと、十分反射してくれます。別に識別しようというのではないので、可視光でなくても(たかだか数十キロの距離なら)主砲の射撃に影響するような誤差は出ません。(オシロスコープのメモリを読み間違えるとか、目標以外の反射を勘違いするとか、人為的なものを考えなければ)
それに対し、光学測距では、WWII当時であれば、対艦用には蟹目型の二つの望遠鏡で距離を出そうとするはずです。これは左右(上下もある)合致式のもので、(対空用には浮標型(ステレオ型)もあるが、合わせ易いが精度には劣るようです)左右の望遠鏡で同じものをみて、その交差角度から距離を割り出すものです。つまり人間の目と同じですね。したがって長距離では角度の差は限り無く0度に近くなり、精度を出すためには左右を出来るだけ離さなければならず、最後には大和の艦橋の上にあったようなバケモノサイズを要求してしまいます。それでも、30〜40kmなどともなると、ほとんど平行。35km先の前後200〜300mのずれを検測できるのかどうか。ですから試射をして、計測結果とすり合わせるのですから。
よって、レーダーには光学測距では距離測定ではかないません。
(値段と簡便さでは十分に勝てますし、実際、護衛艦に同乗させてもらったときには艦橋の左右で活躍する光学測距儀(本当は舟へんか?)をみることが出来るでしょう)
Lachesis
- あら、かぶった^^;二つも。
Lachesis
- 実はレーダーの測距誤差もそう小さくはありません。150t=最小距離分離能(m)、tは発射されるレーダー波のパルス幅でuSの単位です。単純に考えると、短いパルスを使えば限りなく精度が上がるように見えますが、困った事に短いパルスだと、エネルギー総量が小さいため、受信装置側での限界が先に来てしまいます。だいたい12海里(20Km強)で、現代のレーダーでも0.5uSくらいが限界です。多分ですが(詳しい資料がまだ見つからない・・・)、往時のレーダーの回路を考えますと、現代のレーダー受信回路との差が低く見て6dB以上はあると思います。当然その分長いパルスを使う事になるわけで、距離精度は低くなるわけです。これも多分ですが、20海里で300m程度の誤差(レーダー映像の幅)はあったと思われます。
さらにこれにブラウン管の精度(蛍光粒子の大きさ)も加わりますので、実際には計算誤差より小さくなることはあまり考えられません。
ただ、レーダーの強みは、その誤差が定量的に計算可能な事で、パルス幅が変わらない限り、常に一定です。周波数や目標形状に関わり無く、パルス幅だけで規定できます。ですから、合わせ方の優劣で誤差も変化する光学式よりも計測結果のばらつきは少なくなります。逆に光学式の場合、レーダーのような原理的な誤差はありませんから(測定が難しくなるだけで、差は常に計測可能)、使い方によってはレーダーよりも正確になる可能性がありますが、人間の目ですから瞬間瞬間での精度は一定ではありませんので、総合的な距離精度という事になれば、誤差を含むが計算可能な一定の値を常に返すレーダーの方が有利になるわけです。
ちなみに、40海里(72Km強)ではSバンド(3050MHz+/-50MHz)の周波数で、現代の航海レーダーでも200m2以上の反射面積が無いとレーダー表示機にきちんとした映像は現れない、という計算結果になります。ただし、高さが双方とも100m無いといけませんが・・・・(笑)
elebras
- >8
いやあ、20浬(約37km)で300mなら物凄いです。
戦艦金剛の10m測距儀は30kmで平均中心誤差440m、33kmで550mと見積もられてました(大和ですと30kmで185mだそうで、大きさだけではなく倍率や構造の改善が成されているのがわかります)
距離の二乗に精度が比例するとされてますので、20浬だと、金剛で669m、大和で約280mの精度になります。
ちなみに重巡洋艦は20kmで330mと見積もられてましたから、20浬では(そんな距離では撃てもしませんが)1km以上の誤差があることになりますし、これで6m測距儀ですから、新造時のKGV級よりも大きいモノです(まあ、戦艦は揺れも少ないし、より高級品である可能性は否定できませんが)
まあ測距儀は複数を用いた平均値算出で精度を改善できるので、金剛で三基で400m程度(10mx1に8mx2なので、もう少し悪い)大和の場合は条件次第で150mぐらいまで絞り込める可能性が有ります。
つまり金剛レベルの観測能力では20浬ではレーダーには叶わず、恐らく30km以内ならばカタログ上は匹敵し、戦闘時の条件悪化を考えると20m以内ならばレーダー並かもしれないという感じになります。
SUDO
- >#8 elebrasさん
0.5uSの単位が良く判りませんが...
Sが大文字だから、セカンドじゃなくてジーメンス??
米海軍のMk.8射撃レーダー(3GHz)のパルス幅は0.4μs、Mk.13射撃レーダー(10GHz)のパルス幅は0.3μsです
セミララ
- >10
エンジニアの常用する表記ですね。
実際は[μs]ですが、ASCII文字には μ(マイクロ)が無いのでuで代用します。
Sが大文字なのは単位(秒)を大文字で表記したことに由来します。
Hz,V,A,W,J 等と同じです。
# セミララさんの書き込みは、分かっていながら、つっこんでいるように感じます。
kazz
- まあ、そうなのですが...
一応、秒はsというように、小文字で表記しなければならないと決められているので...
大文字で表記しなければならないものは大文字で、小文字のものは小文字でということで
そんな私も、数値と単位の間にスペースを入れていませんが(本来は"10 GHz"というように、スペースが必要)...
セミララ
- 皆様どうもありがとうございます。
よくわかりました。
光学式は、角度により距離を算出するのに対して、
レーダーは、発信・受信間の時間により距離を算出する
ということですね。
時間の算出に位相差を利用できる電波の方が、光より取り扱いが
容易と理解してよろしいでしょうか?
戦艦相手なら5m前後の誤差を許容できるならば5m前後の波長の方が、
装置の製造が容易で、実用上精度にも困らないという風に理解しております。
うましか
- >13.
何十キロも先の目標に正確に光パルスを送り込み、その反射波を捉えて時間を計測する装置(つまりレーザー測距儀)が当時の技術では実現不可能だったからでしょう。なんせレーザー発信器が発明されたのは 1960 年のことですから。
ささき
- 皆様、ご解答いただきまして、ありがとうございます。
この質問の根拠には、いかに米英といえども、弾着の水柱、あるいは砲弾、までレーダーで認識できなかっただろうという思い込みがあったわけですが、
WW2末期には、弾着観測までも、レーダーで測定できたのですね。米英の電子技術は、私の想像をはるかに凌駕しておりました。
相良
- >15
ゴミレスですが、私も学生の頃、内藤翁訳の「追跡」を読んで、WW2当時でも砲弾をレーダーで追えたのかと驚いた記憶があります。
satoski
- >11
セットしてるフォントの関係で出ないんです。数字、単位を2バイト文字で書きたくないんで・・・わかっちゃいるんですが・・・
>13,15
私が誤解させてしまったのかな?レーダーの原理を考えると、挟叉したような着弾水柱を観測できるはずが無いのです。また、少なくともXバンドまでのレーダーで至近距離ならいざしらず、10海里とか15海里の距離で5mなんて距離精度は出ません。
2万mの砲戦距離で、300m以上近弾なら見えるかも知れませんし、遠弾は・・・ひょっとしたら見えるかな?方位方向はもっと悲惨で、Mk-8でも2度、10海里で646m以上離れないと目標と一つの映像にしか見えませんし、往時のAスコープでは原理的に無理、Bスコープなら見えたかも知れない、というレベルです。要するに前後300m、左右646mの範囲に着弾した砲撃はレーダーでは観測できない、という事です。(Mk-8の場合)
レーダー射撃の利点は、この300mx646mの範囲が変わらない事で、Mk-8を例にすれば、方位盤に乗っており、射撃コンピューターに接続されていると書かれていますので、目標の未来位置をその精度で予測できる事が最大の利点だと思います。SUDOさんも書かれている通り、この精度は凄い事らしいので、その範囲に砲弾が落下するように砲撃を続ければ、弾着観測無しでもいつかは命中が出るという事だろうと思います。
elebras
- >17
いや散布界なんて数百mになるし、修正要領は300〜800mぐらいが普通なんで、前後300mの着弾は見えなくても良いんです。
方位誤差は2度あれば、位置割り出しは射撃盤と測的盤で出来ます。
また未来位置の予測は射撃盤、変距離盤のカムとプロッタで行います。完全並行もしくは直交した航路で無い限り、数度の計測と計算で方位精度2度でも苗頭割り出しは出来ます。
つまり重視すべきは測距精度であり、しかも射撃盤の機能から、これで十二分であり、弾着分離は必要なだけはある。
つまりいずれ当るではなく、測距射法(測距盲従射撃)という高精度で高威力な有力射法をするに十分なものなんです(逆にいえば、艦砲射撃の精度なんてこのレベルでやってるという事です)
SUDO
- ゴミレスな上に長いから読み飛ばしても結構。
今からちょうど20年前、「遠距離砲戦ではMk8の解像度の性能では近くにいる大和と長門を分離できない」とProceedingに研究家が書いたら、それを読んだ往時リー提督の下で砲術参謀を勤めたマスティン中将が、「Mk8の縦解像度は素晴らしく、目標同士が約30yds離れていれば完全に識別できたし、目標至近に落ちた水柱の観測も出来た」と怒りを込めて投書してきたことがありました。それは本当かいなと他の研究者が調査したらマスティン中将の発言とほぼ同等の数値が実資料として出てきた、という秘めた騒動がありました。
実際にスリガオの「ウェストバージニア」の記録だと、山城に対しての「初弾夾叉(レーダーによる水柱観測)、命中弾あり(目視)」という報告があり、Mk8が目標とその至近に落ちる水柱を同時に分解して捉えていることが確認出来ます(北岬海戦時の「デューク・オブ・ヨーク」もレーダーで夾叉を含む弾着結果を報告しつづけてますね)。まあ巡洋艦用のMk8は出力の関係上ここまで精度は出ませんし、往時のレーダースコープでどの程度まで把握できたのかは分りませんが、戦艦用のMk8やType284であれば、距離にもよるでしょうが目標の至近に落ちた水柱を分解して補足するだけの能力があったことは確かです。
あと米水上艦がレーダー情報を電気信号として射撃指揮装置に直接取り込めるようになったのは、1950年代に入ってからのことです。戦艦主砲の射撃に関して言えば、電探測距による水上目標による盲目射撃の場合は、レーダーの出した数値を見ながら人間が方位盤にデータを手入力する、という方法が最後まで行なわれています。
大塚好古
- 測距射法で重要なのは、測距散布公誤と射心移動公誤がどの程度に収まるかですが。レーダーを用いた場合、測距散布公誤は距離によらず一定になる(はず)ので、その点では非常に有利になります。
大戦時、米海軍の射法はよく判らないのですが。少なくとも、夜間の「レーダー測距射撃」の場合、弾着観測は実施せず「当たるに任せる」のではないか、と思います。
>17
確かに、レポートなどではそう書かれているのですが、「弾着観測」に必要な精度で目標を捕捉できたか、疑問な点が多いと思います。というか、弾着観測は不要とも思えるのですが・・
tackow
- >20
米艦の電探射撃の場合、基本的に巡洋艦以下は着弾観測をせずに撃ちまくりますが、戦艦の場合状況に応じて英戦艦同様に電探もしくは目視を含めた補助手段による弾着観測を行なった上で、射撃を行なうことも考慮しています。これは射撃開始時の砲術長の意思で決まるようですので、どういう状況であれば、とは言い切れないのが難ではありますが。
大塚好古
- スリガオ海峡夜戦の場合に特定しますが・・
巡洋艦部隊は0351から射撃開始し、山城に3000発以上発射。戦艦部隊は0353から山城に射撃開始。直後の0355に回頭開始。0406に回頭完了。射撃中止が0408。
こうした状態で、巡洋艦の射弾と自艦の射弾の分離が可能なのか?回頭中に有効な射撃が実施出きるのか?米軍のレポートを鵜呑みに出来ない理由ではあります。
いずれにしても、どのような考え方で打っていたのかは、米海軍の術力。すなわち定量的な目標捕捉稠度や射心移動量が判らないことにはなんともいえないのですけど。
tackow
- >19
大塚様 毎回貴重な資料感謝いたします。
未だ詳細な資料が入手できておりませんので、推測も含めてという事になりますが・・・
計測精度の問題:
前にも書きましたように、レーダーによる位置計測は、単純にアンテナ半値角とレーダーパルス長で規定されます。これは物理精度で、これをはるかに超える精度は物理的に不可能という事です。
現在までに判っている限り、Mk−8のアンテナ半値角は2度、パルス長は最短0.4μ秒です。
しかし、MICと呼ばれる集積型マイクロ波フロントエンド、もちろん高周波増幅付きですが、これを使った現代のレーダーでも、12浬以上のレンジでは0.5μ秒以下のパルス長は使われません。往事のレーダーの受信回路が現代のものよりも優れていたというのは、仮定としても受け入れられません。
ただし、レーダーパルス長は探知距離が短くなれば、もっと短くできますので、30ydsの分離が2000ydsで、というならば肯定できます。しかし20000yds(10海里)でなら今でも無理です。ちなみに30ydsの分離を実現するためには0.1μ秒以下のパルス長が必要です。
着弾水柱の観測:
これも書いた通りで、距離および方位分離能以上離れた水柱ならば観測可能でしょう。事実、私自身が、5浬の距離で76mm砲による射撃の着弾水柱を観測しております。しかし、ここで問題なのは、それによって照準修正が可能であったか、という事です。前出の推測も含めた数字をここで用いれば、300m x 646mの範囲ではどんな目標でも一つの反射点に見えるレーダーで、それが可能だったか、という事です。
もう一点、往事の表示方式の問題もあります。Mk−8はAスコープ/Bスコープ両用ですが、Aスコープの場合、一つの指向軸に帯する反射を時間の関数として表示します。ですから、着弾水柱が見えるとしても、その指向された軸上の着弾したものについては観測が可能ですが、それ以外の水柱は見えません。逆に言えば、水柱が観測できた、ということは、前記の精度推測が妥当だった事を意味します。(左右の広がりが無ければ見えない。)
Bスコープでならば、左右の観測も可能ですが、Bスコープは左右へのアンテナの動き(方位角の変化)を必要とします。Mk−8の場合位相制御により左右30度程度のビーム偏向が可能だったようですので、それができないわけでは無かったとは思いますが、Bスコープを使った場合、Aスコープによる精密な距離測定は不可能になります。砲撃戦のさなかに、的艦の連続計測を中止して、着弾観測をするのでしょうか?
以上から、マスティン中将の発言には何らかの錯誤があると考えられます。また、水柱観測についても、レーダースクリーンからは、「絶対」に水柱の特定(どの砲が撃ったか)は出来ません。したがって、水柱がレーダーで見えたか?という設問の答えはyesでも、それで着弾観測できたか、という設問ならば、明確にNoと答えざるを得ないのです。他者の着弾を持って自砲の照準修正は出来ません。
最後に、Mk−8の写真を見ますと、方位版らしきものに乗っており、バリスティックコンピューターに接続されているとあります。レーダーからの電気信号を射撃盤側が電気信号として取り込めるのは50年代以降かも知れませんが、それまでの測距儀と同様な方法を用いての信号取り込みは可能だったように思われます。
長文申し訳ありません。
elebras
- >elebrasさん
Mk.8 FCRの、「左右15度ずつビームを振る」ですが、「Scanned via pulse-switching」だそうです
このアンテナの、後ろ側が写っている貴重な??写真のページ
http://polyticks.com/bbma/spot.htm
掲示板の書き込み...
http://listserv.acsu.buffalo.edu/cgi-bin/wa?A2=ind9807c&L=wwii-l&T=0&F=&S=&P=6734
スリガオ海峡の海戦における、米戦艦ウェストバージニアのアクションレポート(日本海軍でいう戦闘詳報)です
http://www.ibiblio.org/hyperwar/USN/ships/logs/BB/bb48-Surigao.html
セミララ
- >23
射撃距離と発射時刻は判るんですから、着弾時間は判るんです。
つまり自艦の射撃による水柱が何時発生するかは判るんで、他艦がまったく同じタイミングで射撃してない限りはある程度分離可能です。
弾着時計を読み上げてもらい「弾着、今」でスコープに発生する光点をが、自艦水柱でしょうから、たぶん追いかけきれないという事は無いでしょう(程度次第ですが)
SUDO
- >23
ライン演習時のKGVは当初の5分間は混乱しましたが、284型が動きつづけた残りの20分の間、ロドネーと自艦の弾着を区別して観測しています。当然ながらこの間目標の測距も同時に行なってます。25でSUDOさんが述べてますように弾着時間は分かりますから、自艦の弾着と他艦の弾着は完全にとは言えませんが識別することは可能です(「14inと16inの水柱だとエコーの出方が違うから、他艦と自艦の発砲を識別できる」という信じ難い発言をされるKGVのレーダー手の手記を読んだこともあります。まあこれは話半分に聞いておくのが吉でしょうけど(^-^;)。
>それまでの測距儀と同様な方法を用いての信号取り込みは可能だったように思われます。
確かにTDS等の補助機材にレーダーの信号を直接取り入れるのは1944年以降実施されてますが、方位盤にそのデータを反映するのはアイオワ級及びそれ以前の戦艦を含めて、レーダーからの指示盤に示された距離及び方位の数値を見て、操作員が方位盤のハンドホイールを回してデータ入力を行なうとされています。
大塚好古
- まず、お礼を。
セミララさん、貴重な写真ありがとうございます。やはり、きちんと導波管長を変えて位相差つけてますね。縦3本は同相励振だそうですから、これで十分ですね。これを機械的に切り替えて、と資料にはあります。
http://www.vectorsite.net/ttwiz4.html#m4
着弾水柱に関する米側資料:
セミララさんご紹介の掲示板の答えにもあります通り、全ての数値は経験則となっています。当然ながら、水柱それでけの観測ならば4万yds(20浬)での観測も可能だったと思います。
問題は、的艦が存在する状況でのものです。もちろん距離分解能以上離れた水柱は観測できますが、それ以内は観測不能です。アクションリポートでの観測は、分解能以上離れたものであったはずです。近弾か遠弾かが判るだけでも情報としては貴重なのでしょうが、往時のレーダー観測員は、自分の見ているものが何だったのか判った上でリポートを書いたのでしょうか?
弾着の識別:
弾着時間は判りますから、弾着と同時に発生したエコーが自艦の砲撃によるものという「推測」は可能です。実用上はそれでいいのかもしれませんが、レーダーにより識別できたわけじゃありません。つまり、単独での砲戦ならば少なくとも外れに関しては観測できますが、これが複数艦での砲戦になった場合、時間を読み上げても、同時着弾の可能性がある限り、データーの信憑性は非常に低いままです。
大塚様:
>「14inと16inの水柱だとエコーの出方が違うから、他艦と自艦の発砲を識別できる」
実はこっちの方がありえますし、経験則が活きます。現代のPPIでの話ですが、1万トンの船と、1000トンの船では明らかにエコーが違います。水柱の高さによって有効反射面積が変わりますので、あっておかしくありません。少なくとも30ydsで二艦の識別が可能だったという話よりはよほど理解が可能です。
弾着観測:
遠距離の砲撃はひとところに纏まって落下するわけではありませんですよね。ある範囲があって、その範囲のどこかに落ちると理解して宜しいかと思うのですが。であるならば、的艦のエコーが最大になるように追うAスコープで観測できる弾着水柱は、その向けられた軸線上に落下した砲弾だけ、という事になります。有効なビーム範囲から外は観察できないという事です。
しかし、観測できる条件があります。レーダーのビームが弾着範囲よりも広ければ、全ての弾着が観測できます。ただ、問題があって、同じ有効ビーム幅の中でなら、全て一つのエコーに見えてしまいます。それでも距離軸で最小分離能よりも離れていれば、方位が同じな二つのエコーとして観測できます。しかしそれは外れたことが判るに過ぎません。Aスコープである限りこの呪縛から逃れるわけには行きません。
それとも、Bスコープで見ていたのでしょうか?確かに可能ですが、精度はますます悪くなりますし、Aスコープでの分離能の呪縛から逃れられるわけでもありません。
ところで、スレッドが長くなってしまいました。最近わかった事実もありますので、議論板にスレッドを立てましょうか?
elebras
- レスを汚すようで申し訳ないのですが...
こんなの見つけました
http://www.eugeneleeslover.com/USNAVY/CHAPTER-20-G.html
セミララ
- 基本的にelebrasさんの仰るとおりではないでしょうか。
もし、往事のレーダーで正確な弾着観測ができたならば、米海軍が実施した射法はどうしても腑に落ちません。もちろん、弾着が確認できた(わが二二号でも弾着の観測は可能でしたから)ことを否定しませんが。艦砲射撃に必要な精度で可能であったかどうかが問題になるのでは?
ちなみに、わが海軍の「電測射撃」は弾着観測が不可能な場合には測距射法、視認が可能な場合には変距射法と使い分けていたようですが、米海軍も同様だったのでしょうか?
tackow